今流行りの枝もの花材、水揚げの秘訣。 吉垣花園の吉垣和也さんに聞きました!
ステイホームがちなこの1年、暮らしに潤いを求めて、家に花を飾るようになりました。最近は特に、枝ぶりのよいものを選んで、大きな花瓶にざっと枝葉が広がるような、そんなイメージで花を生けています。川崎市麻生区王禅寺で、オーガニックフラワーを育てている花農家・吉垣和也さんと志保さん夫妻に、枝ものの花を長持ちさせるテクニックを教えてもらいました。(写真:堀篭宏幸)

森ノオトでもお馴染み、川崎市麻生区にある吉垣花園は、昭和5年以来、390年にわたり花の栽培を続けています。3代目園主の吉垣和也さんは、2015年より無農薬で花の栽培を始め、オーガニックフラワーの先駆者としてその存在を知られています。慣行栽培から無農薬栽培への切り替え当初は、花に虫がついたり葉に穴が開いたり、花が小ぶりになるなどして、収量が落ちたと言いますが、オーガニックフラワーへのニーズは着実に広がり、今ではこの道の先駆者として知られるようになりました。吉垣花園の花は、「花本来の生命がイキイキしているように感じる」「丈夫で長持ちする」「花瓶にさしても腐敗臭がしない」と評判です。

 

吉垣花園では「夕やけ山」と呼ぶ里山の中で、年間を通して100種類以上の花や枝物を育てています。豊かな里山の中で、虫や鳥も含めた生態系を保ちながら、季節にあった草花が共生している環境は、とても居心地がよく、まさに癒やしの空間です。木の根元には木陰を利用して球根が植えられており、雑草のように見えるカラスノエンドウは、根をのばして土中環境を豊かにしてくれる役割を果たします。植物の力で土づくりをすることで、5年をかけて農薬に頼らなくても花を育てることができるようになりました。

「これからライ麦を迷路のように育てていきたいと思っているんです」と、夕やけ山を案内してくださった和也さん。ライ麦は土中45メートルほど深くまで根を張り、土壌改良に役立つのだそう。

 

こんなに広大な里山全体を使ってオーガニックフラワーを栽培している吉垣花園。思わず「わあっ!」と声がもれた

 

取材に訪れた4月には、ドライフラワーの花材として使われるパンパスグラス(ススキの仲間)、アメジストセージやレッドクローバーなどのハーブ類、菜の花や矢車草(エルダーフラワー)といったエディブルフラワー、花に添えるグリーンとしてのギボウシやアオハラン、そして赤いコデマリやモッコウバラが見頃を迎えようとしていました。吉垣花園は「枝ものが得意」だそうで、ユーカリ、ミモザ、クリスマスリースのヒバなど、年間を通して多様な枝ものを用意しています。

 

一見、雑草にも見えるような花だが、大切に育てている。こちらはレッドクローバー

 

最近、インテリア雑誌やインスタグラムを眺めていると、家に飾る花のトレンドが「切り花」から「枝もの」に変化しているのを感じています。この春、私は近所で桜の剪定枝を手に入れて、それを備前の花器に入れて花が咲くのを楽しみました。これからの季節はドウダンツツジの枝をクリアなガラスベースにドンと入れて涼を感じてみようと思っています。

こうした「枝もの」を長く楽しむには、どうしたらいいのでしょうか。その秘訣を、和也さんに伺いました。

 

ユーカリだけでも何種類も植えている

 

花は出荷前までは根っこから土中の水を吸い上げていますが、出荷時には根を切り落とされるので、花瓶の水からを吸い上げやすくするために必要なのが「水揚げ」という処理です。市場から花屋に流通し、消費者の元に届くまで、花の鮮度を保つために花屋でも水揚げをしています。もちろん、私たちも、家で切り花を楽しむためには、日々、水揚げをすることで、家にある花を長く楽しむことができます。

 

