8/22は横浜市長選!中1娘が全候補者インタビューに挑戦しました
2021年8月22日に投開票される横浜市長選挙は、8人が立候補という過去最多の混戦になっています。IR(統合型リゾート)の誘致の是非や、コロナ対策など、いくつかの争点があるなかで、選挙権を持たないわが家の中学1年生が、市長選の全立候補者への対面でのインタビューに挑みました。質問は全員共通の6問。多忙な候補者たちは、どんなふうに中学生のインタビューに応えたのでしょうか。

わが家の長女は中学1年生。学校、部活、習い事、塾と、忙しい毎日を送っています。週に1、2回、自分でお弁当をつくって(それ以外は母)徒歩で学校に行き、12歳の誕生日プレゼントのスマートフォンで大好きなアイドルグループの情報をチェックする、ごく普通の女の子です。

 

彼女の両親はどちらもメディア関係の仕事をしています。父親の勤める地域メディアでは、政治関連記事や政策広告などを多く手がけています。母親である私は森ノオトの創刊者で代表を務め、日常的に地域の政治家と意見交換をしたり、仕事として行政協働なども行なってきました。

わが家では食卓で政治の話題に花咲くこともしばしばで、選挙は必ず家族で投票に行きます。長女も、小1の次女も、まちで見かける政治家のポスターや、テレビのニュースなどで、地方議員や有名な国会議員の名前を覚え、両親の会話に割って入ってくることもあります。

 

そんなわが家の中学生、この夏休み中に「横浜の未来」について調べるという課題が学校で出されました。娘の考えたテーマは「ロープウェイ」。理由は「未来っぽいから」……。7月初旬のある日、父親が「それよりは、横浜の未来がテーマなら、8月にある横浜市長選の候補者全員にインタビューしてみたら?」と言い出したのです。

 

 

全候補者に同じ内容を質問する

 

最初は「突然パパに市長選に出る人全員をインタビューしろって言われて、イヤだった。面倒くさいと思った」と言っていた娘。7月4日に青葉台駅で立候補予定者の街頭演説があった際に無理やり連れて行かれて、演説を聞く母の陰で終始ふてくされた表情でいました。そんな娘を横目に、父親はオリジナルの質問ボードをつくり、候補予定者が掲載されている新聞記事を持ってきて、候補者の顔を切り貼りする作業から始めさせました。

娘は「パパにこう言われた。立候補予定者と全員会う。直接話す。写真を撮る。それをまとめてパパママ、じいじ(祖父)、ばばちゃん(祖母)に話し、投票の参考にしてもらう」としぶしぶ新聞記事を切り抜き、「中学校給食は自分に関わる問題だから、大人が自分たちの知らないところで決めるんじゃなくて、中学生が直接その内容について質問するのが大切、とパパが言っていた」と、選択制デリバリー式、自校調理式、親子調理式、センター調理式の特徴や費用について父親から学んでいました。

 

取材時に必ず持ち歩いていた質問ボード。ノートに質問項目をメモし、インタビューに臨んだ

 

質問は、次の6点です。最初の3問は父親が考え、取材が進むに連れて娘と候補者の会話から娘と相談し、合計6問に増やしました。街頭演説で候補者をつかまえ短時間でインタビューする場合は①②③のみでよし、としました。

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

③IR(統合型リゾート)は賛成か反対か。その理由は。
賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。
反対の場合は代わりの案は。

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

⑤なぜ私たち(市民)は政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

⑥●●さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。

 

父親の真意としては、「全員に同じ質問を投げかけることで、それぞれ異なる答えが出てくるはず。“正しいか”“間違っているか”の二択ではなく、正しさにもいろいろあるということを娘に知ってほしい。今回市長選に立候補する方々は、全員横浜をよいまちにしようと思っている。それぞれの“正しさ”を知って、自分の“正しさ”を考えるきっかけにしてほしい」という思いがありました。

 

 

インタビュー時に両親は口をはさまない。

 

市長選告示日の8月8日までに、娘は9名の立候補予定者にインタビューをしました(うち1名は8月5日に出馬を撤回)。インタビューには全て父親が立ち会い、可能な限り母親も同行しました。

 

