NPO運営とお金のリアル〜森ノオトの場合〜
森ノオトはこの1月、NPOとして法人化してから丸8年が経ちました。この間、組織運営の難しさや、NPOならではのボランタリー性とプロフェッショナルとしての仕事の切り分け方など、さまざまな課題に直面しながら、「持続可能な地域社会をつくる」という頂に向かって、道半ばの日々を送っています。2020年12月7日にオンライン開催した「NPO経営とお金の関わり、全てお見せします!」で私がお話した内容を元に、NPO運営の裏側をお話しします。

横浜市内の8団体が組織する「寄付月間@日本大通実行委員会」は、横浜市で活動する地域団体やNPOが参画して、毎年12月の「寄付月間」に、「寄付」についてのさまざまな企画や提案を行ってきました。2020年のテーマは「寄付でつなぐ未来へのバトン~新しい未来へ“Re-connect”~」。森ノオトも参画し、125日には「ローカルメディアコンパスのカードってどんなもの?メディア経験者が語ります」と題したトークライブ、127日には「NPO経営とお金の関わり、全てお見せします!」をテーマにした裏話トークの2本をオンラインで実施しました。

 

7日当日、参加申込者は21名。NPOの代表から、地域活動をステップアップしようとしている団体のメンバーまで、さまざまな属性でしたが、共通しているのは「活動継続のためにお金に本気で向き合おうとしている人たち」です。私自身も、森ノオトとしても「正解」を持っているわけではなく、その時々で起こるさまざまな課題に対してどう向き合ってきたのか、「リアルな経験談」をお伝えすることで、同じような悩みを持つ地域活動の当事者に貢献できたらという「ギフト」の気持ちで、惜しみなく赤裸々に、お話しました。

 

2020年度の森ノオトのNPO総会はオンライン配信で実施。スタッフもソーシャルディスタンスをとった


 

地域活動を始めて最初の数年は、コアメンバーの情熱と勢いでなんとかやってきていても、数年経って団体が大きくなってきたり、活動を継続していこうとなると、「お金」の問題は避けて通れなくなってきます。

横浜市青葉区で、ローカルメディアの運営を軸に、持続可能な社会をつくるためにさまざまなソーシャルアクションをしてきたNPO法人森ノオトもまた然り。何度も「死の壁」にぶち当たり、乗り越えてきたのか、まだクライミングの途中なのか……。活動開始から11年、法人設立丸8年の中で、団体のステップが変わるたびに、「お金」の向き合い方が変わり、日銭を数える日々から、数年先を見通した「NPO経営」にちょっとずつコマを進めつつあるのかな、という気がします。

 

森ノオトの事業規模の推移


 

森ノオトの事業規模は、2019年度で約2,500万円です。設立初年度の2013年度は300万円だったことから考えると、着実に成長してきたと言えます。ちなみに、NPOは、ホームページ等に必ず自団体の「事業報告書」「決算報告書」を掲載しなければなりません。森ノオトに限らず、気になったNPOの活動や事業、経営について知りたいと思ったら、そのページを探して読むと、団体のリアルがわかると思います。

 

森ノオトの場合は「森ノオトとは」のページ中央部「事業報告」の欄に全年度の事業報告書、決算報告書、貸借対照表(2017年度より)が載っています。

 

「収入の推移」の表を見ると、2016年度に大きな山が来ているのがわかります。NPO設立から3年が経ち、4年目に事業規模が1,300万円と飛躍しました。2013-2014年度は、イベントをした収益でメディア運営の費用をまかなおう!と考えていたものの、イベントは基本的には利益が出ず、忙しいのに実入りがないという現実の厳しさに直面していました。この頃は、草創期メンバーの離脱もあり、ライター仲間はたくさんいるのに、運営に関わるヒトモノカネの全てが「ないない」づくしの孤軍奮闘状態でした。

その中でも苦労したことの一つが、会計です。日々の記帳はエクセルで入力しつつ、Windowsの会計ソフトに難しい会計用語を紐解きながら転記していく作業は想像以上に大変で、2年目からは会計事務所に毎月来てもらい、帳簿のチェックをしてもらう体制を整えました。

 

