そして、思うのです。「他にもないかな……お宝(直売所)!」
そんな「お宝」情報満載の直売所マップを青葉区で初めて発行した「環境保全型農業を推進するネットワーク」代表の齋藤静子さん(青葉区在住)を紹介します。
日ごろから新鮮な野菜を食べたい、と思っている方なら、直売所に足を運ぶことも多いかもしれませんね。
横浜の都市型農業の特徴の一つは、住宅地に点在する直売所が多いことです。青葉区周辺にもたくさんの直売所があり、新鮮野菜を身近で購入しやすい地域と言えます。
なるほど。齋藤静子さんが直売所マップをつくったのは、地元に数多くある直売所を紹介するためだったのね……と思っていたら、それは違っていました。
実は齋藤さん、「農家さんに元気になってもらいたい」という思いから、マップづくりを始めたと言うのです。
齋藤さんが青葉区に住み始めたのは20年前。年々、田畑が減っていることに気がついた齋藤さんは、農家の方々にこの緑豊かな田園都市の農地を保全してもらいたい、休耕地にしてほしくないと思うようになりました。農水省の仕事に携わっていた齋藤さんは、農家の高年齢化や、農家戸数の減少などで農地を維持していくことの難しさも知っていました。
そこで齋藤さんはひらめきます。自分が農家の応援隊になって、農家さんを元気にしたいと――。
そして8年前に農家とお客さんをつなげる直売所マップづくりを思い立ったのです。
直売所では、規格外の野菜でも新鮮だからと売れていき、お客さんの反応も見えるから生産意識も高まる。お客さんにとっても直売所で野菜を買うことは農家さんの顔が見えて安心なうえ、対面販売の直売所ではおいしい食べ方を教えてもらえる楽しさもある。
しかし8年前に始めた当時は、市民にとって直売所はまだまだ身近でなかったころ。前例のない直売所マップ……「それならば自分が前例をつくってしまおう!」と、齋藤さんは、なんと自費で直売所マップをつくることを思い立ちます。
当然直売所情報はないため、情報は足で稼ぐしかありませんでした。齋藤さんは道という道に足を運び、直売所を一つ、また一つと見つけていったのです。それはまさに宝探しのようなものだったでしょう。
そしてそこからがまたひと苦労。
直売所マップの掲載許可を農家さんにいただこうにも、相手にしてもらえないことも少なくありませんでした。背を向けたままで顔を見てもらえなかったり、「うちはやらないよ」と素っ気ない態度を取られたりしたといいます。
しかしそこでへこたれる齋藤さんではありません。
農家さんの野菜を買い、食べては感想を伝えに行き、畑のお手伝いもしました。
こうした地道なコミュニケーションによって農家さんとの距離が縮まり、信頼関係を築いていきました。
横浜市の北部農政事務所に行き、最終チェックを行なう念の入れ方で、公的にも認められる形で、念願の直売所マップは完成します。
そして直売所マップづくりは平成21年度に青葉区と協働する「地域力アップ」事業に選ばれ、これまでに「あおば区農産物直売所マップ」として3回発行されています。
さらに齋藤さんは、より良いマップにするためにいろいろな方からの意見を柔軟に聞き入れ、今年2月に発行された第3弾のマップには、青葉区だけでなく緑区の一部も含めた約50箇所の直売所を紹介しています。齋藤さんが考案したあおば野菜を使用したレシピ集もあり、とても好評だそうです。
まもなく協働事業としてのマップづくりは終了しますが、齋藤さんのアイディアは尽きないようです。
「あおば野菜がたべられるレストランの紹介や直売所を巡るウォーキングマップも載せたいの!」(齋藤さん)
マップつくりで農家さんを応援する齋藤さんが、今後どのような形で農家をバックアップし、元気な農地と環境をつくってくれるのか、目が離せません。
直売所マップは青葉区役所、地区センター、地域ケアプラザなどで配布されているほか、青葉区のHPからダウンロードできます。
http://www.city.yokohama.lg.jp/aoba/00life/10machi/20120501102051.html
hitomi’s point
齋藤さんのお話を聞いていて”直売所マップつくりの伊能忠敬”を連想しました。それはさぞ大変な作業だったのだろうと思いきや……「楽しくてしかたなかったわ♪」と満面の笑みで答えてくださった齋藤さん。人生、何事も楽しんだ者勝ち!というのは齋藤さんのような方のことだと、ただただ敬服してしまいました。
ここまでする原動力は? と尋ねると、「人が大好き!」という答えが返ってきました。齋藤さんのような明るく行動力のある青葉区民がいることに、希望と勇気を感じ、元気をいただきました。前向きな気持ちをありがとうございました!
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