エコ住宅探訪(1) リストのゼロエネルギー・エコハウス
住宅の断熱性能を究極まで高めたら、いったいどんな暮らしになるのだろう。「リストガーデン オーレリアン深沢」は、建もの燃費を計算し、建売住宅でゼロエネルギー・エコハウスを実現した住まいです。最先端のエコ住宅を探訪する連載、スタートします。

エコな住宅って、なんだろう。無垢材のさわやかな手ざわり、漆喰の壁、緑あふれる植栽、太陽光発電がついていること、省エネの設備がととのっていること……。価値観は人それぞれだと思います。森ノオトでは、衣食住のトータルでエコロジーな暮らしを考えていくために、先進的なエコ住宅をさまざまな角度から取材し、ご紹介していこうと思います。

 

「エコ住宅探訪」の第一弾は、横浜に本社があるリストが手がける「リストガーデン オーレリアン深沢」。森ノオトのエコDIYまちづくりを応援してくださっている建築家でみかんぐみ共同主宰の竹内昌義さん(東北芸術工科大学教授)が監修した「ゼロエネルギー・エコハウス」です。

世田谷の閑静な住宅街に馴染むシンプルな切妻屋根が特徴の「リストガーデン オーレリアン深沢」。屋根の両側に太陽光パネルが搭載されている

東急田園都市線・桜新町駅から徒歩20分、目の前には園芸高等学校の緑が広がる深沢の住宅地の一角に、5棟のコンパクトな住宅が肩を並べるように佇んでいます。白を基調とした外観に、室内空間も明るいホワイト系で統一され、清潔感あふれる印象。アオダモ、モミジなど季節によって表情を変える植栽は、1棟ごとに閉じた世界をつくらず、緑の中に共存する開かれた住まい観をあらわしています。

 

「ゼロエネルギー・エコハウス」は、建物における1年間での「エネルギー収支」をほとんどゼロにする家です。よく見ると、可愛らしい三角の切妻屋根には全面に太陽光パネルが設置され、時々刻々と移ろう太陽の光を電気に変えて供給し、余った電気を売電します。壁には断熱材を厚く入れ、最高ランクの断熱性能を誇る窓サッシを標準搭載し、住宅の省エネ性能を今できる極限まで高めています。つまり、住まいの冷暖房で使うエネルギーを減らし、日中は太陽光発電でまかない、売電での収支でエネルギーコストがほぼゼロ状況まで持っていけると試算されています。

モデルルームのインテリアを担当したのは、森ノオトのリポーターで建築家の山川紋さん

森ノオトのエコDIY研究会での竹内さんのお話は、参加者に大きな衝撃を与えました。

 

日本の既存住宅のうち、4割が無断熱であること。

 

日本人は「住めば都」と考え、住まいの快適性については二の次で、断熱性の低さ=快適でない住まいに慣れて疑問にも思わないということ。

 

「きちんと断熱がほどこされたエコハウスで暮らせば、暑さ寒さの快適性への感度が上がり、1℃や2℃の室温の変化に敏感になります。そして、住宅全体の温熱環境が一定なので、住まいを隅々まで使い尽くすことができるのです」と、竹内さん。

 

つまり、冬に寒い家ならば窓辺ほど冷え込み、結露してしまうので、窓辺には近寄らなくなりますが、断熱性が高い家ならば壁側も居住空間として広々と使えて、生活面積の広い住まいになると言えるのです。

現在はモデルルームとして使われている2階は、間取りを自在に変えられる「ミライカベ」で、ワンルームから3部屋まで仕切れる可変性のあるプラン

ここで、断熱性能が高いことが、なぜ省エネと健康につながるのか、基本をおさらいしましょう。

 

住宅の熱の出入りが最も大きいのは「窓」で、夏は室内に入ってくる熱の73%が、冬は室内から逃げていく熱の58%が窓からです。断熱性が不十分であれば、冬場であればいくら暖房をしても熱が窓から逃げてしまい、暖かい室内と寒い外気の境界にあたる窓で激しい温度差が生じ、空気中の水蒸気が結露となり窓や壁に付着します。室内に結露があると、カビやダニの温床になり、住んでいる人の健康に影響します。暖房している部屋と、そうでない部屋(トイレや脱衣所など)の温度差が激しいと、暖房していない部屋に結露が発生することも。押し入れやクローゼットに結露を見つけてショックを受けた経験がある人もいるのではないでしょうか。

 

断熱性能が十分な住宅では、頭と足元の温度差が少なく3℃ほどであるのに対して、断熱性能が不十分だと頭と足の温度差が15℃以上になることもあり、足元が冷えてしまいます。

 

また、高齢者に多い入浴中の急死は年間1万7000人と、交通事故の死者よりも多いと言われています。これは「ヒートショック」という現象で、温かい部屋で安定していた血圧が、寒い脱衣所で血管が収縮して上昇、寒い浴室で血圧がさらに上昇し、熱めの浴槽に浸かることで急速に血管が広がり血圧が低下するなど、急激な血圧の上下を繰り返します。これが高齢者の身体に負担となり、ヒートショックによる突然死が後を絶たないのです。

「完璧な気密性を実現しながら、壁の中の結露を発生させないよう、断熱と気密の設計には細心の注意を払った。大変ではあったが、よい経験を積むことができた」とリストの相澤毅さん

断熱性の低い住宅のこうした問題点を「ゼロエネルギー・エコハウス」では解決しています。リストガーデン オーレリアン深沢の仕様は「2×6工法」(2インチ×6インチのパネルで住宅を構成する工法)で、壁面の断熱材の厚さは通常89mmなのに対し、ゼロエネルギー・エコハウスでは130mm以上の厚みをもたせています。

 

いくら断熱材が厚くても、隙間があってそこから熱が逃げてしまっては意味がないので、気密性を高めるために、住宅の内壁に近い層に気密シートを隙間なく施工。外壁側には壁体内結露を避けるために透湿防水シートを施工し、外壁材との間に空気層を設けることで、湿気だけを逃す壁の構造になっています。

 

「ゼロエネルギー・エコハウスでは、断熱の基本性能をいかに上げていくのかに注力しました。エネルギー収支をゼロにする方向性としては、創エネで電気をたくさんつくって使うよりも、極限までエネルギー使用をおさえ創エネに頼らない仕様を目指しました」とは、リスト開発本部戸建事業部PJ推進課の相澤毅さん。

 

施工で特に気を使ったのは気密を完璧にすることで、基礎断熱から天井断熱まで、一棟丸ごとすっぽりと包み込むよう、気密シートのつなぎ目に隙間を出つくらないことに細心の注意を払いながら、現場で調整していったとのこと。

開口部は南面に大きくとり、ほかは隣戸に配慮して小さめにしている。窓からの熱損失の軽減にもつながっている

また、世田谷区深沢という高級住宅地で、住戸面積はおさえめ(土地面積は30坪ほど、延床面積は2階建てで85m2から93m2)、隣戸が近接していることもあり、開口部(窓)は大きくとらず、それが結果して窓面からの熱のロスを軽減しているのも特徴です。もちろん、窓の仕様はペアガラスの樹脂サッシで最高性能のもの。冬場に窓の近くに腰掛けても冷気がこない、部屋の角の床も冷えない、隅々まで使い尽くせる設計です。

 

リストガーデン オーレリアン深沢では全棟で「建もの燃費」を計算しているのも特徴で、年間暖房負荷、年間冷房負荷、外皮平均熱貫流率、熱損失係数、測定C値(気密性能をあらわす数値)から年間のエネルギー消費を割り出し、太陽光パネルでの自家発電量と相殺して、建物全体の年間での燃費を示しています。建もの燃費は-1.84kWh/m2・年から-5.14kWh/m2と算出され、マイナスになることで年間のエネルギー消費量が「ゼロエネルギー」であることがわかります。

「山川さんにインテリアコーディネートをお願いしたのは、エコハウスの設計思想に精通し、室内を隅々まで使える空間を表現してくれると思ったから」と相澤さん

取材した日は小雨がちらつく肌寒い日でしたが、確かにゼロエネルギー・エコハウスはエアコンをつけなくても温かく、1階、2階の温度差も、足元の冷えもまったく感じませんでした。エアコンも1階、2階にありましたが、おそらく数十分運転して部屋が温まったら消しても、一日中温かいままなのがエコハウスの基本性能です。

 

建売住宅でゼロエネルギー・エコハウスを提案するのがリストガーデン オーレリアン深沢の画期的な点と言えます。相澤さんによると見学、問い合わせが相次ぎ、すでに買い手がついている住戸もあり、反響は上々とのこと。

 

2020年には建築物の省エネルギー基準が小規模な住宅にも義務づけられ、さまざまな仕様のエコ住宅の建設も進んでくるものと思われます。建売住宅でいち早くゼロエネルギー・エコハウスを実現したリストガーデン オーレリアン深沢。先駆的なエコ住宅のつくり手、住まい手のインタビューを、森ノオトでは今後も続けていきたいと思います。

Information

リストガーデン オーレリアン深沢

http://www.list.co.jp/list-g/fukasawa/

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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