日々の生活はネタの宝庫。クリエイター家族の笑いの絶えない暮らし。
大人気ブログ「フクダカヨ日記」&「イリエフォト日記」の作者一家が暮らす家は、森に囲まれた町田市三輪エリアの真っ赤な四角い箱の家。何気ない日常が笑いに包まれる、その秘密とは……。

ある日突然森がなくなった……そこから始まった旅

 

2階の吹き抜けから1階リビングを見下ろす。日差しがたっぷり入り、木の温もりがとても心地よい。壁には英樹さんの写真が懸けられている

 

「入江ちゃん」と言えば、人気ブログ「フクダカヨ日記」のメインキャストとして巷ではちょっとした有名人。マイペースかつ飄々とした存在感を放つお父さん、そして時に家族写真を得意とする写真家としてのやさしいまなざしにファンが多いのもうなずけます。ちょっぴりスパイスの利いた風刺と、何気ない日常をユーモアで包み込むイラストレーターのフクダカヨさんは、もう一つの顔はテレビの映像ディレクターとして活躍する多彩なワーキングマザー。ブログで犬の糞を踏んでしまい冷や汗する姿が想像できないほど、ご本人はとても美しく才気あふれる方なのだけど……。

 

入江英樹・フクダカヨ夫妻の住む町田市三輪町のログハウスは、真っ赤な外観が特徴的な真四角の箱のような家。6歳になる長女の小春ちゃん、3歳の次女・夏乃ちゃんの4人暮らし。英樹さんは平日、福祉作業所の職員として働き、カヨさんはイラストや映像の仕事に精を出し、土日は家族でおにぎりを持って近くの森……三輪緑地でのんびりと過ごす、そんなメリハリのある日々を送っています。

 

取材の日にコーヒー豆を挽いてくれた小春ちゃん。こういった日常の何気ないことも二人の手にかかれば、多くの人の心をふっと和ませる楽しいエピソードに

 

英樹さんは町田市金井の出身。「小さいころは森が隣にあってそこで毎日のように遊んでいました。ところがある日、宅地の造成で突然森がなくなってしまった。その思い出が強烈に残っていて」

 

幼い頃の原風景の森と、それが突然失われる喪失感。英樹さんはそれを邂逅するかのように、森に引きつけられ、森の近くに住まいを求めてきました。カヨさんと結婚して初めて住んだのは青葉区・町田市の境にある麻生区の飛び地岡上。多摩丘陵の最南端の森に囲まれた地からこの町田市三輪町に移ってきたのも森が決め手でした。

 

次女夏乃ちゃんが生まれ、少し広いところに越そうと物件探しをしていたころ、たまたま降りた場所が造成中だった今の土地。その時いい風が吹き、縁を感じたそうです。「歩いて2分のところに森があるというのが気に入った」と英樹さん。三輪緑地ならば森が突然宅地になる心配もありません。英樹さんの森を求めた旅は、今、理想の住まいを手に入れ、安住の地に落ち着いたようです。そんな物語もカヨさんの手にかかれば「家づくりすごろく」としてやっぱり笑いのネタに……(笑)。

 

広々リビングの真ん中にはハンモックが。少しワイルドに遊ぶ子どもたち。ガラス窓は小春ちゃんと夏乃ちゃんのキャンバスだ

 

物語や人生があるモノに囲まれて。

 

友人である横川雅也さんがつくった本棚(奥)。「本棚が来てから、子どもたちがここで過ごすのが楽しいみたいで」とカヨさん

 

入江家の1階はリビング、ダイニング、キッチンがひとつながりになり、ともかく広いという印象。リビングの中心にはハンモック、窓を開け立てればウッドデッキがもう一つのリビングに。こどもたちはそこを縦横無尽に動き回り、絵を描き、本を読み……ともかく賑やか!