水揚げにはいろいろな方法がありますが、家庭で簡単に枝ものを長持ちさせるには、①ハンマーで枝の切り口を叩く、②湯揚げ、③霧吹きの3つの方法がおすすめ、とのことです。

 

①ハンマーで枝の切り口を叩く

 

ハンマーで枝ものの切り口を叩き砕くことで、水を吸い上げる面積が広がります。

「枝ものはハンマーで叩くのがおすすめですが、草花の場合は、剪定バサミでパチンと根元を十字に切ると、切り口が広がりますよ」と和也さん。

 

ハンマーで叩いたモッコウバラの根もと

 

②湯揚げ

ハンマーで切り口を広げたり、切り口を十字に切り広げた枝ものの根元は、熱湯に30秒ほど浸けることで、雑菌の繁殖を抑えることができます。

切り花は花瓶の中で水に浸かるので、どうしても雑菌が繁殖しやすくなります。茎が腐ると水を吸い上げることができなくなってしまうので、こまめに水をかえて、切り口が傷み始めたら湯揚げを繰り返すことで、花を長持ちさせることができます。

 

和也さん愛用の「グランマーケッパーケトル」でお湯をバットに入れる

 

根もとを熱湯につけて殺菌する

 

③霧吹き+新聞で包む

 

花瓶に生けた花がしおれてきたり、葉がクタっとしてきたら、花・葉全体に霧吹きで水を吹きかけます。その後、新聞紙でくるんで花瓶に花を差し戻した状態で1時間ほどおくことで、花がイキイキと蘇ります。ポイントは、花や葉に水を与えつつ、根元もきちんと水に浸けておくこと。

「この方法で、ダラーンとした紫陽花も、ピンと直ってくるんですよ」(和也さん)

 

「霧吹きは、できるだけ細かい霧が出るものがいいですね」と和也さん

 

この日、私はモッコウバラ、コデマリ(ピンクアイス)、ビバーナム、クリスマスローズの4種を花束にしてもらい、わが家に飾りました。その後、ようやく剪定バサミと霧吹きを手に入れ、和也さんに教わった通り、花の手入れをしてみました。

雨が降らずに空気が乾燥していたこの4月は、放っておくとすぐに花や葉がチリチリと乾いてしまい、「乾燥は花のお肌にも大敵なのね」と実感。生花用の霧吹きで細かな霧を発生させると、心なしか花がイキイキと潤ってくるような気がしました。何より、山で咲いていた状態の花を見ていたので、花の元気な状態をイメージしやすく、手入れがしやすかったのかな、と思います。

 

家に帰ってさっそく花を飾った(写真:北原まどか)

 

今後、吉垣花園では、夕やけ山をデイファームとして開放していきたい、と志保さん。「オーガニックフラワーは切り花もきれいですが、大地に根ざした状態の魅力にふれるチャンスを提供していきたい」と語ります。ミモザの花冠づくりや、早春はヨモギを摘んでお団子をつくったり、エルダーフラワーのサラダを食べたり、吉垣家に伝わる季節の手仕事や、お正月を迎える飾り物の準備など、季節ごとに多様な楽しみ方ができそうです。

 

矢車草の花畑の横にテントを張っている。お花畑でのリトリートや食べ物のワークショップも企画中

 

これまで、子どもたちのフィールドとして開放してきた「夕やけ山」は、吉垣家のお子さんたちの成長とともに役割を変え、里山丸ごとで訪れた人を癒やし、整え、生きる活力を与える場として、新たな魅力をたたえています。

大地に根ざした「旬の花」のイキイキとした生命力を感じに、四季折々の吉垣花園を訪れてみませんか。

 

夕やけ山では今後、デイファームの活動を活発にしていきたいそう。和也さんと志保さんの夢はふくらむ

 

 

Information

吉垣花園

住所:川崎市麻生区王禅寺

電話:070-5467-7018(直通)

URLhttps://yoshigakihanaen.farm/

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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