大きな空の下の、ちいさな なかまたち。 ~こうかんこしたの~
青葉区のゆたかな自然の中で、季節の移り変わりを心とからだいっぱいに感じて育ち合う「NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ」。安心できる場で一人ひとりの意思と個性を輝かせてあそびこむことで、だれでも子どもは自ら育ちゆく「力」を発揮します。寒い冬でも、透明感あふれる陽ざしのもと、子どもは元気にいのちを輝かせている。コロナの状況下でも、そんな姿に大人の私たちは励まされます。3年前の冬のできごとから、エピソードをおすそわけします。

文=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ保育士・土井三恵子 / 写真=NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ

※このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、毎月リレー形式でお送りしていきます。
 

霜ばしら

畑は、あたり一面、霜ばしらで覆われていました。

 

でも、子どもたちが集まる時間には、春を感じる陽ざしをうけて、ほとんどが溶けていました。堆肥をほどこす前の畑は、一面みごとにどろどろ。「わ~~!おだんごが作りたい放題だね~」。そう私が叫んだ時、コッコの大きな大きな泣き声が響きました。

 

ふだんどろんこでも水でも、とっても遊べる2歳なりたてのコッコ。生まれる前からお兄ちゃんといっしょにぺんぺんに通って、大きい子たちがあそんでいるとふっと輪に加わっている、みんなの末っ子のような女の子。それなのに、どうしたのかなと、私はママの腕の中からコッコをあずかって、一緒におだんご作りを始めました。コッコはすぐ泣き止みましたが、どろを触ろうとはせず、おだんごを作り始めた私の横に、ずっと立っていました。今日のどろどろはとても冷たかった。コッコは朝一番、さっそくどろあそびをしてみたけれど、手が冷たくなって泣きたくなってしまったのだな、と思いました。

 

畑でも公園でも道ばたでも、土を見つけたらしゃがみこんで、黙々とほじくりはじめる、2歳なりたての女の子

 

1歳から2歳ごろの小さな子たちは、ゆっくりゆっくり考えます。言葉にはならない気持ちをゆっくり味わいながら、あそびをみつけます。言葉を交わさなくても、しぐさで言葉らしきものが聞こえてくるような、そんなささやかなやりとりをかわして、友だちとのかかわり合いを少しずつ深めていきます。少しずつ少しずつ、ゆっくりゆっくり。その子の時間の流れに合わせて。だから、小さい子にとって特に大切なことは、同じことをくりかえす「変わらぬ毎日」と「変わらぬ少数の仲間」だと思っています。

 

しばらくして「おだんご作る?」私はコッコにそう聞いてみましたが、コッコはだんまり動かない。「手つめたいから、スコップ持つ?」やっぱりだんまり動かない。かれこれ10分ほど、集まってきた子たちと私がおだんご作りするのを、コッコはじぃっと見つめていました。ほかの子たちは、冬の晴れた陽だまりのなか、思いおもいにあそびをくり広げていました。

 

どろどろのどろだんご

 

これ、なんだろう

 

ガタン~ゴトン~はやいぞー

 

あ!ひこうきだ!

 

ふいに仲良しのユイちゃんが、畑にひとつしかない黄色いスコップを差し出しました。私が受け取ろうとしたら、急に横からコッコが手にとり、そこからコッコはしゃがみ始めて、大好きなどろんこあそびを始めました。

 

それでも言葉はほとんど出なくて、黙々とどろをいじくっている。そばで私もカゴのテーブルを作り、おだんごやさんやクッキーやさんを始めてみました。すると、またコッコは横で言葉少なに、じぃっと立って見始めました。もともと笑顔をほとんど見せないくらい、黙々と集中してあそぶことが多いのだけれど、保育者のコッサンがお客さんに来ても、じぃっと無言で見つめていました。「コッコ、コッサンが、このおだんごくださいって。いい?」だんまり。「これ売っていいですか?」だまったまま、首をヨコに。「……じゃあ、このクッキーは売っていいですか?」だまったまま、それでも、ほんのわずかに首をタテに動かしました。

じぃっと見つめる。小さい子は、友だちや少し大きい子の遊びを見つめて、見つめて、そしてまねをしてみる。大人から教わるよりも、だんぜん吸収するものがちがいます

 

ママが出かけて40分くらいたったころ、暖かくなってきて、水あそびも始める子がちらほら。でもどろどろが苦手な子を筆頭に、小屋の中で早弁が始まりだし、次々子どもたちがお弁当を食べ始めました。気がつくと、ひろい畑にはコッコがただ一人。どろだんごのお店に一人残って、いつの間にかコッコの体が動いていました。バケツに入った泥水をスコップですくって、いきいきとどろだんごにかけている。すくってはかけて、すくってはかけて、何回も何回も……。「コッコが運んだんだよ」。はっきりとした言葉を発しながら、口元には笑みが浮かんでいました。「かけてるんだよ」と。

 