3年目の2015年度から、現理事の梅原昭子さん、島原愛子さんと、ライターの長谷睦子さんが事務局として参画し、チームで森ノオトを運営するようになりました。NPO経営を学ばねばと、その年の秋に関内イノベーションイニシアティブ株式会社が運営する「かながわボランタリーACEプログラム」に参加し、半年かけてマーケティングを学び、中期経営計画を立てるというプログラムを経て、その年の秋冬に書いた大型助成金の企画が次々に通ったのが、2016年度でした。

 

セブンイレブン記念財団の組織基盤強化助成は、年間400万円、3年間で最大1,200万円という大型助成金で、条件は「常勤職員1名の雇用」と「事務所家賃の補助」、そして新規事業を立ち上げ3年間で自走していく、というものです。この年の4月に森ノオトに入職したのが、現在編集部デスクの梶田亜由美さん。今では森ノオトのメディアと並ぶ柱の事業「AppliQué」の立ち上げを彼女が務めました。

常勤職員の雇用というフェーズに入り、社会保険や雇用保険、その他スタッフの時給や報酬などを整備していくことになりました。雇用契約書を結び、マイナンバーを預かり……ということを、本を読みながら進めていくのですが、2017年秋に梶田さんが産休に入るときの「産休・育休手続き」で、これを自力でやるのは難しい!となり、その年の冬から社労士事務所に顧問で入ってもらうことになりました。

 

会計・税務や、社会労務に関しては、素人が右往左往しながらやるよりも、プロに毎月状況を見てもらう方が、正確で的確ですし、何より安心感があります。しかし、設立後数年というのは、事業の型も整っていないし、事業費の捻出や赤字補填で必死な状態、バックオフィス業務まで予算をつけられないこともあります。今は会計freeeなどのオンラインソフトがあり(森ノオトは2016年度から会計freee2018年度から人事労務freeeを使っています)、こうしたソフトを使いながら、NPO同士でオンライン勉強会や運用方法のシェアなどができたら、お互いに理解も進み、作業が楽になるはずだなあと、今では思います。

 

森ノオトの収益構造の推移

 

では、NPOはいったいどうやって収益を上げているのでしょうか?

NPOの形の数だけ、お金の「入り口」があり、収入の構造も変わってきます。

例えば、公共の施設を運営をしているNPOならば、行政からの委託金が大半になると思います。貧困支援や途上国支援といった「寄付」をメインとする収益モデルのNPOもありますし、病児保育や産後ケアなど、対価性と寄付性の混合モデルもあります。

 

事業収益を上げること、助成金を活用して事業のタネを育てることは、企業もNPOも変わりはないのですが、NPOの収益として特徴的なのは「寄付」を受けられることです。多くのNPOは「社会の課題を解決する」ことを目的に立ち上げられ、「社会の課題」の多くは経済合理性に合わずにそのサイクルから外れたところで起こるものです。人口減少の縮退社会のなかで、行政だけでは社会課題の解決に限界が訪れるなかで、社会活動の受け皿として期待されているのがNPOであり、収益をあげにくい事業に積極的に取り組むことに対して、「支援」を公式に募ることができるのが、NPOの特徴です。

 

森ノオトの場合は、「事業収益」「助成金」「寄付」をミックスした事業形態です。

2009年の創刊以来、「環境や社会の課題に対して、ローカルメディアを通してやわらかく、生活者の視点で伝える」手法で、メディアを運営してきた森ノオト。森ノオトの記事は、誰でも無料で読むことができますが、運営には、編集者の人件費、サーバーやホームページの運用費、ライターの取材交通費や謝金など、当然コストがかかります。また、市民ライターの記事のクオリティを担保していくためには育成的な視点で伴走していくことが必要ですし、市民ライターが安心して語り合える場をつくるためのコミュニティ運営にも労力がかかります。

 

NPO設立当初は、イベント収益で浮いたお金をメディアの運営費に充てようと目論んでいましたが、それは早々に行き詰まります。大型の助成金や、規模の大きな委託事業が入るようになり、その事業費の一部をメディア運営費に充てながらの運営という点では、当初の見立てと大きく構造は変わっていないのが現状とも言えます。

 

