寺家ふるさと村は、豊かな自然が残るわたしたち周辺住民のオアシスです。近年は蛍狩りスポットとしても有名ですね。横浜市が昭和56年に「横浜ふるさと村」として指定して以後、地域住民や市が一体となってあの景観を守っています。横浜市が豊かな田園風景が残る農業地域を対象に、地域農業の振興とあわせて、市民が自然と農業に親しむ場として整備しているものです。
この横浜ふるさと村は戸塚区舞岡町にもあります。それが平成2年に指定された「舞岡ふるさと村」です。面積は約100ヘクタール。約86ヘクタールの寺家ふるさと村よりも広く、敷地内には総合案内所「虹の家」をはじめ、野菜の直売所や養豚場とその加工場、さらに公園、保育園や散策路も整備されています。
今回の「みどり税を活用した農地調査」の視察の舞台が、舞岡ふるさと村でした。
実は、小池は初めて舞岡町に足を踏み入れました。驚いたことに、市営地下鉄ブルーライン「舞岡」駅から地上に出ると……そこはもう、谷戸や田畑が広がるふるさと村! でした。
舞岡駅の隣に大きな戸塚駅があるなんて信じられないくらい、のどかな場所です。
横浜市は神奈川県下最大の農地面積を持つものの、残念ながら、その農地や山林の面積は年々減少しています。しかし一度失った緑を再び回復させることはとても困難です。
“緑豊かな横浜”を次の世代に継承するためには、緑の保全や緑化に取り組む必要があります。しかし、そのためには多額の費用が必要です。
そこで横浜市は「横浜みどりアップ計画」の施策を講じました。この計画を安定して進められる財源の確保のために、平成21年度から5ヵ年計画で「横浜みどり税」として、市民(個人)に市民税の均等割に年間900円を上乗せ(所得が一定金額以下で市民税均等割が課税されない方を除く)が課税されることになりました。
税収は、横浜みどりアップ計画の三本柱
(1) 樹林地を守る
(2) 農地を守る
(3) 緑をつくる
に充てられています。
それでは、今回視察した舞岡ふるさと村では、みどり税がどのように使われているのかご紹介しましょう。
舞岡ふるさと村では、各農家が自立し、生計を立てられる“活きた農業”であることと、市民との“交流型農業”に力を入れています。
たとえば「舞岡いちご園」では、いちごの生産販売はもちろん、ジャムなどの加工品の販売もしていますが、施設にはみどり税が導入されています。いちごの生産+販売+加工で6次産業を可能にした“活きた農業”がみどり税によって実現しているのです。
「水田保全契約奨励事業」もみどり税の重要な事業。市が農地を保有することはできず、農地は、農家に守ってもらうしかありません。
今回舞岡ふるさと村を案内してくださった横浜市の職員の方は「横浜市にとって田んぼは大切なものであり、いかにして守っていくかが課題」と話してくれました。水田には貯水機能や景観形成など、多面的な機能性があるからです。貯水機能により洪水を防ぎ、さらに水田の平均気温低下効果は1.3℃といわれ、ヒートアイランドの防止効果も期待されています。
実は農家にとって、米づくりよりも、野菜づくり方が収益があるそうです。その額の差は5?6倍もあると聞き、愕然としました。それでも水田を守ってもらうのには、水田の公益的機能が持続可能な農的環境のためにとても大切だからです。
さらに、交流型農業の実現のために、「収穫体験農園の開設支援事業」として、果物や野菜の収穫体験ができる農園の開設が支援されています。舞岡ふるさと村では四季折々でさつまいもやじゃがいも、竹の子掘りなどの収穫体験イベントを開催しています。
舞岡ふるさと村は、森ノオトエリアからは少々離れているため、あまり身近に感じられない……という横浜市民の読者もいるかもしれません。しかも、今回紹介したみどり税の活用例はほんの一部にすぎず、みどり税は市内の環境保全のためのさまざまな事業で使われています。
今回の取材を通して一つ言えることは、横浜市民が納税しているみどり税によって、横浜の自然は守られ、次世代へ継承されているということ。寺家ふるさと村の景観も、いつまでも変わらず残したいと,改めて感じます。
そして、成果も着実に出ており、横浜みどりアップ計画の実施後は、水田や樹林地の保全が進んでいるそうです。
平成21年度から始まった、横浜みどりアップ計画の5ヵ年計画は今年度で終了します。26年度以降の取り組みについて、横浜市は現在検討を進めているそうです。
小池は農地調査に参加することで、横浜みどりアップ計画の取り組みについて理解を深めることができました。今後もより多くの市民に届くような“緑豊かな横浜”づくりに期待しています。
【hitomi’s point】
現在横浜市の水田面積は、市の面積のたった0.5パーセント。これをお米に換算すると、横浜市民370万人の2日分にも満たないのだとか。そんな横浜産のお米は、市場に出回ることなく、なかなか手に入らないと言われているそうです。
しかしながら、レポーター小池は、自宅でも、職場の飲食店でも横浜産のお米を使わせてもらっています。こうして日々横浜産のお米を食べられるのは貴重なことなのだと、今さらながら知りました。ありがたいことです。
今後、水田面積が増え、より多くの次世代の横浜市民が横浜米をたのしめるようになれば……年間900円のみどり税は、未来の横浜・次世代の市民へのメッセージのように感じました。
横浜市のみどりアップ計画の詳しい取り組みについては、横浜市環境創造局の「横浜みどりアップ計画メールマガジン」に会員登録すると情報が得られます。
http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/etc/jyorei/keikaku/midori-up/midori-up-plan/mail-magazine/
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