アポイントメントは父親と母親で分担しました。立候補予定者の街頭演説の予定をSNSでチェックしたり、知り合いの地方議員に予定を聞いたり、公式ホームページのお問い合わせフォームから申し込むなど、地道に突破していきました。両親自身の仕事とは切り分け、しかし立場を明らかにしながら、「今回は仕事ではなく個人としてお願いしたい」と連絡を入れました。

立候補予定者と連絡が取れて、取材候補日が出ると家族LINEで連絡を取り合い、娘の部活と塾と習い事に重ならない時間帯で、多忙な先方とのスケジュールを縫うようにして調整していきました。

 

ある日のインタビューの帰り道。山下公園から山下ふ頭を眺めて、IR誘致の候補地について説明する父親

 

インタビュー時は、最初に父親が相手に趣旨説明をし、インタビューはすべて長女が行いました。両親ともに口をはさまず、私が同行できる時にはメモ係に徹しました。撮影は、インタビュー時の様子と、インタビュー後に娘と候補者のツーショット写真の2枚で定型化し、両親のSNSで発信する際は未成年者でもある娘の顔がうつらないよう配慮しました。

 

当初娘は「パパ話して」という感じでしたが、1対1でやるよう促されてインタビューを重ねるうちにだんだん声も大きくなり、堂々と質問できるようになりました。

 

この先は、インタビューした環境と、娘の言葉での各候補者のインタビューを紹介します(補足が必要な箇所は母親がカッコ書きを加えました)。お一人おひとり、ていねいに説明してくださいましたが、娘のわかる範囲でまとめているので、言葉足らずなところもあります。最後に、母親である私から娘にインタビューした感想を聞きました。娘は候補者の皆さんに対し自分なりの愛称で呼んで親しむなかで、緊張を解きほぐそうとしていたのかもしれない、と思います。写真のキャプションは母親の主観によるファッションチェックです。取材当初は本人も質問のやり方も慣れず、両親も記事化を考えていなかったので、撮影方法も統一できていないため、文字量や写真のうつり方がバラバラです。ご無礼がありましたらこの場でお詫び申し上げます。

 

 

<坪倉良和さん>日時: 7月24日(土)約20分、場所:青葉区鴨志田町

 

横浜市中央卸売市場で水産仲卸の会社を営む坪倉良和さん。坪倉さんは呼ばれれば各地に出向き、車座になって市民と語り合うことをしています。この日はかつて坪倉さんと商店会活性化の活動をしていた地域の商店主からSNSでメッセージをもらい、青葉区の仲間たち10名ほどが鴨志田町に集まりました。娘は20分ほど立ち話でインタビューをし、その後バスに飛び乗って塾に向かいました。

 

Tシャツ、短パン、ビーチサンダル姿の坪倉さん。フィッシャーマンズワーフのイメージ画像を見せて「山下ふ頭に食のテーマパークにしたい」と説明してくれた。娘が普段接する地元の商店主とほぼ同じ目線で話をしてくれたのが印象的だった

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

坪倉: 私は市場で働いている。政治家に市民の声を聞いてもらえない。行政に対する怒りが原動力。市長選に立候補してトップになってみんなに(市場のことを)聞いてもらいたい。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

坪倉: 中学校給食は、各学校でつくることが当たり前(自校式)。長い時間をとって、素材や生産者の思いや食事の大切さを学ばせたい。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

坪倉: 反対。IRを誘致することによってかえって財政が苦しくなる。実は(掲げられている)政策などに根拠がない。山下ふ頭でカジノをやるよりも、食のテーマパークをやりたい。

 

娘の感想:

「ツボちゃんはとてもやさしかった! 山下ふ頭にこういう市場をつくりたい、という具体的な写真を見せてくれて、わかりやすかった。市場に対する思いが伝わってきた」

 

その後、娘は坪倉さんの「濱の海坊主」というキャッチフレーズに大受けし、坪倉さんのTikTokを見て大笑いし、市場のことに関心を持つようになりました。親しみを感じやすいお人柄なのかもしれませんね。

 

 

<松沢成文さん> 7月31日(土)約10分、場所:青葉台駅

 

