NPOのツクリカタvol.1 ……NPO設立のプロセス
森ノオトがNPO法人になったのは2013年1月7日のこと。「NPOをつくる!」と決めてから設立まで1年かかりました。実際にやってみるとわからないことだらけ。どんなプロセスがあるのか、どれだけ時間がかかるのか、どんな書類をそろえなければならないのか……。まとまっている文章が意外と少ないので、「森ノオトの場合」をまとめてみます。

森ノオトをNPO法人化していくまで、これまでも何度か、キタハラの想いを森ノオトの中で述べてきました。きっかけは2011年11月の森ノオトの2周年パーティー。地元のエコつながりだけで100人を超す方々が集まり、森ノオトの注目度も上がってきたこと、行政からのお声がけが増えてきたことなどの理由が重なり、「そろそろ法人格を取得する必要があるな」と感じたからです。

 

これまで出資していただいた「ウィズの森」との親密な関係を維持・発展させながらも、地域のより多くの主体が協働で「地元のエコ」を盛り上げる仕組みをつくりたい。それに最も適しているが「NPO法人」という法人格であるのは誰の目にも明らか。森ノオトの発信している情報自体が「環境啓発」で、事業自体が「公益活動」そのものです。これまでウィズの森が企業として公益活動に出資してきたことは、企業の社会的貢献であり新しい公共の最前線でもある、というわけでNPO法人の設立を目指すのが自然な流れでした。

 

ただ、NPOは手続きの煩雑さでも知られています。本来は「公」がやるべき事業を、市民が担うという意味で、NPO法人は法人税で優遇されるなどのメリットがありますが、例えば役員を4名以上置いて定期的に理事会を開かなければならない、年に1回総会を開き正会員の承認を受ける必要がある、毎年10人以上の正会員(社員)を維持しなければならない、決算書類を年度ごとに公表し透明性を保っていかなければならない……など、運営でも手続きが多いのです。

 

ほかにも、「NPOって稼いじゃいけないの?」「NPOってできる事業が限られているの?」などいろんな疑問があって、一つひとつつぶしていきながら、何とかNPO法人設立までこぎつけた……というのが実情。今回は、森ノオトがたどったプロセスをお示ししていきますね。

【2012年1月-5月】

・ NPOで何をやっていきたいのか、事業のアイデアのブレーンストーミング(月1-2回、コアメンバーで集まりアイデア出し)。NPOになったら可能になること、そうでないことの洗い出し。

・ 同時に、森ノオトに適切な法人格を再検討。最初から「NPO法人」を目指してはいたものの、開かれているがゆえの事務手続きの煩雑さや、税制上優遇される事業の範囲、収益事業とそうでない事業などなど、NPO運営の先輩メディアや成功している非営利活動法人の運営手法を分析するのにやはり半年近くかけました。個人事業のまま継続することも、一般社団法人や、合同会社なども考えた。営利は目指さない(目指したらいままでの森ノオトと理念が異なってしまう)という点から、株式会社という案は最初から考えなかった。

 

【2012年5月】

・ 地球環境パートナーシッププラザで働く友人に相談。NPOであるべき理由、NPOだからこそできることなど、漠然とした想いを資料にまとめて話し合うなかで、「まずはつくりながら考える」という結論に。

 

【2012年6月】

・ 最終的に「NPO法人にしよう」と決めてからは、会員制度についてじっくり検討。他団体の定款を見ながら、森ノオトの定款をつくってみる。桜木町にある横浜市市民局へ何度も相談に通い、定款の項目一つひとつを吟味し、練り上げた。

・ NPOの役員(理事・監事)を決定し、第1回理事会を開催。

 

【2012年8月】

・ NPOの定款が完成。次の難問は「活動計算書」と「事業計画書」。活動を数字(お金)で見える化することに慣れていないので苦労した部分。また、NPOはボランティアではなく公益事業の部分で対価を得るのは正当だという立場から、メディア事業価格についても「理想と現実の狭間」で悩みに悩む。暑い季節にずーっと電卓をたたいていた気がする

・ NPO法人化にあたっての企画書がほぼまとまる。いまでもほぼ変わらぬ内容。自分の中で「NPO法人」が腑に落ちてきた時期。

・ 定款がほぼ固まり、NPO設立に向けてのスケジュールが見えてきた。暦に対して無理ない事業年度が理想なので、2013年1月の設立を目指すために、設立認証のスケジュールを逆算。書類提出から2カ月間の縦覧期間を経て45日以内に認証をもらい、認証から2週間以内に登記する必要がある。登記の日が法人設立日になる。

 

【2012年9月】

・ 9月30日、台風の日にNPO設立総会を開催。開催挨拶・定数説明、議長及び書記選出、審議までのプロセスを無事に終了。その後、参加者全員で森ノオトのビジョンを示すマインドマップを作成。これは宝物!

