それは、生ごみを堆肥にする方法の講習会。今年、青葉区では生ごみ活用法に注目が集まりつつあるのです。青葉区地域振興課ではEM菌という微生物を使った堆肥作りを、資源循環局青葉事務所では土に混ぜる土壌混合法を広めています。2つの講座に参加した感想を、前後編でリポートします!
(text:高橋陽子)
「ごみと資源物の総量を減らす」よこはま3R夢(スリム)プランの達成に向け、生ごみを減らすことが大きなポイントになるとして、横浜市内では生ごみの活用法=堆肥化に注目が集まっています。とは言え、日常生活で生ごみを堆肥化するのはちょっとハードルが高い……という気持ちを抱くのは否めません。私も、興味はあるものの、実践できるかどうかと問われると、ちょっと難しい……。実際にどのくらい参加者がいるのか気になって、区役所の地域振興課にうかがってみたところ、青葉区ではなんと、EM菌を使った堆肥化と生ごみの土壌混合法のどちらも数回開催され、毎回20名ほどが参加しているとのこと!そんなに人気の講習会なら、やっぱり参加してみよう!ということで、行ってみました!
(※注:今年の講習会は全て終了しています)
今回ご紹介するのは、EM菌を使った生ごみ堆肥化講習会の様子です。
区役所の会議室の一室で行われ、参加者は20名ほど。年配の方が多いのですが、赤ちゃんを抱いていらした若いお母さんの姿もありました。驚いたのは、参加者に男性がいらっしゃったこと! 生ごみというと台所仕事の多い女性の分野だと思われがちですが……。どなたもとても熱心に先生の話に耳を傾けていました。
今回の先生は、荏子田でEM菌を使った堆肥作りを続けてこられた小泉先生。品のある優しい笑顔の女性です。
小泉先生が生ごみの堆肥化に興味を持つことになったのは、30年ほど前、開発当初の荏子田に居を構えてからだったそうです。まだ住宅が建ち始めたばかりの頃から荏子田に暮してきた小泉先生は、人口が増えるにつれてある問題に直面したそうです。それが、ごみ置場におけるカラス問題。カラスに荒らされない街にするためにたどり着いたのが、「生ごみを出さない」こと。そこでEM菌を使った堆肥化を始められたそうです。
具体的にどうやって生ごみが堆肥になるのか。
その方法を学ぶ上で大事なのが、微生物による発酵について知ることです。
何を隠そう、私はバケガクこと化学が大の苦手。そんな私でも理解できたことをお伝えすると……
(1) 微生物による発酵には、「有用発酵」と「有害発酵」の2種類がある。
(2) 微生物には「嫌気性微生物」と「好気性微生物」がある。
ということです。
(1) の「有用発酵」とは、納豆や漬け物に代表される、人にとってありがたい発酵の作用。堆肥化においても、生ごみを有用発酵させることが基本になります。堆肥化が上手に進むと、ぬか漬けのようなニオイになるそうです。
これに対して「有害発酵」とは、人にとって有難くない発酵の作用。食べ物が有害発酵すると、いわゆる「腐った」状態になります。堆肥化においても、腐ったニオイがしてしまったら失敗のサインになるそうです。
つまり、いかに有用発酵させるかが、生ごみの堆肥化への成功への鍵になるわけです。
そして(2)の「嫌気性微生物」「好気性微生物」というのは、微生物のタイプのこと。空気を嫌う微生物が「嫌気性微生物」で、空気を好む微生物が「好気性微生物」です。
どちらの微生物のチカラを使うかで、どんな環境づくりをするかが決まってきます。
堆肥化に使われるEM菌とは有用性微生物群、つまり乳酸菌や酵母などの有用発酵を行う微生物を集めたもの。これらの微生物は嫌気性のものが多いので、空気に触れさせないで発酵させることが大事なポイントとなります。
さあ、いよいよ具体的な堆肥化の方法を習いました。
用意するのは大きなバケツのような専用容器「コンポスト容器」です。
底に近い部分にコックがついていて、水分が抜き取れるようになっています。
中をのぞくと、すのこが入っているだけ。とってもシンプルなつくりです。
