トマトは赤だけじゃない! 泉区和泉町・横山勝太さん
「ミニトマトは植え付けた最初に水やりした後、一切水をやりません。だからトマトは産毛を出し、空気中にも水分を求める。この産毛こそおいしさの証」と勝太さん。

初めて訪れた泉区。立派な垣根、広い庭、そして日本家屋が立ち並ぶ、昔ながらの集落が点在しています。その一角に横山勝太(しょうた)さん(26)のお住まいがありました。待ち合わせのために畑からもどった彼の手には、白、紫、黄色、オレンジ、赤と緑のゼブラ模様など珍しい色のトマト。春の日差しを浴びて、まるで宝石のように輝いています。

農業をはじめて6年目の横山勝太さん

農業をはじめて6年目の横山勝太さん

勝太さんは10か所、計2haの畑をもち、トマトをはじめブロッコリー、ピーマン、ナスなど20品目の野菜を栽培しています。

 

集落の狭い路地をぬけ、歩いて5分。案内していただいたのはトマトを栽培しているハウスです。同じように見えるトマトですが1畝に約3品種、全体で15品種を栽培しています。

 

「こだわりは色。トマトは赤という人が多いけど、いろんな色があるんです。面白いわね、珍しいわと驚くお客さんの顔が好き。だから紫や白などの品種を探して少しずつ色を増やしてきました」と勝太さん。

「ミニトマトは植え付けた最初に水やりした後、一切水をやりません。だからトマトは産毛を出し、空気中にも水分を求める。この産毛こそおいしさの証」と勝太さん。

「ミニトマトは植え付けた最初に水やりした後、一切水をやりません。だからトマトは産毛を出し、空気中にも水分を求める。この産毛こそおいしさの証」と勝太さん。

ハウスのトマトは天井に到達しそうなほど。これ以上大きく育ったらどうやって収穫するんでしょう? 余計な心配にも勝太さんは丁寧に答えてくれます。

 

「支柱より大きく育った茎は、ひねる程度に折り曲げます。折り曲げた茎は下へと伸びていくから(収穫は)大丈夫です」。

折り曲げた茎を指さす勝太さん。額には玉のような汗。この日ハウスの中は約35度。

折り曲げた茎を指さす勝太さん。額には玉のような汗。この日ハウスの中は約35度。

勝太さんは子どもの頃、友人たちが公園に行くのと同じように、畑に行って遊んでいました。畑の野菜をつまんだり、周囲を走り回ったり、常に農業は身近でした。高校生になる頃には農業をしようと心に決め、農業大学校にすすみます。

 

「大学校時代、フルティカ(トマトの中玉品種)を口にして、小学校の頃から嫌いだったトマトがいっぺんに大好きになりました。友人から“トマトマン”と呼ばれるほど、こればかり栽培していたんです。今でもトマト栽培には力を入れていますし、フルティカには愛着を感じますね(笑)」

 

勝太さんが語るエピソードは、素直でどこまでもまっすぐな人柄がにじみ出ています。

おいしいトマトの料理法、以前料理で使った野菜の感想……料理人と生産者の会話は尽きない。

おいしいトマトの料理法、以前料理で使った野菜の感想……料理人と生産者の会話は尽きない。

料理人の椿直樹さんとの出会いは3年前。農協青年部の先輩から椿さんのお店に連れていってもらったことがきっかけでした。

 

「今まで販売だけだったけど、椿さんと出会って、料理を通してさらに(トマトの彩りを)広げていけるかな? と思っています」と勝太さん。

 

椿さんのリクエストで、勝太さんはその場でミニトマトを収穫してくれました。

 

人一人がやっと通れる細い通路で、大きな体躯をしなやかに動かし、するするとトマトを採取。プロだなあ! とみとれてしまう無駄のない動きでした。

ラグビーが趣味の勝太さん。「ラグビーと農業の相性はいい。ラグビー日本代表選手のうち実家が農家の人は8人もいる。農業をすると足腰が強くなるし、新鮮な野菜で体が大きくなるんですよ」

ラグビーが趣味の勝太さん。「ラグビーと農業の相性はいい。ラグビー日本代表選手のうち実家が農家の人は8人もいる。農業をすると足腰が強くなるし、新鮮な野菜で体が大きくなるんですよ」

勝太さんの収穫作業を優しいまなざしで見守る椿さん。

 

「若いよね! 有名なベーカリーから地元野菜の農家を紹介してほしいと言われて、迷わず勝太くんを指名したんだ。大きな会社とのやりとりの一つひとつに刺激を受けて、成長していく感じがしてね。若いから大丈夫かなあと心配したんだけど、彼は相手先との話をちゃんとまとめてきたからね。これからどんな成長をするんだろう? 一緒に何ができるんだろうって楽しみなんだ」

手前右の赤いミニトマトから時計回りに、フルティカ、ベネチアンサンセット、バイオレット、イエローキャロル、シンディーオレンジ、ホワイトパール、ごほうび。白いホワイトパールはトマト独特の酸味があり、勝太さんが大好きなフルティカは野菜と思えないくらい甘い

手前右の赤いミニトマトから時計回りに、フルティカ、ベネチアンサンセット、バイオレット、イエローキャロル、シンディーオレンジ、ホワイトパール、ごほうび。白いホワイトパールはトマト独特の酸味があり、勝太さんが大好きなフルティカは野菜と思えないくらい甘い

「僕が作ったトマトを小学生に見せたことがあります。トマトは赤しかないと思っていた子たちから、歓声があがった。驚いてくれる顔が好きなんです。だからトマトだけじゃなくてナスやブロッコリーもいろんな色を育てています。お客さんが、“一度食べておいしかったからまた買いに来たよ”、売り切れた野菜を見て“今度はもっと早く買いにくるわ”と言ってくれる。それがうれしい」

 

勝太さんが度々口にする色へのこだわりは、お客さんとのふれあいを通して生まれたものでした。野菜と出会う時のお客さんの表情(顔)を意識して野菜づくりをする彼の姿は、いたずらっ子のようにもエンターテイナーのようにも感じました。

ジャガイモ畑も見学。ジャガイモも6品種を栽培。

ジャガイモ畑も見学。ジャガイモも6品種を栽培。

「将来は野菜の博物館みたいな。カラフルで(みんなが思うのとは)違った色のある、珍しい野菜を栽培していきたい。お客さんに食べて楽しんでもらうのはもちろん、見て楽しんでもらえる農家になりたい」

 

勝太さんの言葉には、将来像をたしかに実現していくだけの力がこもっていました。「濱の料理人」代表の椿直樹さんと巡る農家シリーズ、第5弾は横浜市泉区和泉町の横山勝太(しょうた)さん(26)です。カラフルで宝石のようなトマトを栽培する勝太さん。並々ならぬ「色」へのこだわりについて聞いてきました。

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https://faavo.jp/yokohama/project/1355
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この記事を書いた人
明石智代ライター
広島県出身。5年暮らした山形県鶴岡市で農家さん漁師さんの取材を通して、すっかり「食と農」のとりこに。森ノオトでも地産地消、農家インタビューを積極的にこなす。作り手の想いや食材の背景を知ることで、より食材の味わいが増すことに気づく。平日勤務、土日は森ノオトの経理助っ人に。
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