「小田原 ほうとくエネルギー」バスツアー レポート
こういうわくわくした朝はいつぶりでしょうか? 晴れ渡る快晴の空のもと、駅に待つバスに参加者が続々と乗り込み、いざ小田原はほうとくエネルギーへ! 大人の社会科見学の始まりです。

今回のバスツアーは、「次世代郊外まちづくり 住民創発プロジェクト」の参加団体でもあるたまプラnetworkさんが、我々たまプラーザぶんぶん電力の活動を盛り上げるために、市民電力とはどんなものか、実際に先行している事例を見に行ってみようと企画してくださいました。実はこのツアー、元々7月に予定されていたのでしたが、台風の影響でやむを得ず延期に。2カ月後の9月12日、素晴らしいお天気に恵まれての実施となりました。それだけにみんなの期待は膨らむばかり……。

 

目的地のほうとくエネルギー株式会社(通称:小田原電力)は、神奈川県でいち早く発足した市民電力。

 

「ほうとく」というのは、小田原出身の農政家・思想家である二宮尊徳の「報徳思想」からきているそうです。

 

実は私、小田原には多少所縁がありまして……祖父母の出身が小田原で、それだけに懐かしい親しみのある土地なんですね。おじいちゃんに「二宮金次郎のように、勉強しなさい!」とよく言われていたもので…… 何とも感慨深いツアーとなりました。

 

本日のみんなの愛車。細い道もがんばるかわいいバス

 

さて、一行を乗せたバスは、最初の目的地、富水小学校へほぼ定刻に到着。屋上にはほうとくエネルギーが小田原市の協力の元、最初に設置した発電出力約50kW級の太陽光パネルがあります。

 

ここで、小田原ほうとくエネルギー副社長の志澤昌彦さんが案内役で登場。富水小学校校長先生とともに我々一行を暖かく迎えてくださいました。

 

ほうとくエネルギーの志澤さん

 

屋上からは足柄の山々を臨むことができ、美しい景色と爽やかな風、子どもたちの歓声を遠くに聞く、心地よい空気が漂います。灼熱の太陽も太陽光パネルの元では、ありがたく感じるものです。

 

ほうとくエネルギーでは、小田原市の屋根貸し事業の実施を受けて、富水小学校の他に2カ所の小学校の屋上に太陽光パネルを設置、全部でおよそ120kWの発電量を確保しています。

 

足柄の山々を臨む。屋上の太陽光パネル。子どもが立ち入らないよう、柵が設置されていた

 

続いては、山道を登ってメガソーラー発電所へ。小型のバスとはいえ、狭い山道を通るのはなかなかスリリング。最後はやはり徒歩での移動となりました。山道を抜けてメガソーラーが広がる風景は、未知との遭遇さながら。

 

ここは、元々公共残土集積場だったそうで、平らな開けた土地だったこともメガソーラーを設置するに当たって幸いしたとか。

 

土地の所有者である辻村百樹さんは、なんと北条の時代に殿様から土地を与えられて以来、林業などを営みながら一帯を代々守ってきた由緒あるお家柄の方。杉などの植林は江戸時代からおこなわれてきたそうで、そこここに江戸時代に植林されたという威厳のある杉の大木が存在感を放っていました。

 

辻村さんと一心に耳を傾ける参加者。お天気は最高だったが、暑かった!

 

辻村さんがおっしゃいました。

「私たちは、戦後までほとんどのエネルギーは山から得ていた」と。

 

メガソーラーもまた、時代と形を変えて山からエネルギーを得るための新しい役目なのかもしれません。

自然豊かな美しい土地の緑の中の発電所として、地元の人々とともに歩んでゆくために、パネルの下の地面には除草剤ではなく、背の低いクローバーの種をまく予定だそう。

除草の為に羊を飼う案もあったそう。感電の恐れがある為断念したとのことだが、想像するとわくわくする

 

海が見える立地。空気の澄んだ日には遠く大島も臨めるとか

 

この美しい発電所は、この10月、間も無く発電を開始する予定。稼働すれば、984kWhの電気(約260世帯分の年間エネルギーに相当)がここから生まれることになります。

 

送電線がつながれ、電気が流れるのを待つ電柱

 

一行が続いて向かったのは、小水力発電所の遺構です。この発電所は、遡ること大正時代、辻村さんのおじいさんが二つの川の流れを利用して建造したもの。当時は、なんと117kWhもの出力を誇り、自らの自宅や製材所への給電、近隣の紡績工場への売電もおこなっていたといいます。

 

発電所の跡地にはあまり見慣れない頑丈そうな石組みが能古会っていました。ここにかつては発電機が設置されていましたが、こうした数々の設備も戦後の混乱で無くなってしまったとか。

 

写真左側から水が流れ込んでいたそう

 

続いて、山を登って水路を横目に沈砂池へ。山の中でこれらの遺構が突如現れる様は、実に神秘的です。正直言うと運動不足がたたり、足が悲鳴をあげていましたが……。

 

石造りの水路。古代遺跡のよう

 

発電には、二つの川の流れを変えて、水量を調整していたそうで、調整池から水路を通り、一気に発電機へと流れ込む構造だったのでしょう。よくみると水が流れていた道が見えてきます。発電が止まってからは長らく放置され、荒れ果てていたものをつい最近市民の手で整備し、私たちもこうして見ることが出来るようになったのだそうです。

