女性の生き方、解の一つがNPO? 書評『N女の研究』
森ノオトのスタッフミーティングの様子。ここにいるもの、ローカルなN女たち
今話題の『N女の研究』(中村安希・著、フィールムアート社・刊)を発売当日に書店で入手し、むさぼるように読みました。お風呂の中で読んで途中でうつらうつらして落としてしまい(本を落としたのは人生初!)、すでに手垢がつきまくっていますが、こんなにも夢中になったノンフィクションは久しぶりです。
森ノオトのスタッフミーティングの様子。ここにいるもの、ローカルなN女たち

森ノオトのスタッフミーティングの様子。ここにいるもの、ローカルなN女たち

N女」とは「NPOで働く女子」を指します。そう考えるとわたし自身もN女ではありますが、本書では「志をもって立ち上げた代表や事務局長」ではなく、NPOに就職した女子に限定して紹介しています。さらに本書に登場するのは「一流大学を出てバリキャリとして働いた高スペック女子」ばかり。

そういえば……森ノオトのリポーターは、わたし自身が畏れおののくほど優秀な人が多いのですが、正職員である梶田あゆみちゃんはまさに本書でいう「N女」!

本書では10人の女性のキャリア、人生、年収の変遷までをていねいに追い、さらにNPO業界の課題について、たとえばこんな小見出しでぐんぐん惹きつけます。「バリキャリ時代の年収から半減」「元祖N女と現代N女の共通点と相違点」「出産を経てさらにキャリアに貪欲になる」……。本書と共通する地域課題は、いくらでも挙げられます。森ノオトのテーマでもある環境問題、近隣でも超少子高齢化の顕著なデータがそろっているし、青葉区にもある見えてこない貧困、それにともなう格差、膨大な政府と自治体の借金……現代日本社会の課題は地域課題にも直結していて、それを指折数えればキリがないけれど、その中で新しい働き方、社会への関わり方の一つとしてあらわれた「N女」なるものが、女性の生き方、働き方の新しい芽になるのではないか、そんな予感が、わたしにも確実にあります。でも、その数は多勢ではない。ごく少数の傑出した存在として、時代の先端になるのではないか、と。

なかでも思わず膝を打ったのは、次のコピー。

「最も根深い問題は、女性社会が『一枚岩でない』ということ」

わたし自身のたった40年の人生でも、女性の生き方や働き方は大きく変化してきました。誤解を恐れずにいえば、未婚/既婚、子あり/子なし、専業主婦/両立、パート/フルタイム、親の近居、夫の理解の有無、保育園闘争などなど、働く女性の間にも格差があり、壁があり、その状況の差によって、小さな分断が生まれているのを、肌身にヒリヒリと感じています。本書では「自分の大変さを分かってもらえない・もらえなかった」という孤独感や不満の矛先が、どこに向かうのかと警鐘を鳴らしています。

実はその格差をうむ原因の一つが、家族や社会とのコミュニケーションにあるのではないか、という気がしています。常日頃から、森ノオトの活動メンバーは、実に多彩で有能な人が多いと感じて、私自身は彼女たちの大ファンなのですが、驚くほどにみんな自己評価が低い。「私なんかでいいの?」「自分なんかにできるのかしら」と、謙遜というより、自分に自信がない人がこんなにいるんだ! と、びっくりするくらい(正直、チャレンジ精神の塊のような自分の不遜さに苦笑しますが、そこは著者のいう「志を持ってNPOを立ち上げる創業者」の特性なのかもしれませんが)。だから、自らの評価を社会に問うことに対して臆病なのではないか、と感じています。

私はともかく、「みんなの持っているスキルや個性を、記事の形で社会に出したい」と考えていて、その記事を読んだ人に評価を(いい意味で)受ける経験は、実は主婦にこそ必要なのではないだろうか。森ノオトの編集会議で「今月のおもしろかった記事」についてディスカッションするのですが、「こんな風に読んでもらえたんだ」「書いてよかったな」という小さな成功体験が、女性の自己評価を高めるきっかけになっているのではないか、と思っています。

一方で、実は2016年の後半は、こうした女性の間でのたくさんの「差異」に頭を悩ませました。自分の好きとスキルを地域で生かす働き方をつくるのだと言ってはみても、新しいチャレンジには「時給には見合わない」勇気と努力と緊張感が伴うため、ともすればパートと比較されることも。家事と育児と仕事の優先度の違い、主婦が活動していくことへのパートナーの理解度の差、青葉区ならではだと思いますが豊かなゆえの選択肢の多さへの悩みと戸惑い。NPOを職場としているわたしたち事務局と、活動メンバーの「思い入れ」「所属意識」の差も当然ながらあるわけで、一人ひとりの抱える課題と温度感の差をどう受け入れながら、大きなビジョンを共有していくのかという複雑なマネジメントをせまられました。

「利害が複雑に絡み合い、多様化する女性社会の行く末はどうなるのか? 異なる生き方を受け入れ合う『寛容』へと向かうのか、ひたすら叩きのめし合う『敵対』へと突き進むのか?」と著者は問い、その答えがN女たちの生き様にあるといいます。

自己犠牲ではなく、違いを受け入れながら、よりよい方向へと提案していく。きれいごとを言わないリアリストとして、行政や助成金に頼りすぎずにうまく協働し、複雑に絡み合い生きにくくなった現代社会の課題を解決していく。わたしたち森ノオトの事務局も「N女」として、新しい生き方、働き方の一翼を担っているのだと、感じます。そして、本書を読み込む中で、スタッフとメンバー(受益者)の線引きも新たになり、2017年度もよりNPOを盛り上げていこうと心を新たにしました。

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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