第28回:自然エネルギーが市民参加型社会づくりにつながる。
「反原発運動も大事ですが、自然エネルギーを自らつくり供給する提案型行動も同時に大切です」……北海道グリーンファンド 鈴木亨さんインタビュー
(環境ビジュアルウェブマガジン「ジアス・ニュース」での連載より)

 

「ノーモア原発!」……そう叫ぶことも大事だが、それだけでは原発はなくならない。市民自身が自らエネルギーをつくって供給し、安全・安心なエネルギーを手に入れ、持続可能な未来をつくる。従来にはない新しい仕組みを提案し、実践していく「オルタナティブ」という考え方。自然エネルギーの分野で12年にわたりそれを実践してきたのが、NPO法人北海道グリーンファンドの鈴木亨さんだ。12年間で市民出資による風車を12基建設し、運用している。エネルギーシフトに動き始めた日本には、すでに市民風車による風が吹いているのである。

 

北海道グリーンファンドの鈴木亨さん

 

■一般家庭1万2000軒分の電気を市民風車がつくっている

 

「北海道グリーンファンドでは1999年7月の設立以来、北海道や秋田県、石川県などに12基、累計の設備容量では1万7770kW分の市民風車を設立してきました。これは、1年間で2万5-6000tのCO2削減効果と、一般家庭1万2000世帯分の電力を市民風車が発電していることになります。この12年の間で一般市民約4000人から約23億円分の出資参加があり、全国各地の地域NPOに市民風車の取り組みが広がって、市民風車の事業モデルができあがったと言えます。またエコツアーや地元特産品の通信販売など地域の自立に向けた取り組みが広がっています。

 

私は元々生活クラブ北海道の職員で、1988年から泊原発1・2号機運転の可否を問う住民投票条例の制定に向けた直接請求運動などを担当していました。100万筆の署名を集めたものの、住民投票条例は北海道議会では2票差で否決されるなど、生活クラブ北海道を中心とした道民あげての反原発運動は相当な高まりを見せていました。

 

その後も電力会社や政府への抗議、申し入れ、デモや署名運動、学習会などを行ってきましたが、1991年には泊原発が稼働し、1996年には泊原発3号機の増設計画が発表されました。それを機に私は、それまでの抵抗型反原発運動から、電気の共同購入や市民風車の建設など、新しいオルタナティブ型の活動にシフトしていきました」

 

 ■電気も食品と同じ、「消費材」である。

 

「生活クラブ北海道では、北海道電力の協力も得ながら、生活クラブの食材と一緒に電気料金を引き落とし、電気料金のうち5%を自然エネルギー普及のための基金として積み立てる「グリーン電力料金制度」を始めました。電気代5%分を寄付した分は省エネをして電気代を節約します。例えば家庭の1か月の電気料金が1万円ならば500円分、つまり「月々コーヒー1杯分の基金で、地球にやさしい未来をつくろう」と呼びかけ、多くの組合員の賛同を得ました。

 

この活動が母体となって、1999年に北海道グリーンファンドを設立しました。原発事故が起こると、動植物はもちろん、水、空気、土のすべてが汚染され、食の安全・安心が根底から覆されます。つまり食とエネルギーは「生活材/消費材」という意味では同じで、お金を出して選んで買う、という意識を生活者に根づかせることから市民風車の活動がスタートしています」

 

■市民連帯と社会変革の象徴としての風車

 

「私が市民風車に注目したのは、3つの理由があります。一つは風車がとてもシンボリックな存在で、風を受けてクルクルと回っている姿は、社会連帯の象徴としてわかりやすいから。また、風力発電は自然エネルギーの中では設備稼働率も発電効率も高く、経済性が見込めます。そして、発電量が大きく、エネルギーシステムを変革する手段として社会的なインパクトが見込めるからです。

 

日本ではエネルギー自給率はわずかに4%です。風車の立地を点で示すと国土が浮かび上がると言われるデンマークは、1970年代は2%程度だったエネルギー自給率もいまや150%です。北海道は人口、面積、気候風土、自然エネルギーのポテンシャルなどを鑑みると、デンマーク一国と匹敵するほどの規模の自治体ですが、風力発電の実績ではデンマークが約340万kWに比べて北海道では約26万kW、市民風車の割合はデンマークが約80%であるのに比べて、北海道では北海道グリーンファンドの実績で2%のみで、大きく水をあけられています。

 

いま日本では、自然エネルギーは原発の代替と考える向きがありますが、この考えだけでは本質的な議論ではないと思います。エネルギーの選択を通して政治・経済、雇用、産業など、社会全体のあり方をどう考えていくかが、本質的に議論すべき内容だと思います。