森ノオトの設立当初から一貫しているのが「広告主に依存せず、ライターの表現の自由を守り、団体のビジョンに即した情報を発信する」という姿勢であり、多くの方にメディアを支えてもらう「寄付モデル」をメディア事業では根幹に据えていこう、と2018年には「500円の寄付からメディアを支えるマンスリーサポーター」という仕組みを整えました。広告に頼らずにメディアを運営することついては、メディアの収益モデルとしてはこれまでにあまりない手法であり(森ノオトが参考にしたのはgreenz.jpのモデルであり、グリーンズの植原正太郎さんにアドバイスに乗っていただきました)、その理由や価値を伝えていく難しさに直面しているのも事実です。「メディアは森ノオトの根幹であり、ていねいに生活者目線の手ざわり感のある情報を編集している価値に共感を集めよう」と、森ノオトサポーターの募集は、今、組織の中でもっとも大切にしている部分でもあります。

 

2019年度は、ローカルメディアコンパス制作のためのクラウドファンディング1678,000円という大きな支援を集めたため、会費・寄付の割合が11%と高くなっていますが、近い将来の目標は、マンスリーサポーターだけで寄付の割合を10%に上げていくことです。それだけ、森ノオトのメディアの運営方針に賛同し応援してくださる人がいるという状態を目指します。

 

森ノオトの事業と収益源

 

森ノオトの事業収益については、大きく、「自主事業収益」と「委託事業収益」に分けられます。

自主事業収益は、森ノオトが独自で企画し運営している事業であり、例えば講座事業や、寄付布雑貨ブランド「AppliQué」の物販、めぐる布市あおばを食べる収穫祭などです。もともとAppliQué事業はセブンイレブン記念財団の助成金で事業立案して、3年間の補助を経て4年目の2019年からは自走を目指していました。助成金というのは、事業の「タネ」を育てるために活用するもので、そこで育った芽を大きく花開かせていくための力を助成期間につけなければいけません。

 

一方、委託事業収益は、主に行政と一緒に森ノオトが企画をして動かす事業です。青葉区こども家庭支援課と2017年度から実施している「Welcomeあおば子育てツアー」や、2018年度からは区政推進課と「フラワーダイアログあおば」、2013年度から息長く続く地域振興課資源循環担当との「3R夢(スリム)なクッキング講座」など、行政が解決したい課題に対して森ノオトが企画やアイデアを出しながら、一緒に実現していっている事業が委託事業収益の多くを占めます。

また、これまでに都筑区民活動センターの広報誌「縁ジン」をはじめとする、市内、県内から全国へと広がるライター養成講座や、横浜市環境創造局発行の地産地消情報誌『はまふぅどナビ』の制作委託なども、委託事業収益です。

 

自主事業、委託事業、いずれも、森ノオトの場合は、自ら企画・提案をして、つくりあげていくものがほとんどなので、「森ノオトらしい」仕事が、青葉区や横浜市のあちらこちらで見られるようになっているのは、ありがたいことだと思っています。

 

オンラインで研修を受けられることになり、子育て中で時間に制約のあるスタッフも、自宅から、事務所から、参加しやすくなった

 

このほか、「NPO経営とお金の関わり、全てお見せします!」では、人件費の設計の仕方や、ライターの原稿料の基準、ボランティアに提供するベネフィットや、事業間の収益のデコボコをどう見るかなどについて、盛りだくさんの内容でお話をしました。

 

参加者からは、

「同じような悩みを持っている人と時間を共有できてよかった。NPOの経営の悩みは共通のもので、見えない価値を明文化する必要性を感じた」

「他団体の具体的な話を聞くことで、自分の話を相対化できる」

「ボランティアでやっている活動も限界で、収益化させないと発展は難しいと思った」

など、たくさんの感想をいただき、またこういう機会をつくることができたらいいなと感じました。

2020年秋に撮影した事務局スタッフの「お願い!」写真

 

森ノオトでは現在、「寄付ページ」を改修しています。私たちがどんな社会を目指しているのか、森ノオトに寄付をすることでどんな社会の実現に近づけるのか、事務局スタッフで日々話し合いながら、森ノオトが社会に送り出している「価値」について、明文化しようと試みています。

 

「地域や自然と調和した社会と、その担い手を育てる」という私たちの理想に向けて日々歩んでいく姿を、これからも折にふれてお伝えしていきます。

 

森ノオトを「寄付」という形で応援いただけますと、活動を継続していくための大きな支援になりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

Information

森ノオトマンスリーサポーターの募集ページはこちら

https://donate.morinooto.jp/

NPO経営についてのお仕事のお問い合わせはこちら
https://wx25.wadax.ne.jp/~morinooto-jp/mori/contact/

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/編集長/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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