旬を食べ尽くす!オーガニックな「さとやま御膳」
「さとやま御膳」は、里山の旬や四季のうつろいを五感で味わう連続講座です。そのお試し講座が町田市の「大谷里山農園」で開催されました。相模原市のすどうファームの須藤章さんが提供するオーガニック野菜や里山の恵みを使用し、管理栄養士でありマクロビオテックに造詣が深い、木村陽子さんを囲みながらみなで御膳をつくりあげました。

町田市の「大谷里山農園」は、丘陵と畑や田んぼが広がる里山の原風景が今でも残る地域にありますが、町田駅からバスで30分、小田急・京王各多摩センター駅から徒歩10分、南多摩尾根環状道路からすぐなので、車でもアクセスしやすい場所です。

写真右手にあるのが会場の「プラナスクリエイティブセンター」。かつて牛舎だったものを改築した建物。普段は「NPO法人プラナス」の活動場所で、ハンディのある子ども達の作業場所として使われている他、「一般社団法人まちやま」の活動拠点でもあり、定期的な里山体験が開催されている

この講座で使用する素材は、イベントを主宰する須藤章さんが、その日畑で採ってきた野菜、里山を駆け巡って見つけた旬の山野草、花など。すどうファームでは農薬も化学肥料も除草剤も動物性のたい肥も一切使わない自然栽培で、森の落ち葉や緑肥で野菜やハーブを育てています。

本日の素材。さつまいもの新芽のつる・ミント・ウドの花・菊芋・秋トマト・秋よもぎ・セルバチコ・ワイルドルッコラ・ハコベ・ストリドーロ・人参・蓼藍・しいたけ・コンニャクイモ

御膳づくりを先導するのは、木村陽子さん。管理栄養士として病院での栄養相談、市民講座の講師などを経験した後、現在は吉祥寺のマクロビオテック食の発信拠点「オーガニックベース」で講師、玉川学園前の「小鳥喫茶室」(絵画造形教室アトリエ・アルケミスト併設)のメインスタッフであり、「食」にまつわる様々な活動をされています。
 
「さとやま御膳」では、当日何ができるか前もってわかるような、いわゆる一般的な料理教室とは違います。レジュメもなく、参加者みんなで相談しながら御膳をつくりあげるというライブ感のあるスタイルです。
もちろん木村さんが前もって御膳の輪郭を思い描いてくださっていますが、驚いたことに、木村さんも当日初めて調理するという素材も持ち込まれます。

これは染色につかう藍を乾燥させたもの。食材の一つ

「はじめての素材を使って即興で料理をつくるというのは、昨日おとといの経験ではできない、今までの栄養士人生の集大成。緊張するし、集中力はいるし、すごく五感を使います。でもその素材が料理になった時にうれしいのです」と木村さん。
 
参加者のみなさんも、木村さんに相談しつつパパパっと手を動かし一品一品完成させていきます。初対面同士ですが、料理という共同作業を通すことで
「これの料理はこの味付けでいい?もっと濃い方がいい?」
「これって食べられるんですね。ちょっと味見どうぞ!」
というように、自然と会話も盛りあがります。

会話もしながらも料理はどんどん進む

「秋は薬膳的に、肺と大腸を大切にする季節。夏に冷えた身体をリセットするために、風邪になったり突然熱を出したりする人もいて、陰性のものを排出していく時期でもあります。これからの時期は食材に火を入れ、陽性にしてから使っていくとよいです。そもそも秋は英語で“fall”、もともとは落ちるという意味。木も葉を落として根に栄養を貯める時期で、人間も地に足をつけていく大切な季節なんです」(木村さん)
 
「ハコベは春の七草のひとつでもあるけど、秋ハコベというものもある。力の強い野草。とても抗菌力があって、炎症を抑える効果があるから、水虫にもいいし、歯が痛い時はハコベを噛むといいよ。ハコベ塩で歯を磨いてもいい」
(須藤さん)
 
「農」と「食」にまつわる多くの知識があるお二人、会話の中でさらっとふれられる話題の多くに、人間は四季とともに生きているんだなぁ……どれだけ自然から恩恵を受けているのか…‥と、気づかされるばかりでした。

きっと色々な段取りを考えているであろう木村さん、でもいつ話しかけても、いつもニコニコとやわらかい口調。ほんわかした雰囲気の持ち主


 
また、石窯を使った料理も体験できるのが、この講座のもうひとつの魅力。石窯の中で燃えた薪の灰やおき火をすべてかきだし、石窯本体の蓄熱だけで調理します。輻射熱でじっくり火を入れることで食材のうまみを引き出し、とても美味しい料理に変身。今回は豚モモ肉に加えて、手作りコンニャクとエビイモも石窯で火を通すことになりました。

石窯パン屋の経験を活かして「石窯製作室」を開設している須藤さん。こちらの石釜も数年前にこの場所に制作したもの。さすが元パン屋さん、「これは何度くらいかな」、「この温度だとカンパーニュとかがいいね」、と窯に手をかざしただけでわかる


 

そしてじっくり焼いた豚モモ肉が、完成!乳酸菌に前もって漬け込んでいるので、とってもやわらかそう

次々に完成した料理がテーブルに並びます。ちょうどコンニャクイモが収穫される季節ということで、生のコンニャクが多く登場する今回の御膳、他の素材もすべてを使って、飲み物も含めたら全部で14品できあがりました。これが、メニューの全貌です!