アポ取りが難航しているなか、休日に小1次女とおやつを買いに出た父親が、たまたま駅前で前神奈川県知事の松沢成文さんの街頭演説ののぼりが立っていることに気づきました。ご本人の来場予定を聞いたらこの後すぐに来る、とのことで、急いで長女に連絡をとりました。長女は部活と習い事の合間のたった1時間、奇跡的にとれたインタビューでした。

 

全身白でコーディネートしている松沢さん。赤いたすきが目立つ

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

松沢: 横浜がカジノで混乱して、(このままでは)発展しない(と危機感を覚えた)から。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

松沢: 中学校給食をやっていないのは(全国の政令指定都市では)横浜だけ。お母さんがいなかったり、貧しい人はお弁当がつくれないといった経済格差がある。自校式や親子式など全部掛け合わせてバランスよく進めていく。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

松沢: 反対。カジノ禁止条例を出す。それをやる(カジノ禁止条例を出す)のは独自の政策。その代わり、英語のまちをつくり、企業を増やす。

 

娘の感想:

「マッツンも、とてもやさしかった。急に押しかけたのに、ていねいに対応してくれた。英語のまちをつくる、というのが独自でおもしろいと思った」

 

娘は、カジノ禁止条例をつくる、英語を公用語にするなど、松沢さんが独自に掲げる政策に反応していました。「これをやるのはマッツンだけ」「独自」「具体的」という言葉が何度か娘から聞かれました。

 

 

<太田正孝さん> 8月1日(日)約45分、場所:磯子区岡村の事務所

 

太田正孝さんのアポは父親が公式ホームページの問い合わせフォームから連絡をしました。次の日にご本人から電話がかかってきて、取材を快諾してくださいました。当日は磯子区にある太田さんの事務所で取材。不動産業、行政書士、社会福祉法人経営、そして市議として11期40年以上の実績を持つ太田さんは、休日もご本人自らビラ配りにまわり汗をかいておられました。

 

ご本人の似顔絵があしらわれた黄色いTシャツ姿で現れた太田さん。休日のため自ら冷たい麦茶をお盆にのせて出してくださった

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

太田: 横浜市議に11回以上当選して40年以上やってきた。市長は政治をする、市議は意見を言う。多くの市民がカジノは反対と言うが、でも(現市長は)どうしてもやるという。市議として反対しても限界。それを阻止するために自分が市長になる。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

太田: ハマ弁を「給食」というのはインチキで、(実際喫食率が低く)みんな食べない。新しいちゃんとした給食をつくりたい。中学生は育ち盛り。家庭弁当やハマ弁だと栄養バランスに偏りがあるから、子どもたちの健康のために(みんなが)栄養のある給食を食べられるようにする。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

太田: 反対。カジノで儲けて(財源を賄うことを)やろうとしている。カジノは電球のネオンに虫が集まりクモの巣にからまるのと同じ。カジノ=博打で(人は)溺れていく。売春や赤線も同じ考え方。
カジノの代わりに、商業(的なものの誘致)、テーマパークのようなもの(を持ってくることも検討できる)。住民投票はやらない。住民投票してIRが勝ったらどうするの?市民の多くが賛成しても私は反対する。それが政治。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

太田: 市民の幸せを第一に考えるのが横浜市長の仕事。

 

⑤なぜ私たちは政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

太田: 自分の考えに近い人を選ぶのが選挙です。

 

⑥太田さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。

太田: (私が子どもの時は)みんな貧乏で、何もなかった。私は頭がよかったが貧乏で高校に行けず、(中学校を出て働いて、その)企業の中で勉強を教えてくれた(そして、働きながら学び大学を出た)。
ぜひ、市政中継での私の演説を聞いてほしい。

 

娘の感想:

「マサッターは笑顔がかわいい人だと思った。カジノが反対だということを、映像も見せながら、長く、強く、話してくれた」

 

太田さんはじっくり時間をかけ、特にIR反対ということについて、熱心に話をしてくださいました。私たちは時間で青葉区まで戻らねばならず、途中で話を折ることになってしまいましたが、一生懸命話をしてくださる姿に娘もありがたみを感じていたようです。

後日、太田さんから私の元に、ご丁寧な手書きの手紙が届きました。こうした細やかな心遣いをされる方なんだと感じました。

 

 

<福田峰之さん> 8月2日(月)約30分、場所:青葉区青葉台の活動拠点

 

