第33回:自然エネルギーでの東北復興に向けて、いま、できること。
東日本大震災「つながり・ぬくもりプロジェクト」
(環境ビジュアルウェブマガジン「ジアス・ニュース」での連載より)

■太陽光の電気、太陽熱のお湯、薪ストーブの暖房

 

東日本大震災が起こった2011年3月11日は、東北地方はまだ冬。発災後数週間は雪もちらつく寒さだった。大地震と大津波から命からがら逃れても、大津波で町全体がさらわれた地では、電気やガス、水道などのインフラもなく、カラダを温めるための暖もない。食糧や毛布などの物的援助はもちろん、家族や縁者への安否を知らせるための通信手段もない。電気がほしい。お風呂に入りたい。暖まりたい。生命をつなぐ緊急支援を、自然エネルギーが担った。

 

発災から数日後、NPO法人環境エネルギー政策研究所(ISEP)と自然エネルギー事業協同組合レクスタが太陽光発電メーカーのソーラーフロンティアにモジュールの提供を依頼した。レクスタの桜井薫さんは太陽光発電のモジュールとバッテリーを現地で組み立てながら避難所をまわり、携帯電話の充電などに役立て、あるいは明かりを灯す活動を始めた。3月末には岩手・木質バイオマス研究所やNPO法人バイオマス産業社会ネットワークなどが中心となって、岩手県大槌町・吉里吉里地区の避難所に薪ボイラーを設置、木質バイオマスによる熱供給プロジェクトを始めた。太陽熱利用に関する普及啓発活動をおこなうぐるっ都地球温暖化地域対策協議会は、7メーカーから550台の太陽熱温水器を安価で提供してもらう約束をとりつけ、宮城県名取市役所を皮切りに、避難所の炊き出しの皿洗いに太陽熱給湯を利用したり、障がい者施設や、集落で共同生活をしていた地域に温水器を提供、8月からは岩手県の住田町の仮設住宅への温水器設置を始めた。

 

震災から3週間後の4月4日、東日本大震災の被災地を自然エネルギーで支援する「東日本大震災つながり・ぬくもりプロジェクト」が、上記4団体とWWFジャパンの5団体を幹事とし、21社の協力団体の支援を受け、スタートした。各団体のネットワークを横につなげ、太陽光発電パネルでの電気の供給、太陽熱温水器でのお湯の供給、バイオマスボイラーでの暖房の供給をおこなってきた。震災から1年近くを経て、電気・ガスなどのライフラインが切断された避難所や、まだ復旧していない地域への緊急支援のフェーズは一段落。現在は被災地での生活者の光熱費(電気代、ガス代)を自然エネルギーで支援する、災害時のバックアップとしての自然エネルギーの活用といった復旧の支援から、自然エネルギーを活用し地域の自立を促す復興支援へとフェーズが移りつつある。

 

2012年2月22日に開催された報告会では、約11カ月にわたる支援の経過を各団体が報告した。これまでに約200カ所に太陽光発電パネルを設置、太陽熱温水器は約40カ所へ、木質バイオマスを利用した薪ストーブやペレットストーブは7カ所へ設置済みで、これまでの寄付は企業、団体、個人から661件、総額6534万8642円にのぼった。

 

 

  • 木の家の温もりと太陽の恵みで生活支援

 

住田町の被災地後方支援について講演する多田欣一町長

 

岩手県陸前高田市と大船渡市、釜石市に隣接する住田町は、津波の被害を免れたため、気仙地区への支援の拠点となった。報告会で登壇した住田町長の多田欣一さんは災害直後、町民たちに「一週間は寝ないでがんばれ。6000人の住田町民で、6万人の陸前高田・大船渡市民を支えよう」と呼びかけた。「気仙地区は昔から共同体。漁師の被災は他人事ではない」と多田町長。住民に発破をかけ、炊き出し、生存者の捜索、給水支援、ボランティアや警察、自衛隊の基地の提供、被災者の受け入れをおこなってきた。

 

緊急支援の一方で、多田町長はさっそく仮設住宅の建設に乗り出した。仮設住宅は災害救助法に基づき、都道府県が発注して被災地に建設することになり、多くはプレハブ協会が受注する。多田町長は、かねてから木造建築の仮設住宅のキットをつくり、世界各国の被災地へ提供する構想を練っていた。住田町は木材の産地であり、製材工場、集成材工場、プレカット工場を有しているため、森林経営から製材、地元工務店などによる建築に至る、川上から川下までの一貫システムが可能な態勢をつくっていた。「木造の仮設住宅は、役目を終え解体する時に薪やペレットとしてバイオマス利用ができる。産業廃棄物にならない」と、3月22日に内閣府に構想を伝えるための準備をしていたところでの大震災だった。

 

町の財源と民間の募金を集め、木造の仮設住宅を一般被災者用に93棟、衣料スタッフ用に17棟用意(その他岩手県の発注により被災地用に60棟提供)、町内の仮設住宅110棟全てに、ぐるっ都地球温暖化地域対策協議会がメーカーから集めた太陽熱温水器が搭載された。

 

ぐるっ都地球温暖化地域対策協議会会長の三井元子さんは、「太陽熱温水器は太陽光発電の4倍もエネルギー変換効率が高いので、家庭のエネルギー消費の3分の1を占める給湯に太陽熱を使えば、CO2削減率も、コスト削減率も相当高くなる」と、設置の意義を語る。住む家を失った人の生活は苦しい。光熱水費の一部を自然エネルギー支援で節約できるのは、とても現実的な生活支援になる。