 

遺構を目の前にすると、これほどの発電技術がおよそ100年前に既に存在していたことへの驚きとともに、先人たちへの畏敬の念が自然と沸き上がってきます。新しい技術の進歩も大切ですが、こうした昔の技術にもう一度着目することで、エネルギー問題を考える上で重要なヒントを見つけることができるかもしれません。

 

沈砂池跡。ここへ一旦水を溜め、砂などを沈めて水量を調整していた

 

もりだくさんな小田原ツアーはまだまだ続きます。

 

小田原の名産といえば、「かまぼこ」。1号線沿いにある「鈴廣かまぼこの里」は、小田原はもちろん箱根に行く道すがら知っている方も多いのではないでしょうか?

 

こちらでは、太陽光発電はもちろんのこと、工場の屋上に太陽熱パネルを設置し、太陽熱を利用した給湯システム、地中熱を利用した換気システムを採用して、さらに進んだ省エネ、創エネの取組みがなされています。地中熱利用とは、地上と地中の温度差を利用して外気を地中に入れ、夏は冷やし、冬は暖めてから室内へ取り込むシステム。まだ新しい設備ですが、年間の省エネ率は前年比でマイナス15%を見込んでいるそうです。さらに、省エネのおまけで、80%もチリや埃、花粉が除去できるという優れもの。鈴廣さん、美味しいのはかまぼこだけじゃないんですね。

 

屋上の太陽熱パネル。こちらは年間予想省エネ率20.5%

 

その後、レストラン2階の広いスペースに移動し、ほうとくエネルギーの成り立ちから組織についてなど、志澤さんからじっくり詳しく伺うことができました。

 

ほうとくエネルギー発足のきっかけは、やはり3.11の東日本大震災とそれに続く福島第一原発の事故。この地は、度重なる計画停電に加えて名産品の足柄茶からセシウムが検出されるという二次的被害にも見舞われました。観光地でもある小田原に人が訪れなくなったことに地元の企業経営者たちが危機感を募らせたことに加え、小田原市長はこの先を見据えて自然エネルギーの可能性にいち早く着目し、ISEP(認定NPO法人環境エネルギー政策研究所)の飯田哲也さんとの公開対談を実施したそうです。これが、小田原電力の構想のもととなり、今に至ったそうです。

 

志澤さんから二宮尊徳の名言を教わりました。

「道徳なき経済は犯罪であり、経済なき道徳は寝言である」

これが、報徳思想から生まれたほうとくエネルギーの根底に流れる理念なのですね。深いです。

 

最後に鈴廣かまぼこ株式会社副社長の鈴木悌介さんのお話を聞きました。

ただ、原発に反対するのではなく、自らエネルギーをつくっていくことが大切だと話す鈴木さん。鈴廣はゼロエネルギーの新ビルを建設中! 出来上がれば、54%のエネルギー削減になるのだそうです。前向きな姿勢と経営者ならではのスピードで、エネルギーの地産地消を目指して、私たちのどんどん先をゆく鈴廣さんとほうとくエネルギーの皆さんには、脱帽の連続。私たちも後に続こうと気持ちを新たにしました。

 

鈴木悌介副社長。鈴木さんは、エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議(通称:エネ経会議)の代表理事でもある

 

「小田原電力ツアー」フィナーレはお待ちかねの懇親会です。会場は、鈴廣のレストラン「えれんなごっそ」。ブッフェスタイルで美味しい鈴廣のかまぼこや小田原の幸を味わうことができます。そして、なんと地ビールも飲み放題!かまぼこ好きの私は、山のようなかまぼこを肴にビールをグビッと! 至福の時を過ごしました。

 

「えれんなごっそ」とはこの地方の方言で、「いろんなご馳走という意味だそう

 

参加者の皆さん(私含む)この時間を楽しみに参加した方も多く、和やかで楽しい時間となりました。限られた時間の中で、最後はもう一杯ビールを飲むか、お土産を買いに走るか……悩んだ末に、お土産のかまぼこを買いました。味も形も色んなかまぼこがあって、これまた楽しいのです。私がいつも選ぶのは、中にチーズや明太子が入った「ぷちかま」と、青しそが巻いてある「かをり巻」。オススメです!

 

帰りのバスは宴の余韻を引きずりながら、渋滞にも関わらず、笑いと会話の途切れない楽しい帰路となりました。たまプラーザに到着したのは、とっぷりと日も暮れた頃。

 

今回のツアーで、日帰りで行ける観光地小田原の魅力も再発見しました。訪れた際には、屋根の上もぜひ眺めてみてください。

 

たまプラnetworkの皆さん、楽しいツアーを本当にありがとうございました!

地ビールはなんと3種類! どれを飲むかどれから飲むかで大盛り上がり!

 

 

青木 真紀
この記事を書いた人
青木真紀ライター卒業生
横浜市青葉区育ち。フリーランスのグラフィックデザイナーとして活躍していたが、森ノオトの北原、梅原とともに市民電力会社「たまプラーザぶんぶん電力」を立ち上げ、うっかり取締役デザイン室長に。2015年より横浜市会議員を経て、母親、生活者目線の政治を等身大で展開中。
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