福田峰之さんのアポは父親がとりました。7月上旬に青葉台駅近くでばったり福田さんに会った長女は、その時にも父親に促されて軽く質問していたのですが、とっさのことだったのでうまく質問できず、改めてアポをとることに。青葉台にある福田さんの拠点に伺うことができました。

 

「##横浜STARTUP」と書かれた緑のTシャツで選挙戦に臨む福田さん。スマートウォッチのバンドの色とズボン、文字の白抜きと、緑のスニーカーと、ファッションにもこだわりを感じる

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

福田: このまちがどこに向かっていくのか、リーダーが決める。こういう社会をつくりたい、というイメージを(伝えて、市民と)一緒にやっていく。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

福田: ハマ弁はおいしくない(と評判だ)から、(中学生自身が)おいしいと思うものをつくる。最終的には自校調理式にしていく。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。

福田: IRには賛成。(IRには市民の7割が反対していると報じた市民意向調査の新聞記事に)あの新聞は1000人に聞いていて、7割(が反対と言っている)。(答えている人のうち)その中の多くが50〜70代で、20代はどう思っているのかがその調査ではわからない。横浜の未来は20代の人たちがつくっていくが、その若者たちが(税金を)借金して背負うことになってしまう。横浜でお金をうむ仕組みをつくりたい(からIRは賛成)。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

福田: 将来の横浜の姿を示す人。

 

⑤なぜ私たちは政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

福田: 最終的に(選挙に)行かないと損をする。政治家に好きなようにされる。自分の意見を選挙に投票して示す。若い人が少ない(人口/投票率)から、私は、学生の人たち(若い世代)が喜ぶような政策(を掲げて、若者世代に向けて政策を訴えていく)。

 

⑥福田さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。
福田: 野球少年でプロになりたいと思っていた。

 

娘の感想:

「ミネユキさんは、インタビューよりも終わった後の雑談が楽しかった。中学校の教科書とか全部持ち帰るのが重いという話を私がしたら、ミネユキさんはクロームブックを見せて、“ここに教科書を入れて、クロームブックだけを持ち運べば楽。宿題もそれで済ませることができる”と言っていた。今、学校でタブレットが1人1台配られているし、わたし的にそれはすごくいいなと思った」

 

娘は共通質問のIRや中学校給食の話題よりも、インタビュー後の雑談が印象に残っていたのは、元IT担当の副大臣だった福田さんの得意分野であったことに加え、娘の中学校生活に直結する「教科書重い」問題の具体的解決策としての教育のIT化に話題が及んだからでしょう。

確かに娘が中学校に持っていくカバンは本当に重く、ある日試しに私が体重計にのって計ってみたら9kgもありました。部活の道具や水筒の重さも考えると、中学生の実生活での負担を減らす意味でも、福田さんのお話は参考になると感じました。

 

 

<山中竹春さん> 8月4日(水)約40分、場所:青葉区青葉台の議員事務所

 

山中竹春さんは今回、立憲民主党の推薦を受けて立候補します。7月上旬から精力的に街頭演説を行っており、青葉台駅前での応援演説を何度も目にしているため、娘も山中さんの顔と名前が印象に残っているようでした。今回は知り合いの市議や国会議員が日程調整に動いてくださって、青葉台駅前の議員事務所でのインタビューが実現しました。

 

サックスブルーのシャツと白が基調の山中さん。毎日演説に駆け回って声はかすれていたが、暑い中でも疲れを見せずに折目正しく接してくださった

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

山中: カジノで横浜がもめている。それが市民の多くが反対しているのに強行することに対して怒りがあったから立候補する。横浜市長の仕事は、市民が希望を実現すること。住民がイヤなことをやるべきではない。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

山中: 小学校のような給食にするべき。給食をおいしくしたい。どれくらい安くできて、どれくらい中学生が満足できるか、バランスよくかけあわせる。でも一番の指標は中学生が満足すること。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

山中: 反対。財源については、横浜市は3000のプロジェクト、仕事がある。その中で最も必要なものに予算や人件費のお金を使い、そうじゃないものを減らしていく。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

山中: 多くの人がいろんなことを期待する。困りごとを解決する。そういう声を集めて横浜市をよりよくしていく。今後横浜市がどんな横浜市になったらいいのかの見通しを示す。

