つながりから生まれた「からだで感じる」絵本。絵本作家・西陰志保さん
みんなの声がそのまま絵本になったら素敵だなという思いから「みんなでつくる絵本プロジェクト」を始めた絵本作家の西陰志保さん。2人の子どもを育てながら「からだで感じる」ことをテーマに、さまざまな人とつながりながら横浜市青葉区を中心に創作活動を続けています。

「“からだで感じる”って本当のことだと思う。だからそういう絵本をつくりたい」。そう語る西陰志保さんが絵本作家を目指したのは、2人目のお子さんが生まれて仕事を辞めてからのこと。

 

2歳差の子どもたちの育児が大変に感じ、影絵作家さんのサポートをする仕事を辞めなければいけなくなった時に初めて「自分の価値観を問われたというか、やっぱり自分自身が絵を描きたいと強く思った」と言う志保さん。

 

「自分の思うままにやりたいことをやって、楽しんで生きてほしいって子どもには思っているのに、肝心な自分はできてない」

そう気づいて周りを見渡した時、身近な存在であった同じ幼稚園のママである作家の井鯉こまさんの存在が大きなきっかけとなったと言います。

作家の井鯉こまさん。井鯉さんは2014年、『コンとアンジ』で第30回太宰治賞を受賞。現在、志保さんが描いている絵本の文や「みんなでつくる絵本プロジェクト」のアドバイザー等を担当していて、志保さんにとってはパートナーのような存在(写真提供:井鯉こまさん)

「子どもが同じ幼稚園に通うママ」という側面でしか知らなかった井鯉さんが、実は子どもが生まれてから創作活動を始め、太宰治賞を受賞した、という話を聞いて「子どもがいてもできるんだ。やってもいいんだ」と無意識に自分にかけていたリミッターみたいなものが外れたと志保さんは言います。

 

そしてそんな志保さんが井鯉さんに「一緒に絵本を作らない?」と声をかけたのが「みんなでつくる絵本プロジェクト」の始まりとなり、志保さんの絵本作家としての第一歩となりました。

 

まず、どんな絵本を作ろうかと悩んだ時「自分が伝えたいメッセージを絵本に込めるより、みんなが伝えたいメッセージを絵本にしてみるのも面白いんじゃないか」。そんなアドバイスを友人からもらい、志保さんは「みんなの思いを集めて、家族みんなが幸せになる、笑顔になる絵本を作りたい」と思うようになったそう。そしてFacebookなどのSNSで「大切なわが子へ伝えたいメッセージを絵本にしませんか?」とみんなの声を集めることにしました。

 

そして集まったメッセージを元に二人で話し合いを重ね、一番多かった「生まれてきてくれてありがとう」という思いと、志保さんのテーマである「からだで感じる」ことを軸にイメージを固めていきました。絵を志保さんが、物語を井鯉さんが担当して、一作目の『ねえねえ おぼえてる?』が完成しました。

子どもの成長に、存在そのものに、ありがとうと伝えたいという気持ちを大事にして作り上げたという一作目『ねえねえ おぼえてる?』の原画

そんなとき、同じ幼稚園のバス乗り場で一緒だったカルドゾさんが井鯉さんと志保さんが絵本を描いていることを偶然知り、「今度コンサートで絵本の読み聞かせもするのだけど一緒にやらない?」と声をかけてくれました。

 

これをきっかけに活動の幅を広げた志保さん。以来カルドゾ夫妻と定期的にコンサートと合わせて朗読会を行っています。その他、クラリネット奏者である友人とコンビを組んで、ジャズの生演奏と絵本の朗読会も行うようになりました。

 

こうして朗読会を中心に、さまざまな活動をしていくうちに「みんなでつくる絵本プロジェクト」の二作目『かぜのひ」が東京都美術館で行われている美術の祭典「東京展」の「絵本の部屋」という部門でマーベラス賞を受賞。こちらの作品は一作目の『ねえねえ おぼえてる?』の優しいタッチとはまた違った、勢いがある絵の志保さんらしい作品で、私も大好きです。

