地元の人に喜んでもらいたい!幻の梨「浜なし」は朝採れで
「剪定作業は高い技術が必要。誰にも任せられないんだよ」と語る坂田さん。剪定が一人前にできるようになるまで少なくとも5年はかかるそう
大きくて、あまい横浜ブランドの農産物「浜なし」。市場出荷をせず、生産者の軒先などほぼ直売のみで販売されるため、簡単には手に入らない”幻の梨”と言われています。市内でも先駆けて梨栽培を始めた坂田農園の坂田清一さんに、浜なしの魅力や、体験農園(梨狩り)への思いをお聞きし語っていただきました。(text:牧志保)

昨夏、よく通る道沿いに「浜なし」の看板をいくつも見ました。

「ここで梨が作られているの?」

横浜市民歴1年の私は、都市部の横浜で梨が栽培されていることに驚きました。

青葉区鉄町の坂田農園の坂田清一さんのお父さんが、梨の栽培を始めたのは昭和25年。まだ、横浜で梨を生産することが多くの人には想像できない時代でした。

横浜市が昭和50年ごろから、横浜の特産品として「浜なし」の名前で売り出し、今では ブランド果実として親しまれています。

分かりやすく丁寧に梨作りに関して教えてくれる坂田さんは、梨づくり歴30年のエキスパート。小中学校のPTA会長を歴任した”地域の顔”でもあり、温和な人柄が魅力

分かりやすく丁寧に梨作りに関して教えてくれる坂田さんは、梨づくり歴30年のエキスパート。小中学校のPTA会長を歴任した”地域の顔”でもあり、温和な人柄が魅力

浜なしのおいしさの秘密はどこにあるのでしょうか。

「浜なしは、梨が完熟を迎えるまで木になった状態にしておきます。そうすることで実は大きくなり、甘くなるのです。朝採ったものを、その日の昼に売る。消費地と産地が近いからこそできることです。浜なしは通常の販売ルートにはのらず、生産者の軒先で販売したり、直売所でのみ手に入れることができます。というのも通常の販売ルートにのせると店舗に並ぶまでに2日くらいはかかってしまうため、梨の食べごろをのがしてしまうのです」(坂田さん)

浜なしは、まさに地元の人だからこそ最高の状態で楽しむことができる幻の梨なのです。

毎年8月中旬ごろから販売が始まる浜なし。手作業で収穫し、袋づめして軒先に並べる

毎年8月中旬ごろから販売が始まる浜なし。手作業で収穫し、袋づめして軒先に並べる

坂田さんの農園の梨は、梨狩り、農園での直売、地方発送の3パターンで販売しています。浜なしは完熟の状態で収穫するため、収穫した時が食べごろ。配達日数のかかる遠方へは発送できない品種もあるそうです。坂田さんは「地元の人に楽しんでもらいたい」と梨狩り、農園での直売による対面販売を特に大切にしています。「お客様とじかにふれあうことで気付くことも多く、何よりお客様の喜ぶ顔を見るのが嬉しい」と坂田さんは話します。

9月に入ると、農園は一年で一番賑やかな時期を迎えます。梨狩りのシーズンです。この期間は、毎日農園を開放していますが、特に週末は小さな子どもからお年寄りまで多くの人が訪れます。「梨畑の中、かごを持って楽しそうに歩き回る子どもの姿が多く見られます。観光農業の魅力ですね」と坂田さんは話してくれました。

夏の明るい日差しの下、梨の葉のタープに覆われた木の下にたわわに実る果実。大きな梨を自分の手で収穫する体験は、子どもにとって、忘れられない思い出となるに違いありません。

「収穫体験をすることで、地元の農産物のことをより知ってほしいですね。青葉区は自然環境が豊かな地域ですが、農園での経験が、そのことを実感するきっかけになればいいと思っています」(坂田さん)

春に花を咲かせる梨の花。可憐な花を愛でるのもまた梨農園の楽しみ

春に花を咲かせる梨の花。可憐な花を愛でるのもまた梨農園の楽しみ

そんな思いから、坂田さんは地元の鉄小学校と嶮山(けんざん)小学校の3年生を対象に、農園をフィールドにした課外授業も行っています。児童は開花、摘果、収穫と年に3度農園を訪れます。春の摘果の見学時に、自分の名前を書いた袋を梨にかぶせ、自分の梨として成長を見守ります。夏になると、自分梨を収穫します。

