甘く優しいキンモクセイの香りをシロップに……
「あっ……キンモクセイの香り……」。季節はめぐり、少しずつ秋の深まりを感じていた時、今年もふわっと甘い香りにハッとさせられました。小さな橙色の花の集合体、そしてどこか懐かしい香りを放つキンモクセイ。この心安らぐ香りをとじこめたくて、キンモクセイのフラワーシロップをつくってみました。

 

キンモクセイは中国南部原産で、江戸時代に日本に伝わってきました。中国ではモクセイの樹や花のことを「桂花(ケイカ)」「丹花(タンカ)」と呼び、香り以外でも様々な効能があるとされ、重宝されています。桂花陳酒(白ワインにキンモクセイの花を3年程つけたお酒)や桂花茶(花茶)は日本でもよく知られていますが、他に蜜煮にした香味料・桂花醤、花を砂糖漬けにした桂花糖、花とはちみつを一緒に炊きこんだ蜂蜜桂花飯など、昔から中国では季節を通して親しまれている植物なのだそう。

 

キンモクセイは花びらだけでなく、濃い葉色や葉脈も美しい

 

キンモクセイは漢方の観点からは、お腹を温め寒さを散らすとされ、低血圧の改善・不眠症・健胃・目の疲れ・解毒作用・肝臓の働きを助ける・美白・ダイエット効果などもあるそうです。

 

なるほどなるほど……。

 

キンモクセイの香りが好きで、「花びらのシロップをつくってみたい!!」という思いでつくりましたが、まさか花びらに漢方的な意味があるとは知りませんでした。

 

ここで質問です。下記の写真をご覧下さい。お皿の上のクリーム色のお花は何でしょう?みかけたことはありますか? 答えは……

 

キンモクセイより柔らかな香りの銀木犀(ギンモクセイ)。実はキンモクセイの元となった品種

 

では、ここから摘みたての花びらでつくったキンモクセイのシロップをご紹介します。

 

<キンモクセイのフラワーシロップ>

材料

キンモクセイの花びら    50g

てんさい糖         300g

水            300ml

みかんのリキュール    100ml

(桂花陳酒やグランマルニエなどでも)

 

つくりかた

(1)キンモクセイの花びらのみを摘む。摘んだ花びらをザルに入れて、茎や細かいゴミを振り落とす。これを2、3回繰り返す。

 

子どもたちと楽しく摘んだキンモクセイの花びら。甘い香りがお部屋に広がる

 

(2)たっぷり水をはった容器に(1)の花びらを入れ、みかんのリキュールのうち半量の50mlを注ぐ。

*リキュールを入れるのは花の香りと風味を損なわないようにするため

 

水に浮かべた花びらの様子がみたくて、わたしはボウルではなく光を通すガラスの器に

 

(3) 手でゆっくりかき混ぜて、花びらについた汚れや小さな砂等を沈殿させる。浮いている花びらを手ですくってザルにとり、ボウルの水をかえ、(2)と同様に残りのリキュールを加え、もう一度汚れを落とす。

 

(4) 洗った花びらを手ですくってザルにとり、30分ほど水切りする。

 

(5)ホーロー鍋に水とてんさい糖を入れ、沸騰直前に花びらを加える。花びらがふつふつしてきたら、沸騰させないようにゆっくりかき混ぜながら、弱火で5分間煮て、火を止める。

 

花びらはぐつぐつ煮すぎないように注意する。香りが飛んで風味が落ち、てえぐみが出てしまうので、加熱は5分以内に

 

(6) キンモクセイの香りやエキスを抽出するため、そのまま人肌になるまで自然に冷ます。

 

(7) 冷ましたシロップを再び火にかけ、ふつふつしてきたら火を止める。煮沸消毒した保存瓶にシロップをつめて完成。

 

*山梨県にお住まいの「うにいくら」さんのレシピを参考にさせていただきました。

 

瓶は煮沸消毒して密閉し、脱気する。瓶詰め後、完全に冷めたら冷蔵庫で保存を。未開封なら3カ月保存可能だが、開封後は1週間で使い切る。香り高く美しいキンモクセイのフラワーシロップのできあがり

 

今回、キンモクセイのフラワーシロップに合わせて、豆乳で仕立てた杏仁豆腐もつくりました。花びらをおそるおそる口に入れた子どもたちの反応にドキドキ……。

 

「おいしい!!」「明日も食べたい!!」と言う声と満面笑みに私もにっこり。自分で言うものなんですが、とっても美味しかったです。そして、こうして家族と季節を味わうことは豊かでしあわせなことだな……と心から思いました。

 

杏仁豆腐とキンモクセイのフラワーシロップは見た目も味も相性抜群

 

この秋、このシロップを使ったお菓子づくりを子どもたちと楽しみたいと思います。

 

みなさんも来年、ふわりとキンモクセイの香りを感じたら、ぜひつくってみてくださいね。

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この記事を書いた人
おおかわらあさこライター卒業生
自然のもの、手仕事が放つ光を切り取り、写真におさめるフォトグラファー。ピュアでやわらかな感性から生まれる作品に、とびきり繊細でやさしい言葉をふわりと添えるフォトレポートが多くのファンを生んでいる。植物が好きで、フレッシュな姿もドライな様子も載せた植物図鑑をつくるのが夢。
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