小さい子ぐみのなかで、さらに小さい 1歳児ぐみのコッコ。ゆっくりゆっくり考えて、ほかのみんなが全員お弁当を食べるころに、やっと調子が出てきたのでした。ほんとうにささやかなあそびだけれど、小さな体に、いのちいっぱいあそび始めていました。寒さにかじかむ手、体も気持ちも縮こまる冬だからこそ、陽ざしが暖かくなると心がふわっと溶けて、子どもたちがより輝きだしたりします。私たち大人は、なるべく子どもたちの先回りをしたくない。小さな子たちの世界の広がりを、多くの言葉は使わずにじっと見守っていく大人でありたい。あらためてそう思いました。

 

その後コッコは、みんなの早弁が目にとまり、ゆっくり歩きだして、小屋の前で止まりました。じぃっと見つめて、12分。黙って近くにいた私の目をチラッと見たあと、 34 歩。さらに5 分近く見つめ続けて、長靴を脱ぐことに決めました。シートの上に立った、小さなちいさな体の中にある、しっかりとした「自分の意思」が伝わってきました。

 

あそびきった後のぞうり

 

すると、すぐにお世話好きな3歳半のハルくんが、小屋の奥からコッコのリュックを取ってくれました。ふたりで小さな体を寄り添い合うように座り、ハルくんがコッコの手をお手拭きで拭いてくれて、見つめ合う2人。お弁当のフタを開けると、コッコはじぶんのウインナーを、無言でハルくんのお弁当箱に入れました。ハルくんは「ハルトは、これしかないんだよ」と言いながら、鶏ハムをコッコのお弁当箱へ。見逃がしてしまうかもしれないくらいの、ささやかな、でもこんなすてきな光景に、私は胸がいっぱいになってしまいました。それは、うかつに大人が間に入っていたら、叶わないことだったかもしれません。

 

食べ終わった後、心もほぐれて、コッコは、もうすっかりいつものように、みんなに交じって遊んでいました。そして私のそばを通ったとき、ふと思い出したように「こうかんこしたの」と、ぽつりと教えてくれました。

 

ふたり

 

Information

ぺんぺんぐさは「ひとりで子育てしないで」を合言葉に、1歳半から就学前まで、約20人の子どもたちが育ち合う「預かり保育」の場を、保育者・スタッフを中心に、お母さんたちとともに手づくりしています。そして、ひとりでも多くの人たちに外遊びのきっかけや魅力もお伝えしたくて、定期的にだれでも参加できるあそぼう会や、講演会などを開いています。

【土と水と草と虫とあそぼう会】

◎凛とした透明感あふれる冬から、いのちの芽生えに出あえる春の季節へ。季節の移り変わりに、子どもも大人もきっと楽しい発見がいっぱい。晴れて風を避けられる場所なら、びっくりするほどポカポカです。冬でも暖かくあそぶコツもお伝えしますよ。3密になりにくい外遊びに、さらにコロナ感染対策をとって、少人数で開催予定です。

日時:2/18(木)3/11(第2木)4/22(第4木)9:4513:00頃 
以降毎月第3木曜場所:寺家ふるさと村周辺でどろんこ遊び 青葉台駅よりバス8分(鴨志田団地中央バス停または常盤橋バス停より徒歩5分)

参加費:400円+100円保険代(当日お支払いいただきます)

申し込み:前日朝10時まで

Mailaoba.penpengusa@gmail.com

電話:090-9147-3027(内藤)

のびのび自由に遊ぶ、外遊び体験会。生後8カ月ごろから、どなたでもどうぞ。

ご希望者対象に、お子さんだけ軽食をいただきながら、距離を保ちマスク着用で「のびのび子育ておしゃべり会」も行います。

天候が悪い日は、屋根もある場所で焼きいも体験に変更予定。※変更の場合がありますので、HPでご確認ください。

NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ http://jisyuhoikupenpengusa.blogspot.jp/

NPO法人森のようちえん全国ネットワーク連盟の安全認証を受けた認証団体ですhttp://www.morinoyouchien.org/Profile


土井 三恵子(どい みえこ)

NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ保育士/共同代表。10年の田舎暮らしと2人の出産を経て、療育センター・里山保育を行う保育園などを経験、青空保育を立ち上げもうすぐ10年目。現在保育スタッフ4人。1歳半から就学前の20数人の子どもたちと、都会の近くの緑豊かな野山・里山の残る青葉区で、土と水と虫と草木と地域の人たちと出会いながら、季節をからだと心いっぱいに感じて過ごしている。「ひとりで子育てしないで」を合言葉に、都会のお母さんたちと力を合わせて、育ち合いの醍醐味をともに味わっている。保育士、幼稚園教諭免許、小学校教員免許、中学・高等学校理科教員免許。○コラム『大きな空の下の、ちいさな なかまたち』連載。

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子育てコラム「風と鳥に、背中を押されて」「いのちの力」「ちいさなちいさな『うん』」「ユイが考えた遊びが、すてきだから」「けんかは、スポーツ」「はんぶんこは、イヤ」「アンちゃんは、3歳だから

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