 

⑤なぜ私たちは政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

山中: 学校の生徒会でも、誰でもいいやと思って選ぶと、変えたいことも変えられなくなる。議員は皆さんの代表者。考え方が合っている人、世の中をよくしてくれそうな人を選ぶ。

 

⑥山中さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。
山中: 環境の本やごみの本など、いろんな本を読んでいた。

 

娘の感想:

「ヤマちゃんは、例えば生徒会とか、身近なことを例にしてわかりやすく市長選のことを教えてくれてよかったと思う」

 

山中さんは横浜市立大学医学部教授として医学部生を教えていた立場上、どうしても説明が難しくなってしまうなと苦笑しながら、娘に「この言葉わかる?」と何度も確認して言葉を平易にしようと努力してくださるのがわかりました。ワクチン接種の有効性を証明した実績についての話では特に熱を帯び、市長になったらコロナ対策に力を入れていきたいと力を込めていました。

 

 

<田中康夫さん> 8月6日(金)約40分、場所:横浜市中の選挙事務所

 

田中康夫さんは元長野県知事、衆議院議員として長く政治の世界に携わり、作家、ラジオパーソナリティなど文化人としての知名度もあり、アポイントメントは難しいと思われました。公式ホームページからの問い合わせなど複数の方法を試みるなかで、ある日思い立ってTwitterでダイレクトメッセージを送ってみたところ、ご本人から直接お返事をいただきました。愛犬ロッタちゃんの執事のキャラで発信しているTwitterでのやりとりは、軽妙なおもしろさとたくさんの関連政策の情報が飛び交い、アポを担当した私にとっても、大いに勉強になりました。

 

今回唯一スーツとネクタイ姿でインタビューに応じてくださったのが田中さん。元ホテルだった場所を選挙事務所にしており、ロビーでお話をうかがった

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

田中: 横浜は魅力的なまちというイメージがあるが、実は光と影がある。このままのベクトルで運営されると横浜の未来がマズいなと感じて立候補する。長野県知事としての経験もあり、いかなる組合や政党の支援を受けないしがらみのない人が必要。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

田中: 今のものは「給食」ではない。政令指定都市で中学校給食がないのは横浜だけ。横浜市のお金は長野県の4倍の3.9兆円もあるのになぜ給食ができないのか。今は、親子式、センター式、自校式という議論よりも、まずは「全員に温かい給食を出す」を目標にして、その次に具体的な方策として親子式から自校式にしていく。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

田中: 反対。IR=カジノ。日本には競馬、競輪などたくさんギャンブルがある。カジノでは経済がIRは施設の中に囲い込みをするので、横浜にお金が落ちない。8〜9割(のお金)は海外の企業にいってしまう。山下ふ頭は特別な地域(保税地区)なので、(税金がかからない形で)見本市を誘致できるなどの利点がある。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

田中: 皆さんから先に税金をもらう。しかしそれは何に使うかは(書いてあってもよく読まなければ)わからない。教育や道路など、ビジネスでいうと採算取れないことをやるのが行政の役割。

 

⑤なぜ私たちは政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

田中: 同じ人間としてやってくれる人、信じる人に一票を投じる。一人の人間とて尊重するが、全権委任するのではなく、違うと思った時に違うと伝える。一人の人間として、今までの形の(政治の)ベクトルから変えてほしいよね、という(思いを託す)のが選挙。

 

⑥田中さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。
田中: 小学校の時はかけっこが遅かったが、中学校になって学校で3位になった。合唱部に入ってNHKのコンクールで3位になった。中学校時代はモテモテだった。

 

娘の感想:

「ヤッシーはやさしくて、質問したことにたくさん答えてくれた。答えがわかりやすかった。結構たくさん笑いかけてくれた。中学生の時にモテモテだったっていう話もおもしろかった」

 

田中さんのインタビューはとにかく情報量が多かったです。言葉の選び方や使い方に独自の美学を感じ、さすが作家!と言葉の力を感じました。娘にとっての人となりの印象は「やさしい」かどうかに左右されるようで、その「やさしさ」は説明のていねいさとほぼイコールなのだな、と思いました。

 

 

<小此木八郎さん> 8月6日(金)約15分、場所:青葉台駅

 