 

リビングの隅に、木の本棚があります。ご夫妻の友人である木工作家・横川雅也さんの手になるもので、二人の蔵書にジャストフィットでつくられた棚は、まるで何十年も前からそこにあるように馴染み、アンティークの趣があります。

 

「子どもたちが読んでいる絵本の中には、わたしが子どもの頃に読んでいたものもあって。最後のページを破いてしまったから、未だに結末がわからないんです」と笑うカヨさん。絵本に限らず、カヨさんの金沢の実家から連れてきた和箪笥、子どもの頃から愛用している鞄、友人である陶芸家がつくった器……そう、この家にあるものたちは、一つひとつに物語や縁があるものばかり。今では子どもたちも「ママが子どものころから使っている鞄」とその謂れを語ることができるとか(しかもその鞄を新年早々落としてしまったエピソードがブログに!)。

 

ご夫妻の友人がつくった器で、小春ちゃんが挽いた珈琲をいただく。真ん中は英樹さんが働く福祉作業所のお菓子。とても素朴で素材の味がしっかり味わえる。福祉作業所での経験が英樹さんの写真のやさしさにつながっているよう。奥にあるのはカヨさんの「家づくりすごろく」

 

 

うつわも、古くから実家に伝わるものや友人の作家の手になるものがほとんど。「ものも、家具も、できるなら顔の見える人から」というのが入江家のスタイルです。だから、毎日食べる食材も、何となく縁あるところから集まってきて、安心して食べられます。

カヨさんはこの暮らしについて、「今の生活そのものが私たちの夢だよねえ」とうれしそうに話します。高価ではなくとも、好きなものに囲まれ、森が近くにある暮らし。かつて英樹さんが夢見て、二人で共有し語り尽くした夢が実現しているというのです。

休日はおにぎりを結んで水筒を携えて森でランチタイム。家の中も楽しいけれど、家の外もまた家の延長のような感覚で。おにぎりを持った入江家ご一行の姿は、近所でもすっかり評判です。

 

家から徒歩2分の森を分け入ると、寺家ふるさと村を一望できる高台に着く。ここは子どもたちの格好の遊び場で、夫婦の憩いの場でもある

 

 

ブログから広がり深まる縁、人の輪。

 

庭では小さな畑もつくっている。ウッドデッキはリビングの延長

 

カヨさんのブログ「フクダカヨ日記」は、そんな入江家の日常をイラストエッセイで軽やかかつユーモアたっぷりに描き、ココログのブログ大賞に輝き単行本化されました。『傘が首にかかってますけど』(インフォバーン刊)、『よりみちの天才 5分歩けば、笑いに当たる。』(メディアファクトリー刊)の2冊は、日々の生活に満ちた笑い、涙……様々なエピソードが等身大の生き物のように、読者の心にふっと寄り添ってくれます。

 

そして入江さんも「イリエフォト日記」と題したブログで、家族の日常の表情を切り取り、発表しています。こちらはまたカヨさんとは異なる視点でおもしろい。子どもや妻を見つめる温かい目に、結婚式、七五三、家族写真など、「家族の節目となる思い出を入江さんの写真で飾りたい!」という人も多いとか。

 

「夫婦の笑いのツボは基本的には一緒なのですが、お互いのブログを後から見て、あれ、こんなこと感じていたんだと驚くことがあったりして。そこがおもしろい」と英樹さん。イラストエッセイと、写真。お互いに表現方法が違うからこそ、読者もそれぞれのブログを行き来するのが楽しいようです。

 

キッチンの和箪笥には縁あるお気に入りの品々が

 

2年に一度、二人と、友人の作家たちで開催する「おうち展」では、入江さんがその場で家族写真を撮ってくれます。「ブログのファンの方々との、2年に一度の顔合わせのようなものでしょうか。会ったことはなくてもブログを見て僕たちのことを親戚のように感じてくれる人がいること、とてもありがたいと思います」(英樹さん)

 

インターネットで自分たちの生活や家族の表情をアップし、それをきっかけに人々とつながる。現代だからこそ可能なつながり方ですが、見ず知らずの人々の温かさを信じ、そこから縁と絆を深めていく入江家の生き方に、インターネットの温もりと無限の可能性、人を信じる心を教えてもらった……なんて言ったら、大げさでしょうか。

 

リビングのソファーでくつろぐ入江家の皆さん。左から英樹さん、夏乃ちゃん、佳代さん、小春ちゃん

 

 

Information

映像ディレクターでイラストレーターのフクダカヨさんのイラスト日記ブログ「フクダカヨ日記」、写真家の入江英樹さんの「イリエフォト日記」は、家族の何気ない日常をユーモアたっぷりのイラストと、やさしく温かいまなざしの写真で綴る、大人気ブログ。

フクダカヨ日記 

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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