子どもたちは季節ごとに農園を訪れ、梨の成長を観察する

子どもたちは季節ごとに農園を訪れ、梨の成長を観察する

子ども時代のこういった経験はとても大切だと坂田さんは言います。

「環境学習と言うと、難しいものに感じられますが、植物の種をまき、水をやり、育てるという身近なことからの環境について考えてほしいのです。植物が太陽や酸素、水がないと育たないように、人間にもそれが当てはまるんです。植物を育てるのに大切なものは、人間にとっても大切。土にふれ、農家の仕事を体験しながら、周りの環境を大切にすることを学んでほしいですね。植物の成長を勉強することは、私たち人間も含めた生き物全てのことを知ることにつながると思います」(坂田さん)

樹齢60年を超える梨の木。この木から200個ほどの梨が収穫できるそう

樹齢60年を超える梨の木。この木から200個ほどの梨が収穫できるそう

梨の販売はほんの1カ月ほどの間に限られますが、収穫は1年がかりの仕事の集大成です。は、「大事な仕事は、見えないものなんだよ」という坂田さん。寒くなり葉が落ちた12月、梨を作る上で最も大切な剪定作業が始まります。「永久作物」と呼ばれる梨のような果樹は、切らなければずっと実をつけ続けるそうです。来年の梨のこと、そしてその次の年の梨のことまで考えて行う剪定作業は、熟練した技術が必要です。

その後は受粉、摘花、摘果、袋かけ。夏においしい浜なしを収穫するために、坂田さんご家族が手間とたくさんの愛情をかけながら、梨に向き合っているのが伝わってきました。

「剪定作業は高い技術が必要。誰にも任せられないんだよ」と語る坂田さん。剪定が一人前にできるようになるまで少なくとも5年はかかるそう

「剪定作業は高い技術が必要。誰にも任せられないんだよ」と語る坂田さん。剪定が一人前にできるようになるまで少なくとも5年はかかるそう

「台風が来たら大変。落ちてしまったものはすぐに拾って、ジャムや焼き肉のタレなどの加工品に使います」。坂田さんの奥さま、静江さんは農園の梨を使ってジャムや焼き肉のタレを作っています。こちらも大変好評で、すぐに完売してしまうのだそうです。

坂田さんのお嬢さんが更新している坂田農園のFacebookページを見ると、一年を通して様々な伝承行事や季節の料理を家族で楽しんでいるのが分かります。どんど焼きではお団子を作り、ひな祭りの菱餅は手作りし、春にはヨモギを摘んでヨモギ餅を作ったり……。「珍しいことではないです。うちでは普通にやっていますよ」と坂田さんは言います。昔ながらの行事を体験する機会が減っている私たちの世代にとっては、坂田家の暮らしぶりは羨ましく、大切な日本の文化を思い出させてくれます。何代にも渡りこの地で暮らしている坂田さん一家は、転入者が多い青葉区のような地域では、若い世代にこの地の歴史や風習を伝える大きな存在ではないでしょうか。

梨狩りのシーズンは9月初旬ごろから。週末は多くの人で賑わう

梨狩りのシーズンは9月初旬ごろから。週末は多くの人で賑わう

花が咲き、果物が実る。梨畑には子どもたちの声が響き渡る。地元の人のための観光農業を意識する坂田さんは「梨づくりはカッコイイ農業です」と、誇らし気に語ります。次の夏には家族そろって梨狩り体験に行きたいと思います。

Information

坂田農園

住所:横浜市青葉区鉄町1509

電話:045-971-3675

営業:8月中旬~9月中旬 1000-1600

Facebookページ

https://www.facebook.com/坂田農園-588659954567618/

【農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座 第2回】

平成29年度 横浜市経済局消費生活協働促進事業

講師のお話・テーマのクッキングのデモ・試食

「旬の浜なしを加工しよう!」講師:坂田静江さん

日時:2017年9月28日(木)10:00~12:30

会場:クッキングサロンハマッ子(JA横浜都筑中川支店3階)

(横浜市都筑区中川中央1-26-6)

横浜市営地下鉄ブルーライン、グリーンライン・センター北駅より徒歩1分

料金:2,500円

定員:15名

申し込み方法:参加希望回 、氏名 、生年月日 、住所 、電話番号 、E-mailアドレス ⑦参加動機 を記入の上、event@morinooto.jp まで、または下記のフォームからお申し込みください。

主催:特定非営利活動法人森ノオト

〒227-0033 横浜市青葉区鴨志田町818-3

TEL:045-532-6941/FAX:045-985-9945

共催:アートフォーラムあざみ野(男女協働参画センター横浜北)

後援:横浜市環境創造局、JA横浜

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