小此木八郎さんのアポは、地元の国会議員を通して父親が行いました。小此木さんは現政権下での国務大臣・国家公安委員長としての職を辞しての市長選立候補でしたが、街頭演説では自民党の応援団の方々が駆けつけており、娘のために取材場所の確保や動線整理に協力してくださいました。

 

白いポロシャツにネイビー色のパンツ姿の小此木さん。日に焼けた肌ときっちり整えられた短髪、ほのかなココナッツの香りが小此木さんのスタイル

 

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

小此木: 横浜市民として落選期間も含めて国会で28年活動してきた。横浜市の役に立ちたかった。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

小此木: 現状をよく見てみたい。お母さんの声や生徒の声を聞く。女性の社会参加で昔とは状況が違う。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

小此木: これまでIRを推進する立場だったが、多くの市民が反対しているのがこの2、3年気になっていた。コロナで世界全体が揺るがされ、生活も厳しく、観光が成り立たなくなっている。経済的に豊かにするのがIRだが、バクチで負けたお金を財源にするのはよくない。新しい生活で、カーボンニュートラル、脱炭素社会が大事。横浜では真っ先に脱炭素に取り組み、新しい産業や雇用をつくる。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

小此木: カジノやガソリン(脱炭素)など、いろんな意見があり(意見が異なるもの)それを調整するのが仕事。横浜のためにはならないものを取りやめて、その代わりになるものを用意して、方向性を決めていく。しっかり言える存在。

 

⑤なぜ私たちは政治に興味を持ち、選挙に行く必要があるのか。

小此木: 生活のなかではいろんな意見があり、一つの意見で固まることはありえない。いろんな意見や主張、権利を大事にする。

 

⑥小此木さんは中学生時代、どんなことに興味を持ち、どんなことを考えていたのか。
小此木: 野球少年でわんぱくだったが、人見知りで恥ずかしがり屋だった。たくさんケンカもしたがそのあとは仲良くなった。

 

娘の感想:

「青葉台駅で急に突撃したのに、ハチローさんは真剣に話してくれた。短い言葉でわかりやすく話してくれた」

 

小此木さんは夕方の強烈な西日を受けての立ちながらのインタビューでも、いっさい疲れを感じさせない姿が印象的でした。堂々とした振る舞いに娘も少し緊張していたようですが、一つひとつの質問に対して「市民の声を聞いて、いろんな意見を聞いて調整しながら進めていきたい」というスタンス。横浜育ちの小此木さん、青葉区もえぎ野にお住まいだったこともあるということで、一気に親しみを覚えました。

 

 

<林文子さん> 8月8日(日)約10分、場所:青葉台駅

 

今回、最もアポに難航したのが、現職市長の林文子さんです。公務優先で事前に活動を行わない方針とのことで、公式ホームページにもお問い合わせフォームがなく、SNSでもアポイントメントをとる術がありませんでした。8月8日の告示日の第一声を上瀬谷まで聞きに行き、突撃インタビューをする作戦を立てていました。

ところが当日は台風で荒天予報。第一声の場が変更となり、それがなんと青葉台駅前に! 自宅からすぐ近くということで、天が味方してくれていると感じました。駅に様子を見にいっていたはずの父親が、「今すぐ来て!林さんのインタビューができるから」と息を切らして玄関に駆け込んできました。地元の市会議員に趣旨を説明したところ「若者の政治参加には意義がある」と応じ、その場で調整に動いてくださったのです。私は靴下を履く余裕もなくビーチサンダルをつっかけて、娘と一緒に駅に向かいました。第一声の前の10分間、立ちながらのインタビューにもていねいに応じていただきました。

 

林さんはオレンジ色のたすきにのぼりが目印。ご本人の淡いオレンジ色のジャケットはやわらかい風合いで肌ざわりがよさそうでした。白いレースのトップスと白いパンツ姿が上品な印象

 

①なぜ横浜市長選に立候補するのか。

林: 横浜市長を3期12年やって、コロナで政策が止まってしまってやり残したことがあるから、それをやりとげたい。みなさんのような若い世代のためにも、将来の財政を構築したいと思う。

 