この容器に生ごみと「EMボカシ」を入れて発酵させるのです。
(「EMボカシ」とは米ぬかなどでつくるEM菌をたっぷり含んだ資材です。)
すのこの上に新聞を敷いて、生ごみとEMボカシを入れてよく混ぜる。これを日々繰り返すことになります。
このとき、できるだけ空気に触れないようにすることが大事なので、量が少ないはじめのうちはビニールで中蓋をするといいそうです。
使う生ごみはできるだけ水気を切って細かくして入れます。細かいほど微生物が触れやすいので発酵が進みやすくなります。
水分が多いと有害発酵になりやすいので、べちゃべちゃにならないように、水分が多ければボカシの量を増やすなどして調節します。
発酵が始まると、容器の底に水分が浸み出してくるようになるので、容器のコックを使ってこまめに抜き取ります。これは液肥として使える発酵液で、水で薄めて植物に追肥として与えることができるほか、原液を排水溝などに流すと汚れを落として悪臭を取ってくれるそうです。
この発酵液をこまめに抜き取ることも大事なお手入れの一つ。それだけ水分には気を使うということですね。
発酵液は生ごみを入れるほどに出てくるようになりますが、発酵が進むと出なくなるそうです。
容器がいっぱいになって、発酵液が出なくなったら、密封して1〜2週間そのまま寝かせます。生ごみやボカシの上に白っぽいカビのようなものが出てきて、ぬか漬けのようなニオイであれば成功です。
こうなると、ここから先は好気性微生物が活躍するようになるので、土に混ぜてプランターなどに入れ、さらに1カ月ほど寝かせれば植物を植えられる状態になるそうです。
植物を植えられる状態になれば、ほとんど生ごみの形はなくなって、ホカホカの養分たっぷりの土になる、ということです。
堆肥として使えないものはペットのふんやタバコの吸殻、タマネギやタケノコの外皮など。コーヒーの出がらしやお茶殻は、水分を切れば使えるそうです。
日々の作業は、切って、ボカシを入れて混ぜるだけ。発酵液が出たら抜いて、あとはきっちり蓋を閉める。それほど難しい作業は無いものの、ズボラな私に毎日の課題が増えるのはつらいかな……とも思います。
同じような疑問を持つ方もいて、先生に質問すると「毎日必ず、でなくても大丈夫。水分と空気に気をつければ、生ごみを入れるのを忘れても問題はありません」との答え。
小泉先生も旅行がお好きとのことで、数日家を空けることもしばしば。そんなときは旅行中に発酵液が出ないように、数日前から生ごみを入れないようにするなどしていらっしゃるそうです。
一番心配な、虫が湧いたり腐ったりしたら……という失敗についても質問が出ました。
容器に肉や魚の骨・皮などを入れると失敗しやすいそうです。これらを入れると虫が湧きやすくなるので、慣れるまでは野菜くずだけにするのも一つの方法。
どうしても腐ったり虫が出て困ったら、中止して、容器から全部出してしまって、たっぷりの土と混ぜてしばらく置くなどして様子をみるのもいいそうです。置く場所などに困るようなら燃やすごみになるのも致し方ない、とのこと。
「まずは失敗を怖がらず、出来る範囲でやってみて欲しい」と話してくださいました。
講習会の後には、希望者にコンポストとEMボカシが配られました。
参加者の皆さんには、来年、その後の経過についてアンケートがあり、報告会が開かれます。
実際に取り組んだ方の成功例、失敗例を小泉先生に解説していただけるので、どんな報告会になるのか楽しみです。
小泉先生は「生ごみも、そもそもお金を出して買った食べ物の一部。それは財産でもあるんです。全て無駄なく活用できるんですよ」と話してくださいました。
捨てればごみ、使えば資源。それは紙やプラスチック製容器包装だけでなく、食べ物でも同じことなんですね。
次回はもう一つの生ごみ活用法、土壌混合法についてリポートします。お楽しみに。
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