 

【2012年10月】

・ 横浜市市民局に申請書類を提出。提出した書類は1字1句間違ってはいけないのだ! 一つひとつを市の担当者とともに対面で確認、はんこをもらう。

*設立申請書

*設立趣旨書

*定款

*役員名簿(役員全員分の住民票を添付)

*理事の承諾書と宣誓書

*社員名簿(設立総会時点で10人以上分の正会員が必要)

*定款

*事業計画書(初年度、次年度分)

*活動計算書(初年度、次年度分)

*総会議事録

*確認書(宗教や政治活動を行わない、暴力組織と関係がないことを示す)

 

【2012年10月-2013年1月】

・ 横浜市市民活動支援センターが開催する「プロのNPOのための10の講座」を受講。理事・管理職養成コースと中堅リーダーコースの全10講座、朝から晩まで、社会起業や市民活動の第一線で活躍する講師による超濃密な講座。PR手法、資金調達、リスクマネジメント、人材育成、組織デザイン、会議デザイン、協働のデザイン、横浜のデザイン、そして「伝わるプレゼン道場」までやり抜き、現場のリアルな声や変革者たちの体験談まで、とても重要な学びになった!

 

【2012年11月-2013年1月】

・ メディア運営に関する事業計画を再度見直す。どのように多様な主体の参画を実現できるか、企画を立てヒアリングを開始

・ NPO正会員との1対1の個別ミーティング

 

【2012年12月】

・ 横浜市市民局からNPO法人設立の認証の連絡が届く。認証日から14日以内が登記の期限。「2013年1月7日を登記日にしたい」旨を伝え、年末年始をはさむため認証通知を1月7日に受けることに。

・ 登記に必要な法人理事長印を作成。

 

【2013年1月】

・ 年末年始に登記に必要な書類を整える。NPO法人設立と登記は別モノで、同じサイトで適切に説明しているわけではなく、法務局などの記載例を見ながらあれこれ考えて幾つかパターンを用意しておく。ハンコの押し方も練習どうしても7日に登記したかったが、ここで1字1句間違えるとやり直し、ダメになったら1月11日のゾロ目にしようと腹をくくり、書類どうにか一発で通った!

*登記すべき事項のデータ(申請書の内容をCD-Rに記録して提出しなければならない。我が家のMacからはすでに光学式ドライブが失われているため、古いiMacを復活させCD-Rを焼く)

*設立登記申請書

*定款

*理事長就任承諾書(登記の際は理事長一人が「理事」として扱われる)

*設立時の財産目録

・ 月曜日に登記し、金曜日に登記が完了するとのことで、1月11日に横浜地方法務局に登記事項証明書を取りに行った。証明書と印鑑カードを受け取り、「ホントに登記できたんだ」とほっと一安心。

・ 法務局から戻った足で桜木町の横浜市市民局に行き、登記完了届出書、登記事項証明書、財産目録を提出。

・ 緑県税事務所に、法人開設届出書と定款、登記簿謄本を提出(これが青葉区役所と緑税務署に渡る)

・ 緑税務署に、給与支払い事務所等の開設届出書と、源泉所得税の納期の特例承認に関する申請書を提出

・ 郵便局で送金専用口座と総合口座を開設。登記簿謄本、定款、社員名簿、印鑑証明書等の書類を整える。

 

……そして、この後も、色々続くんだと思います。特に、会計や税務が始まってきます。これまで個人事業主として気楽にやってきたことも、法人の代表、公器として透明な運営をしていくため、やっていくことが多い。同時に、会社の社長、経営者の皆さんも経験されていること、改めて見直し尊敬したのでした……。

(次回に続く)

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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