②中学校給食は現在選択制デリバリー式だが、それを続けていくのか。あるいは自校式、親子式、センター調理式に移行していくのか。その理由は。

林: これまで保護者がつくる愛情弁当が多かったけど、選択式デリバリー式の給食にしたことにより、当日でも自由で便利に選べる、しかもおいしくて栄養バランスもよい給食を実現できた。喫食率も上がっている。これをこのまま続けていきたい。

 

③IRは賛成か反対か。その理由は。賛成の場合は市民の多くが反対していることについてどう思うか。反対の場合は代わりの案は。

林: これまで自公の皆さんと一緒にIRをがんばってずっと進めてきたが、ところが候補者はほとんどすべてが反対となってしまい、自分が出なかったら市民の選択肢がなくなってしまう。今までやってきたことはなんだったんだろう、あってはならないことだと思う。IRを進めていきたいという市民もいる。その声を聞いていきたい。

 

④横浜市長とはどういう仕事なのか。

林: 横浜市は基礎自治体で、特に区役所は市民の生活に近くて、横浜市民の安全、健康、命を守る責任がある。私はこれまで直接選挙で選ばれてきている。市民の幸せと、横浜市役所で働く人の働きやすさを実現していきたい。

 

娘の感想:

「フミコさんは市長だし、わたし的にはラスボスだと思っていたので、実はとても緊張していて、覚悟をもってインタビューした。だけど、話してみたらとてもやさしくて、質問にもていねいに答えてくれて、わたしのことも褒めてくれて、とてもうれしかった」

 

林さんは、父親が仕事で何度かインタビューをしており、私自身は森ノオトとして市長表彰を受けたこともあるので、「お二人がご夫婦なの?そのお嬢さん?」と驚かれ、娘に気さくに話しかけてくださいました。しかも、第一声の冒頭で「先ほどかわいい中学生の女性記者から質問がありました。なんで林さんは横浜市長選に立候補したんですか?と聞かれたんです」と娘のことを話してくださって、それを現場で聞いた娘は照れくさそうに顔を隠していました。

 

 

娘の変化「みんなのことが好きになった」

 

最初は「パパに無理やりやらされた」とイヤイヤながらの立候補(予定)者インタビューでしたが、インタビューを続けていくうちに娘の姿勢が明らかに変わっていくのを感じました。

この8名以外に、8月5日に出馬を取りやめると発表した弁護士で元検事の郷原信郎さんのインタビューを行った7月29日が一つの分岐点だったように思います。

 

公式ホームページからインタビューを申し込んだ父親に、郷原さんから「せっかく中学生の娘さん向けにお話をさせていただくので、そのインタビューを収録し、中学生の方々向けにYouTubeで公開させてほしい。娘さんの名前等の個人情報は伏せ、映像も本人のみとし、娘さんは音声だけ収録させていただきます。お断りされても構いませんし、動画撮影不可の場合でもインタビューはお引き受けいたします」と連絡がありました。娘のプライバシーにも配慮しながら、中学生に向けてご自身のチャンネルで発信しようという試みに、わが家としてもぜひにと応じました。

娘に対してていねいに語りかけてくださる郷原さんの姿勢に、娘はとても感銘を受けていました。「ゴウちゃんは、私にもわかるようにとてもていねいに説明してくれたし、話もわかりやすかった」と話し、YouTubeチャンネルの視聴者コメントで「中学生がんばっている」というコメントを読んで「うれしい」とも言っていました。

 

郷原さんをインタビューした娘の様子は、郷原さんのYouTubeチャンネルで紹介されている

 

このインタビューの中で、中学校給食についての質疑がかみあわないシーンがありました。娘はそれに気づいていたもののインタビュー中に訂正できなかったことや、IR反対の意見を聞いたのにその財源をどうするのかを聞き忘れるなど、「反省点があった」と振り返っていました。

その反省を生かし、その先のインタビューでは質問にご回答いただいた後に「ありがとうございます」とお礼を言う、切り返しをしてみるなど、インタビューの仕方も変化していきました。

最後には「だんだんインタビューが楽しくなってきた」と言い、また取材に協力してくださった全員のことを「好きになった」そうです。

 

このインタビューの成果を、本人の学校の課題とは別に何らかの形で発表することについても、当初は「イヤだ」と言っていた娘ですが、最後は「市長選に立候補する人たちは、自分の意見を多くの人に知ってほしいと思っているのがわかった。だから私が聞いたことをママがまとめて伝えてくれるのはOK」と了承しました。

