<世界の名だたるアウトドアブランドの聖地>
ポートランドには、世界を代表するスポーツブランド・NIKEの本社や、adidasの北米本社、アウトドアシューズのブランドKEENの本社、Colombia発祥の地で、ほかにもポートランド発のおしゃれなアウトドアブランドが数ある、アウトドアの聖地です。
オレゴンの深い森とコロンビア川、オレゴン・コースト、オレゴン富士と呼ばれるマウントフック、そして全米一自転車にやさしい街として知られるポートランドの、起業家精神あふれる風土に惹かれる企業が多いのかもしれませんね。
<個人でも出版やものづくりができる!>
私たちが観光できる時間は、到着した初日と、翌日の夕方まで。2日間で子連れでどれだけ巡れるか、優先順位を決めて動かなければなりませんでした。
初日はまず、ダウンタウン(中心部)に荷物を置き、歩いて動ける範囲を巡りました。活版印刷とコットンペーパーをつくる工場を併設したセルフ・パブリッシングのスタジオや、ポートランド発のクラフトが集まったセレクトショップなどを見て回りました。
全員一致で行きたかった「Rebuilding Center」は、寄付で建築廃材を集めて再活用する巨大な施設で、住宅のDIYやリユースを考える森ノオトとしては、絶対に外せないところでした。Rebuilding Centerのあるミシシッピ通りは、ポートランドの代官山のようなおしゃれなショッピングストリートで、そこに見たいショップが点在しています。ほかにも、ポートランドのDIY文化を支えるものづくり工房「ADX」や、zine(個人出版)のセレクトショップなど、時間があればいきたい場所が山ほどあり、2日目に回ることにしました。
今回の旅行で巡ったお店は数が限られていましたが、ポートランドではほかにも、セルフ・パブリッシングを支える印刷会社が複数点在し、それらの多くは工場を一般に公開し、誰もが利用できる仕組みを整えているようです。作品を発表したいクリエイター、それを支える技術や情報があって、新しい文化を支えるファンがつきやすい(行けなかったけれども全米zineシンポジウムが滞在中に開催されていました)、ポートランダーがクリエイティブである理由が垣間見られました。
<廃材も廃品もアートに、DIYに!>
Rebuilding CenterとSCRAPは、エコとクリエイティビティ、DIY精神を象徴する、ポートランドらしい施設と言えます。
ミシシッピ通りにあるRebuilding Centerは、全米でも最大級の建材リサイクルセンターで、約5000平米の建物のなかに、サッシ、ボウル、扉、ドアノブ、バスタブ、電球など、所狭しと廃材が並んでいます。Rebuilding CenterはNPO「Our United Villages」が運営しており、廃材はすべて寄付で、市販品よりもかなりの廉価で販売することで運営資金をまかなっているとのことです。
建築家でもある山川紋さんは「宝の山だ!」と言って大喜び。詳しくは、今後発信する山川さんの記事でご覧ください。すべて見て回るには、1日あってもおそらく足りないくらいの広さと種類で、圧倒されました。
SCRAPはダウンタウンからバスに5分ほど乗った大通り沿いにあります。Rebuilding Centerが建築に特化したリサイクルセンターならば、SCRAPは建材以外の、家庭やオフィスから出るあらゆるものを取り扱います。SCRAPもNPOが運営していて、すべて個人や企業からの寄付で素材の受け入れをおこなっています。市販品よりも60-75%も廉価で商品を購入できます。事業規模としては、「10人の雇用と家賃がまかなえるくらいで、助成金などを活用している」(SCRAP スタッフ)とのことでした。
SCRAPには、それこそ毛糸、古布、端切れ、ミシンなど布にまつわるもの、使用済みのカレンダーやノート、ペンやクリップなど紙製品、家庭やオフィスで支えるありとあらゆるものが所狭しと並んでいます。SCRAPでは扱うものを「スクラップ」と呼んでいます。年間140トンもごみになるもののスクラップとして扱い、それらが世に出て行き、アートやクラフトとして生まれ変わるそうです。
スクラップの中にはおばあちゃんがタンスの奥にしまいこんでいたような包装紙などもあり、受け入れ条件が気になるところ……。スタッフの方に聞いたら「アートやクラフトなど、ものづくりに使えるものならば受け入れますよ」とのことでした。
アートやクラフトとは違う文脈ですが、ポートランド観光で外せないのが全米一の規模を誇る個人書店「Powell’s City of Books」です。この書店のおもしろいところは、新品と古本を同じ棚で並べて同時に販売していること。絵本コーナーがとても充実していて、娘と一緒に本を選んでいる時に、そのことに気づきました。例えばエリック・カールの同じボードブックでも、6ドル、7ドル、9ドルと値段が異なるのです。中古でも状態のよいものしみのあるもの、新品と、自分が好きなスタイルで選べるのです。
<マイクロライブラリーにみるギフトエコノミー>
住宅街のあちこちに見られた小さな小屋。巣箱のようでもあります。例えば、家で出た廃品を1週間ほど置いておいて、近所の人が好きに持っていってもいいシステムです。
ほかにも、私たちが泊まったAirbnbの近くには、幾つかのマイクロライブラリーがありました。その家で読み終わった本を置いておき、近所の人が読みたいものを持っていく。自分が読まなくなった本をそこにお返しして、本が循環していく……。本を通じた、なんとも心温まる地域交流がそこにありました。
1週間のポートランド滞在で、見逃したところも数多くありました。ポートランド郊外にあるウィラメットバレーは世界有数のピノ・ロワールの産地で、ワイナリーが数多くあるのですが、残念ながら子連れでは……。ポートランド報告会用に空港で2本ワインを買いましたが、本当に美味しくて、みんなから大好評でした。
また、ポートランドは世界のベストビール都市1位で、できたてのビールをタップから注ぐスタイルのマイクロ・ブルワリーが市内に60カ所以上あります。こちらも子連れでは難しく……残念。りんごの醸造酒「サイダー(シードル)」もブームで、サイダリーも続々生まれているそうです。
契約農場のコーヒー豆をその場で焙煎して、1杯ずつ丁寧に淹れるサードウェーブコーヒーの発祥の地とも言われるポートランド。コーヒーは滞在中、何杯かいただきました。ダークローストのコーヒーはしゃきっと目が覚め、会話もはずむ。旅の仲間も、ブレイクの旅に美味しいコーヒーを片手にリラックスしていました。
今回私たちが見てきたポートランドのものづくり文化、その一端を垣間見ただけではありますが、人々の暮らしに息づくDIY精神やハイクオリティなライフスタイルを支える大きな素地だと感じます。エコ、ものづくり、グルメ、まちづくり……さまざまな切り口で、ポートランドをもっと知りたい、感じたい、再訪したいと思えるまちでした。
子連れでPDXツアー レポート集
(1) 概要編:(北原)
(2) 子連れ旅編:(船本)
(3) ものづくり文化編(北原)
以下、続きます!
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