絵本の他にもポスターやロゴ、イラストなども手掛けている志保さん。一番下の絵がマーベラス賞を受賞した『かぜのひ』の原画

今回は子どもからの声も集めて作ったというこの絵本は、子どもが夢中になってやることや、その独特の感性にはっとさせられたことをヒントにできあがった作品なのだそう。

 

以前の志保さんのように、無意識に「できない」と心にリミッターをかけて「自分が本当にやりたいこと」を見失ってしまわないように、「子どもたちに、もっと自由に、もっと思うままに、頭で考えてしまうことなく、からだが感じるままでいてほしい」という願いが込められています。

 

色々な人との出会いや、色々な思いを受け取ってできあがる志保さんの絵本には、決まったテイストや一貫した思想などがなく、とても自由。

 

その活動は絵本に限らず、以前森ノオトでも紹介された、まちなかパフォーマンス「ダダンチダンチ」のキックオフタイトルイラストや、子どものまち「チッチェーノ・チッタ」の各店舗の看板、渋谷クロスFMのラジオ番組「ママ夢ラジオ」のイラストなど、志保さんの作品や活動は多岐に広がっていきました。

この春、青葉区から発行された子育て情報冊子「あおばこそだてBOOK」のイラストを担当した志保さん。私が小学校の読み聞かせサークルで出会った志保さんにチッチェーノ・チッタの看板をお願いしたことが、こちらのイラストを描く縁につながりました

いつも笑顔で暖かい雰囲気の志保さんの人柄もあってか、地域をはじめ、さまざまな人々と連鎖的につながっていき、その活動はどんどん広がっています。

 

昔は人に自分の絵を見せるのが怖かったという志保さんが、自分はやっぱり絵を描きたいという思いに気づき、心のリミッターを外したことで、変わらない日常がどんどん広がっていきました。主婦のままでも、子どもがいても、自分のやりたいことが、自分の気持ち一つでできるようになったという志保さんの言葉に、私も勇気をもらいました。

 

そして今年も、カルドゾ夫妻と井鯉さんと共に0歳から大人まで音楽を楽しめるイベント「からだが自然に動き出すSOUND and STORIES~クラシック演奏と絵本の朗読~」をアートフォーラムあざみ野で6月に開催しました。

 

バッハやベートーベンなどの本格的なクラシック演奏のほか、ラテン音楽などと共に絵本の世界を「老若男女問わず、からだで感じで楽しめる」このイベントは、180席満席となり大盛況のまま終了しました。

こちらのコンサートは終わってしまいましたが、他にも志保さんの絵本の世界にふれることができるイベントが今後もさまざまな場所で開催される予定です。あなたも志保さんの絵本の世界をからだで感じに行きませんか?

6月15日に開催された「からだが自然に動き出すSOUND and STORIES~クラシック演奏と絵本の朗読~」を描く志保さん。(写真提供:岩船理さん)

Information

西陰志保

https://shiho-nishikage.jimdofree.com

みんなで作る絵本プロジェクト

https://minna-ehon-project.jimdofree.com

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●「赤ちゃんが生まれる」絵本を読もう会

主催:スキンシップコミュニケーションアカデミー

日時:7月25日(木)10時~

場所:立川市女性総合センターアイム

参加費:1組500円(会場代)

 

 

●なないろフェスタ

主催:子育てリンクコミュニティ DearMother,NPO法人MOTHERSHIP

日時:2019年9月8日(日)10時~15時

絵本の読み聞かせは11時~

会場:井上レディースクリニック(東京都立川市富士見町1-26-9)

Communityビル安庵(東京都立川市富士見町1-26-10)

中西るりこ
この記事を書いた人
中西るりこライター
静岡県出身、横浜在住歴20年以上の2児の母。広告制作会社でWEBデザイナーとして働き、出産後はフリーでロゴ、パッケージデザインなども。旅行、自然、映画、音楽、古いものが好きで、キャンプや野外イベントに目がない。にぎやか兄妹に振り回されつつ、休日は家族と各地を飛び回る。
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