いま眼鏡は数千円出せば買える、「安い、早い」のファストな時代。駅前のテナントビルや街のあちこちに眼鏡の安売りチェーン店が軒を連ねる昨今、桜台のYAMASENグラスワークスは、時代に媚びない、凛とした存在感で、今日もお客様を迎え入れています。
キタハラが青葉台を歩くようになって12年経ちます。その頃からこの眼鏡屋さんはちょっと憧れの存在でした。粋さを感じさせるこじゃれた看板、街に風格を与える佇まい。タウン誌に載るちょっとした広告も、スタイリッシュで、語りすぎず、常に「気になる」雰囲気をまとっていました。
時を経て2011年、ようやくYAMASENグラスワークスの堀部伸夫さんにお会いできました。きっかけはFacebook。3.11の震災以降、Twitterなどで少しずつ、地域の商店主さんたちがつながる動きを見せていました。
堀部さんが呼びかけ人となって、Facebookに「青葉台でフェイスtoフェイス」というページが立ち上がりました。言わば、インターネット上のオフ会みたいなもの。Facebookでは基本的に顔写真をのせ実名登録のソーシャルメディアなので、「以前から気になっていたお店だけど……」「よくお店には行くけど店長さんとは話したことがない」などという人と人が、Facebookを通じて交流し、またネット上で関係性を深めています。“バーチャル”ではなく、地域での“リアル”なつながりを強力にしてくれるツールなのです。
■青葉台でフェイスtoフェイス
https://www.facebook.com/aobadai.de.facetoface
「青葉台でフェイスtoフェイス」では、これまでに何度かオフ会をしています。森ノオトでも紹介したKEEL’S BAR HOUSE、木の家具屋さんのウッディハートや、向かいのエスニック家具屋のEthnicaなど、もちろんYAMASENグラスワークスもこれまでに会場になっています。普段とはちょっと違う趣で青葉台の人たちが集まり、交流する仕掛けをプロデュースしているのが堀部さんなのです。
「インターネット上の交流って、よく“バーチャル”といわれますが、使う人はみんな“リアル”な存在ですから。リアルがあることを中心にする。そうして人と人がつながり、笑顔になればうれしい」(堀部さん)
今年5月に企画した「Aobadai 100 smiles 青葉台の笑顔をいっぱい集めたい」では、ウッディハートの椅子に座った人の笑顔と、YAMASENで眼鏡をかけた人の笑顔を、たくさん集めました。
■Aobadai 100 smiles
https://www.facebook.com/Aobadai100Smiles
キタハラもムスメを連れて参加しました。ウッディハートさんのロッキングチェアーに座って、マダムになったつもりで優雅にくつろいでいたら……ムスメが走り寄ってきて一気にお母さんモードに戻り「パシャッ」。
YAMASENでは、堀部さんに選んでいただいた眼鏡をかけ、ちょっと知的なマダム風。ムスメも赤いフレームの眼鏡をかけて気取ってみました。堀部さんが構えたカメラは重厚な一眼レフ。動き回るムスメを抱えての撮影は大変だったと思いますが、一瞬のリラックスした表情をとらえて「パシャッ」。キタハラとムスメのこの写真、Facebook上で大評判でした。写真の腕前もすばらしい堀部さんです。
家具は、そんなに頻繁に買うものではない。3歳のムスメは家具屋さんでいろんな椅子に座り、家具に彫られた彫刻をみては「ウサギさんだ!」「お馬さんだ!」と大喜び。家具屋さん=楽しい場所になりました。
眼鏡もそう。3歳のムスメにいまはまだ必要ないかもしれない。だけど、眼鏡屋さんのカッコいいおじさんに会うと、いつもやさしく声かけてもらえる。そんな経験が子どもたちの“信頼”の根っこを育んでくれるんだと思います。
直接のお客さんじゃなくても、気軽に立ち寄ってほしい。ちょっとおしゃべりしませんか……。地元に立ち寄れる場所がたくさんあると、それだけで、笑顔と、安心が生まれます。
話は眼鏡に戻ります。YAMASENが桜台にオープンしたのはいまから28年前。YAMASENの社長と奥様、そして堀部さんと3人で立ち上げたお店です。実はYAMASENには眼鏡専門店だけではない、もう一つも二つも、別の顔があります。いまから20数年前、日本で発売されたばかりのMacintosh(いまはiPhoneやiMac、MacBookAirなどで知られていますね)を取り扱う専門店であり、インターネットのプロバイダーでもあったのです。
いま、印刷物をつくるのはDTP(Desktop Publishing)といって、パソコン上のソフトで画像を処理したり組版をする技術で、デザインといえばMacというイメージが定着しています。また、インターネットがこの世に登場して20年くらいですが、堀部さんはMacに魅せられた20数年前、インターネットもDTPも黎明期からビジネスとして手がけてきた実績の持ち主なのです。
いまでもインターネット関連のソリューション・ビジネス(システムによって問題解決を図るビジネス)に携わり、写真撮影やビデオ編集などもお手の物の堀部さん。「ここに先達がいた……!」と驚く人も多いでしょうね。
「眼鏡もMacも、ソリューション・ビジネスであるという意味で、私の中では一体でした。これからは、自分がこれまで手がけてきたこと、覚えたこと、知識や経験を、できる限りみなさんに提供して、みんなの役に立ちたいと思っています」と堀部さん。
いまは、Macで簡単に動画の編集をする手法を地域の仲間に伝えています。堀部さんがつくった動画は、Facebookで時々発表されます。あのパン屋さんや、あの家具屋さんが、走ったり驚いたり笑ったりの、幻のアクションムービーもあったっけ……。
「みんなが映っている動画で、楽しんだり、遊んだりしながら、みんなが“伝えたい”と思っていることをうまく伝えるお手伝いができたら……」
青葉台を元気にするソリューション、ここにあり!
キタハラ’s eye
12年前のタウン紙記者時代から、時々気になってはのぞきこんでいたYAMASENさん。いまも昔も変わらぬスタイリッシュさ、洗練された雰囲気。ようやく30代も半ばになって、「いい眼鏡」をあつらえたいと思うようになりました。だって、Aobadai 100 smilesで堀部さんに撮っていただいた自分の写真、ちょっと知的なマダム風で、「こんな風なおばさんになりたいなあ」という理想の姿だったのですから!
堀部さんのMacやインターネット、DTPへの深い造詣は、話を聞きながら圧倒されるばかりでした。わたしがMacにさわるようになったのはiMacデビュー時からなのでまだまだひよっこ。それどころか永遠にイノベーターには近づけません。お話の隅々に、黎明期を知る人ならではの深い深い愛情が感じられて、もっともっとお話をうかがいたい! と思いながらお店を後にしました。
青葉台の30代40代男子憧れのダンディズムと、青葉台ステキマダム予備軍の目指す「大人」として、これからもよろしくお願いします!
YAMASENグラスワークス
住所:神奈川県横浜市青葉区桜台29-16
TEL :045-982-5156
営業時間:10:00〜19:30
定休日:毎週水曜日、第1・第3火曜日
http://www.yamasen.co.jp/
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