 

自然エネルギーはこれまでの大規模集中型のエネルギーと異なり、小規模分散型のエネルギーです。各地にたくさんの自然エネルギーがつくられるようになると、そのぶん、たくさんの問題が起きてくると思います。太陽光発電ならば電磁波問題、風力発電ならば騒音や低周波の問題というように。その時に大切なのが、地域住民が主体となって、市民参加型で問題解決に取り組んでいく、ということです。自然エネルギーであっても、人間が生きてエネルギーを使う以上は、必ず環境に負荷をかけます。問題の程度、持続可能性、問題解決策など、いろんな角度で、市民参加型で議論をしていくことが大切です」

 

■次世代にお金ときれいな電気と環境を残す

「北海道グリーンファンドの市民風車は、大口の出資者も、NPOの会員で少額の寄付を続けている人も、みんな平等に同じ大きさの文字で、風車に記銘をしています。たいていお子さんやお孫さんの名前を残す方が多いです。次世代に、投資したお金と、CO2の削減効果と、きれいな電気を、次世代に残していきたいという思いが詰まっています。

 

NPO法人北海道グリーンファンドでは、市民風車事業や、グリーン電力証書等環境価値の取引仲介事業、省エネ推進事業、環境エネルギー分野における政策提言などを行っています。市民風車の発電事業や風車のメンテナンスなどを行う組織が関連会社である株式会社市民風力発電、そしてファンドの募集を行うのが株式会社市民エネルギーファンド、この3つの組織で市民風車の事業を推進しています。今後の活動の展開としては、市民風力発電のように、市民風車の事業開発と運転・保守管理、運営を行う事業者を各地方に増やし、自然エネルギーによる雇用を地域で生み出し、一つの産業として育てていきたいと考えています。

 

また、今後市民が自然エネルギーに積極的に参加するための方法としては、市民風車のように自然エネルギーに出資すること、グリーン電力証書を個人で買うこと、グリーン電力に力を入れている企業の商品を購入して応援する、自分の家庭や地域に積極的に太陽光発電を導入するなどのメニューがあります。おおぜいの人が自然エネルギーに対して積極的に投資をして、新しいお金の流れをつくる動きができてくれば、自分の買いたい電気を選べるようになる時代が来るのもそんなに遠くないと思います。自然エネルギーによる電気を買いたい人も、売りたい人もいるということは、そこに市場があるということですから」

 

■都市と地方が自然エネルギーを通して連帯する

 

「エネルギー資源の枯渇や価格高騰、地球温暖化問題、そしてこれだけの大きな原発事故が起こってしまった以上、自然エネルギーを社会の中心に据えていくことに対しては、議論の余地がないほど当たり前のことです。それをどうやって増やしていくのかということが今後大切になってきます。

 

いま日本では少しずつ農業が見直されてきて、農家人口が持ち直しつつあります。ドイツやデンマークでは農民が協同組合をつくって風車を建て、風力発電事業によってベーシックインカムを得ていますが、そのように、日本でも地方自治体や地方金融がファイナンスの仕組みをつくって、自然エネルギーの普及を後押ししてくようになると、また新しい道が開けてくるのではないかと思います。

 

自然エネルギーは、地域にある光や風、森、川といった自然の資源を生かしながら地域経済を循環して、地域を自立させていくというところに本質があります。エネルギーの地産地消は地方であれば可能ですが、首都圏のような消費地の場合は、家庭用太陽光発電や家庭用燃料電池など住宅向けの創エネ設備を駆使しながら、東北や九州など自然エネルギーのポテンシャルが大きい産地からエネルギーを買い、地方の経済を買い支え牽引していくという視点も必要です。日本全体で自然エネルギーを普及し、持続可能なエネルギー社会を実現していくために、地方と都市がともに手を携えていこうではありませんか」

 

Information

■鈴木亨(すずき・とおる)さんプロフィール:

1957年北海道生まれ。生活クラブ北海道の職員を経て、1999年北海道グリーンファンドを設立(NPO法人としては2000年)し、事務局長として日本初の市民出資による風力発電事業に取り組む。市民出資による市民共同発電事業では、12年間で12基の市民風車の建設実績がある。また、グリーン電力証書の販売や、国内クレジット制度への参加、省エネ推進事業など、現在は理事長として幅広く活動中。風車の保守・管理などを行う株式会社市民風力発電代表取締役、市民出資のファンド募集などを行う株式会社自然エネルギー市民ファンド代表取締役。

 

北海道グリーンファンドホームページ

http://www.h-greenfund.jp/

この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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