田奈を地産地消のメッカに! スタミナ田奈
「ここはヨコハマ?いまは昭和?」と感じさせるのどかな田園風景が広がり、郷愁を誘う田奈。最近、森ノオトのメンバーの中で注目のエリアです。駅前の居酒屋「スタミナ田奈」は、田奈の人たちの「第二の台所」とも呼べる存在。初代は焼鳥、二代目は中華、そして現・三代目のこだわりは「地産地消」! ここでしか食べられない「田奈うどん」はいまや看板メニューです。今年春からはマルシェもスタートしています。

「うわあ、きれい……」

思わずため息がもれてしまうほど、彩りが美しい田奈うどんが運ばれてきました。きゅうりやトマトが目に鮮やかなキリッと冷たいうどんに、ゆずと和だしが香るほかほか鍋焼きうどんの2種類が、順にテーブルにのりました。取材の日は、昼間は半袖、朝晩は長袖という季節の変わり目で、「いまだけ、どっちも食べられるよ」という店主の声に、「どっちも食べたい!」と欲張りにも答えてしまいました。

この「田奈うどん」というネーミング、田奈で食べるうどんだから? と思えば、田奈の食材を使ったうどん、ということ。地元・田奈の野菜と、横浜のブランド豚「ハマポーク」を具材に、田奈で採れた小麦を使った田奈うどんを食べるという、超ローカル・地元愛たっぷりのうどんなのです!

 

田奈うどん夏バージョンは、きゅうり、トマト、ミョウガなど夏野菜が彩り鮮やかで、さっぱりいただける。田奈うどん980円

 

田奈駅から歩いて1分ほどの道路沿いにある「スタミナ田奈」は、創業「40年くらい」というから驚き。現当主の橋本昇さんで3代目です。

橋本さんが幼いころに、お祖父さんが焼鳥屋をオープンしたのがスタミナ田奈の始まり。橋本少年は小学校の夏休みを利用しては横浜の港の方から田奈に滞在し、昼間は恩田川添いの農地・緑地で遊び、夕方にはお祖父さんのお店を手伝い、お小遣いを稼いでいたそうです(笑)。

「多い日には1日1000本も焼鳥が出ていたんですよ」

と、奥様の理恵さん。日に焼けた少年が汗をかきかきお客さんに焼鳥を運ぶ姿が目にうかびます。往事の田奈の盛況がうかがい知れるエピソードです。

 

絶大な人気を誇るスタミナ餃子(500円)は、にんにくやショウガの味がスパイシーなのにどこかさわやかな風味。ザクザクの歯ごたえ、ジューシーなお味がヤミツキに!

 

続いて出て来たのは、看板メニューの餃子。「ここは餃子が有名ですよ」と、地元の方から教えていただいたのですが、なるほどうまい! にんにくと餃子、ニラにキャベツがざっくり刻んであって、ハマポークのうまみが口のなかでジュッとはじけます。

「餃子の具材はすべて手で刻んでいるんです。だからこれだけパンチのある味が出せるんですね」

と、橋本さん。あっという間に1皿、ぺろり。取材中だというのにビールが飲みたくてたまりませんでした。

見るからに美しく澄んだ味の田奈うどんは、和食の世界で腕を磨いた橋本さんの代表作とすれば、餃子は中華料理に力を入れていた2代目・橋本さんのお父様の味。初代・お祖父さんの築いた焼鳥店から続くユニークで幅広いメニュー構成が「ザ・居酒屋」の懐の深さを表しているとも言えますね。

 

スタミナ田奈は、カウンターにテーブル席、奥に座敷がある定番の居酒屋スタイル。店の奥には本格焼酎がずらり。有名ブランド焼酎が1杯500-600円とうれしい価格

 

橋本さんが「地産地消」に目覚めたのは、いまから4年ほど前のこと。JA田奈の朝市に足を運び、そこで田奈うどんの乾麺に出合ったことがきっかけでした。

何と言っても「田奈で小麦が採れるなんて」ということに驚き、ついでに手にした朝採れ野菜の美味しさに改めて目が覚めた橋本さん。そう言えば店の目の前には、かつて少年時代の遊び場だった田畑が広がっていて、ここから採れた地の恵みを自分の店で表現できないだろうか……そこから、地元の農家との結びつきが生まれ、橋本さんのなかで「地産地消」というキーワードが大きなテーマになってきました。