 

住田町の仮設住宅に暮らす岩森美奈子さんは、「木造の仮設住宅はとても暮らしやすい。木の温もりや木目の表情に癒される。私の両親はプレハブの仮設住宅に暮らしているが、窓のないトイレは結露で床がダラダラ濡れることもある。太陽熱温水器で夏場はガス代がかからず、冬場もガス代が半分くらいに節約できるのでありがたい」と、仮設住宅での暮らしぶりを語った。

 

パネルディスカッションでは関連諸団体が発表をした

 

■民間の助成でスピーディーかつフレキシブルに支援が可能に

 

つながり・ぬくもりプロジェクトへの寄付企業のなかでは、三井物産(株)が多額の寄付金を拠出した。三井物産では地球環境問題に取り組むNPOや大学・研究を募集・選定して必要な資金を寄付する「三井物産環境基金」による助成をおこない、2005年度から2010年度までの6カ年で合計280件31億7200万円の助成の実績がある、民間では国内再大規模の基金だ。東日本大震災では寄付金3億5000万円と物的支援5000万円、合計4億円を拠出し、役職員融資の義捐金の総額5000万円を被災核券や日本赤十字、中央共同募金会などに寄付してきた。さらに、地球環境に配慮した震災復興活動・研究を支援する東日本大震災復興助成をおこない、4月末から7月末までの3回募集で、67件、総額8億5700万円の助成を決定した。つながり・ぬくもりプロジェクトの住田町の仮設住宅に太陽熱温水器を設置する活動は、この復興助成を活用した。

 

三井物産環境・社会貢献部の赤間哲さんは、「民間企業だからこその柔軟性とスピード感をもって、3.11以降の緊急時に機動力をもって動けた」と当時を振り返った。太陽光発電による電気の支援と、太陽熱温水器によるお湯の支援がすでに現地で動き始めていたので、民間のフレキシブルでスピーディーな助成が緊急支援に活用できた事例だ。

 

一方、自然エネルギーによる復興支援で岐路に立たされているのが、木質バイオマスによる暖房の支援だ。漁業が壊滅した岩手県の大槌町では、被災材木を薪炭材として売って漁師たちの現金収入にするといった動きが見られ、森林資源が豊富な東北地方の木質バイオマス資源活用の可能性が見いだされるはずだった。しかし、原発事故の影響で福島県の薪から高い数値の放射性物質が検出され、木質バイオマスの灰の放射能汚染が問題視されるようになり、灰の処理方法について適切な措置ができない、あるいは検査態勢が確立されない限りは、木質バイオマスでの支援はいったんペンディングにせざるを得ないという判断だ。

 

太陽熱普及の意義について語る三井元子さん

 

■継続的な支援がいまこそ求められる

 

つながり・ぬくもりプロジェクトでは、現地での雇用も生み出している。太陽光で4名、太陽熱で6名の被災者が現地で働き、また緊急支援のフェーズでも、東松島市野蒜地区では、地域住民が自ら設置の方法を学び、20軒の住宅に太陽光発電パネルを設置した。レクスタの桜井薫さんは、「地元に太陽光発電パネルの設置などができるNPOやNGOがあれば、我々はパネルやモジュールを届けるだけでよかった。地元の人が組み立てられれば、自然エネルギーでの復興もスムーズにいく。市民レベルのネットワークがあれば、もっと早いスピードで太陽光発電の設置が進んでいくはずだ」と、今後のネットワークづくりへの期待を語った。

 

また、レクスタでは、福島県南相馬市のデイケア施設に、10kWの太陽光発電パネルを設置。「順調にいけば年間40万円の売電が可能になり、10年間でトータル400万円の現金収入と同等の支援ができる」と桜井さんは言う。

 

自然エネルギーによる復興支援の現場で汗を流してきた団体の関係者が口を揃えて言うのは、「平常時から地域の中で自然エネルギーに接し、技術や仕組みを理解していれば、普及も早い。普段からの普及啓発や、環境教育の大切さを痛感した」ということ。

 

被災地で、太陽光発電パネルや、太陽熱温水器に救われた、そんな経験を持つ子どもたちが大人になった時に、本格的な自然エネルギーでの地域の自立がやってくる。被災地は新しい復興のモデルを描くことも可能になる。

 

いま、つながり・ぬくもりプロジェクトにきている支援のニーズを満たして行くにはは、太陽光発電、太陽熱温水器、バイオマスで合計1億1216円(設置費用、人件費、旅費交通費込み)が必要になる。プロジェクトの現在の残額は300万円で、支援先が増えるほどに、ニーズも増えてくるという状況だ。つながり・ぬくもりプロジェクト事務局長で、ISEPの竹村英明さんは、「住田町はいずれ自然エネルギー100%の町にしたいという構想もある。町での自然エネルギーの実践を積み上げていくことで、そこから新しい日本ができてくる」と展望を語るが、現状は厳しい。

 

いまはようやく、生活支援のフェーズから、自然エネルギーによる本格的な復興へ踏み出せるかどうかというターニングポイントだ。市民のネットワークで自然エネルギーが広がる次の時代に向け、企業も、行政も一体となって、いまこそ継続的な支援が求められている。

 

住田町の仮設住宅に暮らす岩森美奈子さんは、被災者の暮らしぶりについて訥々と語った(右)

 

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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