 

今回、私も可能な限り娘の取材に同行して候補者一人ひとりの思いを聞くことができました。最初に父親が話していたように、全員が「横浜の未来」を真剣に考え、仕事を辞めたり選挙に関わる多額の費用といったリスクを背負ってまで「横浜のまちをよくしたい」と立ち上がっています。IRの賛否など政策についての意見は人それぞれですが、一人ひとりの思いや信念を直接聞くことによって、賛成反対の二項対立だけで判断せず、自分は何を望んでいるのか、誰にどう自分の意見を伝えていったらいいのかを考えるきっかけになりました。

 

娘はプロの取材者ではありませんし、当然ながら初めての取材経験です。中学生に向けて自身の政策を語る、というニーズに対して、候補者のみなさんは言葉を選びながら、極力説明を平易に、削ぎ落としながら話しているように感じました。時に娘に「わかる?」と確認しながら話を進める各候補者の姿と、娘が感想で何度も話していた「◯◯さんはていねいに説明してくれた」という言葉に、「伝える」と「伝わる」の間にあるシンプルな法則――相手の理解を確認しながら言葉のキャッチボールをしていく、という姿勢が、ダイレクトに市民に響くんだなと思いました。

また、対面で話を聞くことで、その人の身振り手振り、目線、言葉のスピードと聞き手への気遣いも感じられました。選挙の際は、なるべく演説や集会に足を運ぶ、公開討論会などの動画を見るといった、文字だけじゃない情報を得ていくことも判断の指標になると思います。

 

候補者全員のインタビューというのは、それなりに手間も時間もかかりますし、調整も大変でしたが、本気になって挑戦することでなんとかやり遂げられました。広く門扉をひらき直接インタビューを受け入れる方もいれば、私たちに最も身近な地方議員が取材調整に協力してくださることもありました。娘のインタビューを受けてくださった全員が「若者が政治に関心を持つことには意義がある」とこの取り組みに賛意を示し、多忙ななかで快くインタビューに応じてくださいました。

候補者と直接会う、話を聞く、自分の意見を話すという体験は、「チラシやポスターに出ている人」が「その人そのもの」に変わっていくプロセスになりました。政治は自分の生活や未来と直結する、候補者は自分の未来を語っていることを、娘はおぼろげながらも理解するきっかけになったようです。

私自身が市民ライター養成講座で伝えている、「自分ごとにして考える」「当事者性を大切にする」「自分の軸を持って判断する」というメディアリテラシー教育は、主権者教育そのものでもあると感じました。

 

子どもにとって「遠い」「自分には関係ない」と思っていた選挙や政治も、毎日の中学校生活で関わる学校給食や、候補者の中学生時代を聞くことで、自分の暮らしや未来と直結していることがわかった娘。何より今回、家族全員で取り組むことによって、家族で会話する時間が増え、団結力が高まったと思います。ぜひ読者の皆さんのご家庭でも、選挙公報を見てお子さんの生活に直結するテーマを話題にしてみてください。そして、時間があれば、ぜひ演説を直接聞いてみてほしい。政治は、子どもたちの生活そのものや、未来につながっているーー。それを意識的に感じられるようになるはずです。

 

とても長い記事になりましたが、告示後の掲載ということもあり、全候補者の情報を公平に扱い、その背景もていねいに説明する必要があると考え、このような形になりました。

中学1年生の横浜市長選全候補者インタビューが、少しでも横浜市民のみなさんの参考になれば幸いです。

Information

8月22日(日)横浜市長選挙 各候補者の公式HP(届出順)

 

太田正孝さん

http://www.ota-masataka.com/

 

田中康夫さん

https://yokohama2021.me/

 

小此木八郎さん

https://hachirou.com/

 

坪倉良和さん

https://www.tsubokura-yoshikazu.com/

 

福田峰之さん

https://fukudamineyuki.yokohama/

 

山中竹春さん

https://takeharu-yamanaka.yokohama/

 

林文子さん

https://hayashifumiko.com/

 

松沢成文さん

https://www.matsuzawa.com/

 

北原 まどか
この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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