リノベーション住宅がものづくりギャラリーに? ReBITA×AppliQué「暮らしと布のリノベーション」プロジェクト
森ノオトが手がける布の再生ブランド「AppliQué」と、株式会社リビタ(以下、リビタ)の戸建てリノベーション事業「HOWS Renovation」がコラボレーションして、「暮らしと布のリノベーション」をテーマに、「桜台の家」であずま袋づくりワークショップを開催しました。思わぬ波及効果を生み出しそうな本イベントを振り返ります。

カタカタカタ……。のびやかな吹き抜けのある空間に、ミシンの音が響きます。2018年3月5日、横浜市青葉区桜台にある「桜台の家」に集った5人の女性たちは、自分のお気に入りの布を持ち寄り、それを組み合わせて「あずま袋」をつくりました。「この柄、ビビットですね」「春らしい色合わせが素敵ね」などと、お互いの袋ができあがるさまを横目に見ながらも、自分の作品に集中する参加者たち。この日、株式会社リビタの戸建てリノベーション事業「HOWS Renovation」と、NPO法人森ノオトのアップサイクルものづくりブランド「AppliQué(アプリケ)」が、「暮らしと布のリノベーション」をテーマに「あずま袋づくり」のワークショップをおこないました。

 

参加者がそれぞれ、自分の持ってきた生地と合わせる布地を選んでいく。布合わせがデザインを大きく左右するので、皆、真剣な表情

 

「HOWS Renovation」の戸建て住宅は、既存の建物を壊して更地にして新しい住宅を建てるのではなく、既存の建物を生かしながら、耐震性を担保し、断熱性能を2020年に義務化される次世代基準まで高めたうえで、間取りや内装を現代のライフスタイルに適した形にして販売しています。今の日本では、古い建物は資産価値がないとして、建物は平均27年で取り壊され、世界的にみても短命です。住宅のライフサイクルが短いのが当たり前になってしまった現代において、手を入れていつくしんだり、家族の成長に伴い間取りを変化させたり、長期にわたってメンテナンスを続けて、住み継いでいく。そんな、「古くなったものの価値を見つめ直す」という新しい文化を創造したいと挑戦を続けているのが、リビタです。

 

 

東急田園都市線青葉台駅から徒歩10分ほど、駅から北に延びる商店街を抜け、落ち着いた住宅街の入り口にあるこの「桜台の家」は、擁壁のうえに立つ広々とした敷地で、2階からの目線の先には「丘の横浜」の風景が広がる、空が近い住まいです。以前の持ち主のこだわりが感じられる重厚な玄関扉を開けると、白い壁となだらかな曲線美に迎え入れられ、ホッと軽やかな気持ちになります。玄関土間から印象的なカーブの階段をのぼってそのまま2階につながる吹き抜けの一体感ある空間は、桜台の家のシンボルとも言えます。1階水回りと階段に連続する繭のようなカーブは、家のコア(核)を守りながらも、空と丘陵地に開いていく、開放感の象徴でもあります。

 

玄関土間を開けて真っ先に目に入るのが、ゆるやかなカーブを描いた階段。一段のぼるごとに空間の印象が鮮やかに変化する

 

「この家はもともと、総二階建てで床面積は145m2の大きな邸宅でしたが、128m2に減築しました。もともと大きな家をさらに広げるには、あえて床を抜いて吹き抜けをつくって縦の広がりを持たせることで、面積以上の広さを感じさせる効果をもたらしました」

 

こう話すのは、リビタの戸建事業部チーフの立花千代子さんです。

 

1階のゆるやかなカーブに包まれたコアの中には、トイレや浴室、洗面所などの水回りがあり、玄関土間からリビングとキッチン、そしてスケルトンの階段と吹き抜けでつながる2階のフリースペースまで、大きなワンルームとなっています。この大胆な空間構成に、あずま袋づくりワークショップに訪れた参加者たちは「わあっ!」と感嘆の声をあげて家の中を回遊していました。そう、まさに板張りのコアがあることで、横方向に目線が伸びて家の中を散歩し、様々な表情に出会える、ドラマティックな空間なのです。

 

階段をのぼった2階は、フリースペースとして使い方は自由自在。いい色合いに侘びてきている古い住宅の梁がアクセントになっている

 

「なんだか、自分の家を建て替えたくなってきた」と話すのは、青葉区からやってきた30代女性。「家って買うものだと思っていたけれども、実は中古住宅のリノベーションで、こんなに思いがけない間取りも可能なんですね」と、驚いた様子です。

 

町田市から来た40代女性は、「我が家の暮らしをあんな風に、こんな風に変えたいと、頭の中が妄想でいっぱいになってしまった」と、熱量高く語りました。「私は家を見るのが好きなのに、住宅の完成現場見学会だと家を買わないのに行くのは申し訳ない気持ちになって、なかなか行きにくい。だけど、こうしたものづくりワークショップならば、それを目当てに住宅探検もできるから、おもしろい」とは、都筑区から来た40代女性。収納や片付けを特集した書籍に人気が集まり、自分らしく心地よく暮らしたいと考える主婦が多い昨今、今回のワークショップでは、実際に建てられたリノベーション住宅に入って、内装や収納についてあれこれ考えたり、自分の家や暮らしに置き換えて考えられるいい機会になったようです。

 

完成したあずま袋をもって、にっこり。左端がリビタの立花千代子さん、右端が太田聖さん。前列左がAppliQuéスタッフの三ツ橋樹里子さん

 

