青葉の歴史と未来をつなぐ!「あおば紙芝居一座」
青葉区って新しくて歴史の浅いまち……と思われがちですが、実は古墳があったり、大山街道の遺構があちこちに見られ、江戸幕府の大奥の化粧領だったりと、掘り起こせば魅力的な歴史がたくさんあります。わたしたちのふるさと・青葉区の歴史を、わかりやすい物語と絵で未来に伝える活動をしている「あおば紙芝居一座」を取材しました。

森ノオトでもすっかりおなじみ、歴史探偵・高丸こと宮澤高広さん。『ひろたりあん通信』の連載『わが街今昔』では、同じ地域の現代と昔の風景を比較した写真とコラムが大人気で、歴史探偵の講座シリーズ「街道を往く」「源流を往く」は高丸ファンが詰めかける盛況ぶりで、地元の歴史の語り部として大忙しの日々を送っています。

中高年のアイドル(?)とも言える高丸さんですが、実は地元の歴史物語を若い人にこそ伝えたいと、2008年に仲間と一緒に「あおば紙芝居一座」を立ち上げ、区内の小学生に向けた語り部としても動いています。高丸さんには紙芝居画家という一面も!

2月22日、美しが丘西地区センターで開催された「紙芝居作り講座」にお邪魔してきました。この日は4人の女性が、絵コンテを描きながら、懸命に物語を練り上げていました。榎が丘にある「椎の木地蔵尊」のスダジイをテーマに物語をつくろうという女性、お料理が得意な女性はレシピを物語にして伝えようと、試行錯誤。高丸さんは「わたしの場合はいいタイトルが決まれば、物語がどんどん進んでいきます」など、一人ひとりにアドバイスをしていました。

 

ストーリーを元に絵コンテをつくる参加者たち

 

「あおば紙芝居一座」は2009年の青葉区政15周年記念事業「郷土の歴史を未来に生かす事業」に向け、2008年10月に紙芝居作り講座としてスタートしました。地元の民話や言い伝えを調べるなかから生まれた物語は『カッパの平六』『水神姫』『鉄火松のおはなし』『つばめのお宿』『めかりばあさん』の5つ。10以上にタイトルが増えた今でも、一座の看板としてたくさんの子どもの心を魅了しています。

「調べていくうちに、私たちの地域にはこんなに素敵な歴史があったのか! と驚くことばかりで」

こう話すのは、一座の代表・宮原泉さん。事業を開始する時に「紙芝居にしよう!」と発案したのは、実は宮原さんだったとか。青葉区の中でも歴史の古いまち・鉄町エリアにお住まいで、PTA活動や自治会活動など多岐にわたって活動し、古くから地元に住む人たちの声を伝える役割を果たしてきました。「特に鉄小学校には、数多くの民話が残っている。宮原さんは地域に入り込んでいるから、いろんな話を拾ってくるよね」と、高丸さん。

 

一座がスタートした子年にちなんで生まれたネズミのマスコットキャラクターの背景には、水輪が描かれている。地元の歴史を掘り起こし、地域を愛する心が水の輪のように広がってほしいとの願いが込められている

 

一座の皆さんが紙芝居をつくる時に注意をしているのは、時代考証や下調べをしっかりやること。メンバーの野田登志子さんは「2008年の講座の最初に、大きなウソはOKだけど、小さなウソはダメだと先生に言われたんです。それが私たちの基本」と話します。例えば、物語の中に神様や仙人が出て来るのはOKだけど、和服の合わせ方や、その時代のチョンマゲの形、足袋の色などは、歴史に忠実に。「史実だけではおもしろい物語にするのは難しいから、どこで話をふくらませるか、それがカギなんです」(野田さん)

「よく、青葉区は歴史が浅いまちだとよく言われるけれど、実は何もなかった時代から暮らして来た人たちの歴史があり、いまの街が生まれている。今、私たちが生きているのは、先人たちが生きてきた地元の歴史があってこそ。それを未来に伝えたい」と、高丸さんは力説します。

あおば紙芝居一座は、山内図書館で定期公演をおこなうほか、各地の夏祭り、小学校の授業や、青葉区おはなしフェスティバルで公園をおこないます。昨年リリースしたのは『わかさま徳恩寺へ行く』。江戸幕府とも深い関わりのあった恩田の古刹・徳恩寺を舞台にした歴史物語です。

今は5月の公演に向けて、新作の制作に大忙し。作画を担当するのは出産して間もない30代のお母さんだとか! 「みんなで子守りをしている間に、絵を描いてもらっているんですよ」と、メンバーの大森洋一さん。多世代で歴史をつなぐ活動が広がっていることに、感動!

 

桂台には『にっぽん昔話』で知られる「万年寺谷戸」の遺構があり、そこをモチーフに物語をつくりたい、と盛り上がる一座の皆さん。諸説ある万年寺谷戸付近は、訪れるたびに新しい発見があるんだとか

 

森ノオトのFacebookページでも、一座から情報をいただいたらお伝えしていきますね。新作の誕生がいまから楽しみです。

Information
Avatar photo
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく