世界にひとつだけの毛糸をつむぐ。小宮山ゆみこさんを訪ねて。
秋の訪れとともに日ごとに肌寒くなり、ニットが恋しい季節ももうすぐ。ニットを編む毛糸を、手でつむぐことができるって知っていますか? 森ノオトのリユースサロンで出会った小宮山ゆみこさんに、手つむぎや編み物の魅力をお聞きしました。10月21日には、森ノオウチで糸つむぎのワークショップをひらきます。世界でたったひとつの毛糸をつむいでみませんか。

 

お店に売られている毛糸は、糸になってぐるぐる巻きになっています。私はこれまで、毛糸といえばあの玉を思い浮かべ、どんなふうにできるのか、想像したことがありませんでした。

 

「つむぐ」にふれるきっかけは、8月下旬の森ノオトのリユースサロンでのこと。幼稚園のママ友達3人で出店していた「きのしたや」の小宮山ゆみこさんが、糸つむぎのワークショップを開いていたのです。当日は体験できなかったのですが、気になって後日小宮山さんに会いに行きました。

 

横浜市青葉区にある小宮山さんの自宅の工房を訪ね、羊毛からつむぎ車で毛糸をつむぐ様子を見せていただきました。羊毛から、くるくると毛糸がつむがれていく様子は魔法のよう。つむぎ車のスーッスーッという音が心地よく、時間の流れがゆっくりと感じられました。

 

足でペダルを踏んで糸車を回す小宮山さん。「糸つむぎは、無心になれてそれだけで楽しいんです」

 

手つむぎの毛糸は、手加減によって太さがまちまちで表情豊かなのが魅力です。羊毛を手でなめしながらつむいでいくので、機械で作られた市販の毛糸に比べて、手触りもずっと柔らか。小宮山さんが手つむぎの毛糸から手編みしたニットキャップをかぶってみると、チクチクせずふんわりと暖かく、羊の毛に包まれているような着け心地でした。

 

手つむぎの毛糸で編んだニットキャップ。ブラックとネイビーの羊毛をミックスしてつむいだ糸は奥行きがある

 

今回、森ノオトの「森ノファクトリー」のワークショップとして、糸つむぎの会を開きます。既製品が簡単に手に入る時代ですが、モノが生まれる過程を知り、体験することで、身の回りのモノを見る目や、モノへの愛着が変わってくるのではないかと思います。大量生産、大量消費を日常の中で見直すきっかけにもなってほしいな、と願っています。

 

ワークショップでは、小宮山さんに教わりながら、木製のスピンドルを使って毛糸をつむぎます。羊の毛のままのナチュラルカラーの原毛のほか、カラフルに染められた20種類以上の原毛から、自分の色を選びます。単色でも、ミックスでも。

 

色とりどりの原毛を見ているだけでわくわくする。右側がナチュラルカラー

 

糸つむぎに使うオランダ製のスピンドルは羊のイラストがポイント。つむいだ毛糸は、ポンポンのマスコットにも。オリジナルの木製の羊の糸巻きに巻きつけてオーナメントを作ることもできる(別途500円)

 

「最初につむいだ糸って、その人の味が出て一番かわいいんですよ。きれいで完璧な糸じゃなくていいんです。細くなったり太くなったり、自分が好きな糸をつむいでほしい」と小宮山さん。

 

手つむぎの糸は、まるでアートのよう。そのまま束ねて飾るだけでもかわいらしい。

 

ワークショップでは、お茶とおやつを囲み、おしゃべりしながら「つむぎの時間」を楽しみます。お子さん連れでも参加できるのが魅力。小宮山さんは「みんなで集い、おいしいものを食べて、かわいいものをつくる。そういう時間が、育児中の方にも癒やしになってほしい」と言います。

 

こんな風に糸をつむいでいく。

 

この日のおやつは、ワークショップのもう一つのお楽しみ。産前は都内のオーガニックカフェなどでメニュー開発や調理をしていた三村桂さん(きのしたや)が、素材の持ち味を生かした季節のお菓子を用意します。そして、テーブルウェアは、雑貨関連の仕事をしてきた木村典子さん(きのしたや)が担当します。スキルを持った地域の女性たちが、心をこめてこの場をプロデュースします。

 

きのしたやのメンバーで試食会を重ねている。午前はクッキーセット、午後は季節のタルトの予定(写真:小宮山さん)

 

きのしたやの3人は、同じ幼稚園のママ友達。糸つむぎを教えてくれる小宮山さんは、年長の男の子のお母さんです。縫製業を営む家に生まれ、幼いころから糸やボタンをおもちゃ代わりに触れて育った小宮山さんは、大学卒業後はウェブの業界でキャリアを重ねてきました。編み物の世界に入っていったのは、妊娠、出産がきっかけでした。

 

妊娠期に体調を崩したときに、横になりながらでも、お茶をしながらでも、合間の時間でもできる、小宮山さん曰く「モバイル性の高い」編み物にふれる時間が増えていったそうです。

 

ヘッドホン帽は、息子さんのために編んだのが始まり。友人や街ゆく人から声をかけられ、頼まれて人にも編むように。他にはない、エッジの効いたデザインが印象的

 

独特のセンスの加え、キャリアを重ねてきた人だからか、ただの趣味で終わらないのが小宮山さんの面白さ。

 

「インターネットで世界中の編み物を知り、どんどんはまっていったんです。編み図一つとってみても、日本と海外とでは全然違う。専門用語の英語で書かれた編み図を解読しながら、海外の編み方を取り入れていきました。編み物と一口にいっても、毛糸から染め、編み図までそれぞれ深い世界で、面白いんです」

 

以前、インターネットでバターンを購入して編んだストール(Yoko Johnstonさんデザイン)。作品を販売しているのは自らデザインしたアイテムのみだが、他の作家のパターンを編むことでニットの世界観を広げた

 

小宮山さんの工房で出会ったティーコジーの愛らしさに胸が高鳴った。自身で編んだアイテムを生活に取り入れて楽しんでいる(三國万里子さんデザイン)

 

2年前からは友人と「mudcake」というブランドを立ち上げ、オリジナルの手編みや手つむぎの作品をウェブショップやクラフト展で展開してきました。

 

そんななかで、今回のワークショップでも協力し合う「きのしたや」は、今年6月の森ノオトの子ども服フリマへの出店がきっかけで生まれました。

 

「以前は一人で考えて一人で完結する、スタンドプレーの仕事をしてきたけれど、子どもが生まれてからは、地元の面白いスキルを持った人とつながって生み出していくことの可能性を感じています」と小宮山さん。

 

  • 森ノファクトリーの場が、そんな地域の女性たちが輝くフィールドになっていく。そんな期待がふくらんでいます。
Information

森ノファクトリー「いとつむぎワークショップ」

日時:2016年10月21日(金)

午前の部 10:30-12:30  午後の部 13:30-15:00

会場:森ノオウチ

〒227-0033 横浜市青葉区鴨志田町818-3(東急田園都市線青葉台駅よりバス「鴨志田団地」「寺家町循環」行き、「鴨志田町」下車徒歩3分)

参加費:1500円(材料費、道具代込み。季節のおやつ・ドリンク付き)

参加人数:各8人、お子さん連れ可

mudcake

http://www.digimash.com/p/

*森ノファクトリーでは、ものづくりを通して、循環型社会に向けた発信をしていきます。不要になった未使用布・古布・古着を活用した商品開発に取り組んでおり、当日、布モノを提供いただける方はぜひお持ちください。

(ニオイの強い布、Tシャツ、スウェット、フリース、セーター類、キャラクター柄はお断りしています。)

申し込み・お問い合わせ:NPO法人森ノオト(担当:梶田)

event@morinooto.jp

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この記事を書いた人
梶田亜由美編集長/ライター
2016年から森ノオト事務局に加わり、AppliQuéの立ち上げに携わる。産休、育休を経て復帰し、森ノオトやAppliQuéの広報、編集業務を担当。富山出身の元新聞記者。素朴な自然と本のある場所が好き。一男一女の母。
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