「田奈の野菜は、包丁で切った時から香り、みずみずしさが全く違うんです。トマトやきゅうりのようなありきたりの野菜でも、とても美味しい」

例えばトマトやきゅうりは、「もろきゅう」「梅きゅう」「塩トマト」など切って出すだけの居酒屋メニューに直結しますが、橋本さん曰く「切って食べるだけでも幸せ」という採れたて野菜に、「このトマト、田奈の農家さんがつくっているんですよ。朝採れです」というメッセージが隠し味になり、食べるお客さんにも幸せが伝播してきます。

誰がつくった野菜なのか顔が見えるから、ともかく安心・安全で、お客さんにも畑の様子やその時の気候、農家さんの想いなどを伝えられる」。農家と、お客さんをつなぐのが料理人である、と橋本さん。

 

橋本さんの愛娘・さえちゃん(2歳)。お店のマスコットキャラクターとして常連さんに可愛がられている。お父さんのつくる田奈うどん、餃子が大好きで1人前ぺろりと食べちゃうんだそう。さえちゃんが生まれてから子連れのお客さんも増えた

 

この春には店舗前の駐車場で「スタミナ田奈マーケット」もスタート。真夏以外の月に1度、店頭の駐車場スペースで田奈野菜の販売と、ベーゴマ大会を開催し、独自のマルシェスタイルが話題になっています。

「実家の押入に眠っていたベーゴマを発見した時に、懐かしさが募って。やってみたら意外と上手に回ったんですね。常連さんやご近所さんに声をかけてベーゴマ大会をやったら盛り上がって、それから田奈ベーゴマ倶楽部に発展して、いまでは全国ネットワークです(笑)」

地元の大工さんによる竹とんぼづくりも始まり、昔の遊びが田奈で流行中?

「ベーゴマやけん玉やおはじきなど、昔の遊びを子どもにやらせてみると、意外と夢中になるんですね。大人も子どもも交じって真剣勝負が始まります」

そう語る橋本さんの表情が、みるみる少年のように生き生きとしてきました。

 

橋本昇さん・理恵さんご夫妻。「田奈の第二の台所」を切り盛りするお父さんお母さんとして、地元の人たちをいつも温かく迎え入れてくれる

 

「地産地消」に取り組み始めてから、橋本さんの世界はどんどん広がっています。

「お店って、地域の情報の発信の場になる気がします。地元でどんな野菜が採れるのか、今年の気候はどうだとか。また田奈ベーゴマ倶楽部やスタミナ田奈マーケットを始めて、地元の自治会や学校とも連携が強まり、こういった関係性が育まれることで、いざという時の防災や助け合いにも役立つのでは」と、橋本さん。

沿線ではちょっと地味な印象もある田奈が、最近、キラキラ輝いて見えるのは、田奈にしかない宝と、それを生かそうとする人たちの志がキラリと光っているからなのかもしれません。夏の日の少年のように、無心で遊び、楽しみ、存在自体がみんなを元気にする、そんなお店「スタミナ田奈」。やっぱり田奈、熱いなあ!

 

☆madoka’s eye

取材中、ずーっと人懐っこく話しかけてくれた橋本さんの愛娘・さえちゃん。さえちゃんを抱っこしながら理恵さんは「田奈の人たちに、うちのお店を“第二のキッチン”と思ってもらえれば」と話してくださいました。ファミリーだけでなく単身者向けのアパートも多い田奈。仕事帰りに疲れたら、ちょっと顔を出してマスターと話して、ほっとしてほしい。あるいは疲れて今日はごはんをつくる気が起きないというお母さんにも、子どもと一緒に地元のごはんを食べて、元気を出してほしい、と言います。

この街には、自分の家以外にも「ただいまー!」と帰れる場所がたくさんあって、いいなあ。取材中ずっとほっこりした気持ちだったのは、鍋焼きうどんの温かさだけでなく、素朴で温かい橋本夫妻のお人柄にふれたからだと思います。

今度、森ノオトの子連れ宴会でお世話になります!

Information

場所:スタミナ田奈店頭

ベーゴマ大会、デコベー(ベーゴマのデコレーション)、地場野菜の販売、焼鳥の販売など、アットホームで楽しいマルシェです。次回は10月27日(土)13:00-17:00、スタミナ田奈店頭にて!

住所:横浜市青葉区田奈町15-1

TEL:045-983-4573

OPEN:17:00〜23:00

定休日:日曜日(日曜日でも宴会等の予約可能です)

アスセス:東急田園都市線田奈駅より徒歩1分

http://sutaminatana.at.webry.info/

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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