さて、完成したあずま袋を見てみましょう。

ベースとなる素材はきなりのコットン地で、持ち手と切り返しの部分は、AppliQuéに集まった寄付布か、自分のお気に入りの生地を持参して、組み合わせて使います。チェック柄と大胆な黄色、レトロな花柄とシックな茶色など、つくり手によって布合わせのセンスが異なり、同じ型でもまったく異なる表情を見せるのがおもしろいですね。

 

AppliQuéのアイテムは、家のたんすに眠っていた生地をよみがえらせるプロジェクト。裁縫が好きで色々な生地を買い集めていたけれど、年齢を重ねてもう針仕事はできない、というシニア女性たちから、たくさんの寄付布が集まっています。大切にしまわれていたけれど今は使われていない布を、ごみにはせずに新しいいのちを吹き込んで、エコロジーかつロングライフなものづくりをしていきたいと、セブン-イレブン記念財団より3年間の助成を受けて、「布の3R」(3Rとは、Reduse=排出抑制、Reuse=再使用、Recycle=再生利用の3つのRをとったもので、資源循環のキャッチコピーとして知られている)と「地域での女性雇用」を実現しています。

 

AppliQuéスタッフの三ツ橋樹里子さんは、「ご寄付いただいた布は、どれも良質なものばかりで、持ち主の方が大切にしてきたということが、とてもよくわかります。今ではあまり見かけないようなレトロでおしゃれな柄の生地があるので、ものづくりをするのが楽しい」と、語っています。

 

「この空間だからこそ、映えるものがある」と、テキスタイル(布)が空間と交わることで、住まいに温かみが生まれる

 

「古くなったものの価値を見つめ直す」——。まさに、リビタが住宅のリノベーションを通じて発信していることと、AppliQuéの「布の3R」は、精神が同じ。だからこそ、古いものにデザインで新たないのちと価値を吹き込んだ「桜台の家」での「暮らしと布のリノベーションワークショップ」は、参加者も主催者も、気持ちを共有できて、とても満ち足りた時間になりました。

 

立花さんはこの日、「AppliQuéのあずま袋がこの空間に馴染んで、ミシンで手仕事をしている方々の姿とこの空間のコラボレーションが、なんてフォトジェニックなんだろう、と感心してしまいました。完成した住宅がお客様の手にわたるまでの間に、“ここ”でできることについて色々考えていましたが、その可能性が広がったように思います」と話し、住宅の完成現場が地域活動に活用されることについて、手応えを感じたようです。

 

以前、森ノオト代表の北原まどかと対談をした、リビタの太田聖さんは「桜台の家は用途を定めずにおおらかにつくっている空間です。この日はミシンが入って、カタカタという音とおしゃべりの声が響きました。完成現場に“音”が入ることで、そこで起こる生活の幅にイマジネーションが広がる気がします」と話しました。

 

5月10日(木)・11日(金)には、以前森ノオトで取材をした革のバッグ・小物をつくるundöse(ウントエーゼ)の木曽総子さん、木曽嘉子さん、ヘッドホンやドレッドキャップなどのブランド[mudcake]と、大人ニットの[piece]という二つのブランドを持つ小宮山ゆみこさん、タイパンツなどの大人服から布小物まで、キラリと光るセンスが素敵な__ku_koさん、そしてAppliQuéによる「このまちの手仕事を訪ねて〜桜台編〜」の展示会をおこないます。両日とも、作家によるワークショップをおこなうので、詳しくはfacebookのイベントページをご覧ください。

https://www.facebook.com/events/2054655148133857/

 

また、5月12日(土)には、桜台の家を設計した株式会社アラキ+ササキアーキテクツの荒木源希氏と、木材の専門家・アンドウッドの遠藤大樹氏によるトークイベント「木の家の育て方」を開催予定です。この日は、フローリングのワックスがけなどのメンテナンス方法や、美しく木を保つための愛着のかけかたなど、建築家の視点から解き明かす、実践的かつおもしろいトークをお届けします。こちらも詳しくはfacebookページのイベントをご覧ください(近日公開)。

 

「桜台の家」が、地域の手仕事作家により、どんな風に彩られるのか、楽しみだ

 

【この記事は、NPO法人森ノオトと株式会社リビタのコラボレーション事業により制作しております】

Information

ReBITA×AppliQué コラボ展示会

「このまちの手仕事を訪ねて〜桜台編〜」

日時:2018年5月10日(木)・11日(金)10:00〜15:00

参加費:無料

お問い合わせ:

特定非営利活動法人森ノオト 担当:齋藤

TEL 045-532-6941

MAIL applique@morinooto.jp

 

トークイベント「木の家の育て方」

日時:2018年5月12日(土)14:00〜16:00

ゲスト:遠藤大樹氏(and wood代表)

荒木源希氏(株式会社アラキ+ササキアーキテクツ)

参加費:無料

お申し込み・お問い合わせ

株式会社リビタ 担当:立花

TEL 03-5656-0089

MAIL kodate-pr@rebita.co.jp

 

会場:(いずれも)桜台の家

http://hows-renovation.com/forsale/sakuradai/

 

HOWS Renovation

http://hows-renovation.com/

 

リノベーションによる建物再生と、人の集う場づくりによる豊かな暮らしを提案するリビタが発信する、戸建てリノベーションブランド。テーマとする「自ら丁寧に手を入れる暮らし」を軸に、住まい手が自ら手を入れ育てていけるハコである空間をつくり提供をしています。建物のことを知り手の入れ方を学ぶ見学会や、手を入れる事を体感し楽しめるDIY Lab.、住まいづくりについて考える子ども向けイベントなども開催。

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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