メニューの一部。コンニャクとハコベの白和え、サトイモの新芽つるの白しょうゆ炒め、秋トマト、ストリドーロとタマネギのカルボナーラ風豆乳クリームパスタ、柿とルッコラとミントのサラダ

【飲み物】
○フレッシュミントティー
○ヨモギと藍のお茶
 
【おつまみ】
○若大豆の塩ゆで
○サトイモと人参とウドの花の素あげ
 
【サラダ】
○柿とルッコラとミントのサラダ
 
【炒め物】
○サトイモの新芽つるの白しょうゆ炒め
 
【和え物】
○コンニャクとハコベの白和え、青ゆずの香りととともに
 
【石窯料理】
○手作りコンニャクの石窯焼き、ハコベ塩で
○エビイモの石窯焼き
○乳酸菌につけた豚モモ肉の石窯焼き、柿と秋トマトのソースを添えて
 
【パスタ】
○ストリドーロとタマネギのカルボナーラ風豆乳クリームパスタ
 
【ご飯】
○藍をちらしたコンニャクと人参のまぜご飯
 
【スープ】
○キクイモとこんにゃくのスープ 味噌仕立て
 
【デザート】
○サトイモと秋ヨモギのアーモンド入りあんこ包み
 
食レポはここにはまとめきれませんが、若大豆は、枝豆と大豆の間の食感とでほくほくとしてやみつきになるやさしい味。藍はお茶に似たかおりが鼻をぬけ、サツマイモの若芽は空芯菜と似たサクサクの食感(実は同じヒルガオ科)。ウドの花はウドの香りが口の中にふわっと広がります。
シンプルな味付けだからこそ引き立つ素材独特の香り、食感、甘み、苦み、甘酸っぱさ、うま味を感じながら、すべて食べ尽くしました。

ずらっと並んだ料理たち

ついさっきまで畑にいたんですよ! という声が聞こえてきそうな野菜たちを眺めながら、また里山を歩きながら見つけたハーブや山菜を使った御膳ができあがっていく時間を過ごしている時、ひるがえってスーパーなどで売られている食材のことを思い出し、私自身の普段の生活とのコントラストを感じていました。
 
普段使うスーパーはとても便利ですし、今の生活とは切っても切り離せません。
でも、食卓に並ぶまでどんな道を辿ってきたのか、食材が持つあらゆるストーリーが切り離されていて、物理的距離も心理的距離も感じるなぁと、ふと思いました。

ウドの花の素揚げ。ウドの花って食べられるんだ!

場所は? そこに自生していたもの? 別の地域から持ち込まれたもの?
育った場所は畑? 山? 工場? 
スト−リーの登場人物はどんな種、土、肥料、微生物、光、風、人?
 
 
そのストーリーが何気なく伝わると、何より安心感があり、風景を想像することで自ずと自然を身近に感じられました。もちろんそういったことを知らないといけないわけではありませんが、食材がすぐに手に入り、どこにでも当たり前にある環境の中、少しでもその出自に想像し思いを馳せることで、自然環境と誰かの恩恵を私たちがどれだけ受けているかを感じ取ることができるのではと思いました。
 
私は「いただきます」より「いただいてもいいですか?」と言いたくなる豊かな御膳を前に、自然と人に、感謝する気持ちが湧いてきました。

完成した「さとやま御膳」


「里山の恵みを、四季を感じる、自然の中に私たちがいるという感覚を共有できたらうれしい」と、木村さん。
 
「里山の手入れは大変だけど、1年5年10年というスケールでみることが大切で、そこに豊かさと面白さがある。一歩踏み込めば、生き物のエネルギーが優しく包み込んでくれるし、木枯れて何もないはずの真冬でも、何かがあるのです」と、須藤さん
 
つくって知って食べて話して…‥あたたかい団らんの場所でもあった今回の講座。
「とても欲張りな体験。豊かな時間でした」
「料理教室とは違った体験の中、色々な方と関わって話すことができ、食事も楽しめた。自分の仕事のヒントになることも沢山あったし、将来や生き方を含めて考えるキッカケとなりました」
そう参加者の方も感想を話してくれました。
 
次回からの予定は下記の通りです!ここでは書ききれない魅力がたくさんありますので、興味のある方はぜひご参加してみては!

Information

【さとやま御膳の今後の予定】

本講座 参加費 5回通し:16,300円(税込)

        単発参加 17,000円(税込)

1128日 錦秋の御膳  初霜を迎えて草木が白く輝く季節です。

123日  一陽の御膳  寒の最中ながら、ほのかに陽が伸びる季節です。

313日  春譜の御膳  野原の随所に、生命が萌え兆す季節です。

515日  薫風の御膳  奔放、放埓に新しい緑と生命の盛る季節です。

710日  朱夏の御膳  梅雨の切れ目に太陽が灼けはじめる季節です。

すべて 10:3014:30

申し込みはこちらのHPから

https://www.sudofarm.net/gozen/

定員 15名 大人限定

連絡先:

【すどうファーム】代表:須藤 章さん

https://www.sudofarm.net

【アトリエ・アルケミスト内 小鳥喫茶室】

https://cotori-kissa.jimdo.com/

【大谷里山農園】代表:大谷良文さん

194-0202 東京都町田市下小山田1532

https://www.tokyo-satoyama.com/

農園には、貸しスペース「プラナスクリエイティブセンター」をはじめ、棚田、ツリークライミングができる林、区画割りしていないレンタルファーム、筍狩りのできる竹林、美しいハスが咲くハス沼などがあり、四季を通して自然を感じることのできる場所です。石釜を使用したピザ作り体験、音楽会や寄席などさまざまなイベントが開かれておりますので、是非イベントをチェックしてみては!

板垣 恭子
この記事を書いた人
板垣恭子ライター
静岡県出身で四姉妹の長女。大学卒業後、デザイナーとして働きつつ花屋で修行。現在は子育ての合間に、その経験をいかせるような世界観を目指して制作活動中。森ノオトではジャーナリスト的な一面を見せ、硬派な記事も立派に書き上げる努力家でもある。
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