2013年11月18日(月)。アートフォーラムあざみ野のレクチャールーム2・3にて「あおばECOアカデミー 第6回 私たちの未来をつくる井戸端会議」の最終回を開催しました。
今年度最終回を飾るゲストは、東京急行電鉄株式会社(東急電鉄)の都市開発事業本部企画開発部統括部長の東浦亮典さん。私たちの暮らす東急田園都市線を始め、東急沿線におけるこれからの街づくりについてお話をうかがいました。
講義の前に、東浦さんは参加者に一枚の紙を配りました。その紙には「あなたが終の棲家にしたい街はどこ(どんな)ですか?」という質問が書かれており、その下には○○○……と(マル)がいっぱい並んでいます。その数は、5・7・5・7・7と短歌の文字数。これを、アイスブレーキングというそうです。会議や議論の前の緊張をほぐすワークショップの手法の一つで、なるほど、短い時間の中で頭をひねり短歌を考えると、頭もカラダも温まってきます。参加者たちは次々と自作の短歌を発表していきました。そして、壁に張り出して、一番気に入ったものに投票!
参加者の緊張がほぐれたところで、東浦さんの講義が始まりました。「超高齢化社会と低炭素社会の同時解決を目指して」というお題で、東急田園都市線たまプラーザ駅の周辺で挑戦している次世代郊外まちづくりプロジェクトについて。森ノオトでもこれまで、夏の節電イベントのお手伝いや、住民創発プロジェクトの参加などで関わってきているので、親しみのある内容です。
かつて東急田園都市線の一帯は、里山や畑ばかりで、住宅地や商業施設などはなかったといいます。都市部の人口過密化を予測して、郊外に住みやすい街を作ろうということで、森が切り拓かれ、新興住宅地が開発されたのが1960年代後半。それから50数年が経ち、住宅やインフラは老朽化し、入植してきた住民たちも少子化・高齢化の波を迎えました。
東急電鉄と横浜市が提携して2012年から推進しているのが「次世代郊外まちづくり」です。森や林を切り拓いて新たに理想的な街をつくるのではなく、今ある街の暮らしやコミュニティを重要視し、郊外の街が抱える様々な課題を、地域住民や行政、民間団体や研究機関、専門家たちが協力しながら新しいやり方で解決していこうという取り組みです。
モデル地区はたまプラーザ駅の北側地区(青葉区美しが丘1・2・3丁目)です。1丁目は昔ながらのエレベーターのない5階建ての団地があり、高齢化率は21%のエリア。2丁目は民間の住宅も多く、高齢化率が7%と比較的若々しいエリア。3丁目は駅から少し離れたところにある閑静な高級住宅街で高齢化率は30%を越えているエリア。生活感の異なるこれら3つのエリアが隣り合わせになっていることと、住民たちの街への愛着が強く、様々な課題を解決していく取り組みが期待されることから、モデル地区に選ばれたそうです。
「次世代郊外まちづくり」のこれまでの活動として、「次世代郊外まちづくりワークショップ」を開催し、モデル地区に住む住民と一緒に問題点や解決策を話し合ったりしてきました。また「たまプラ大学」という連続講座を開講し、自分たちで新しい視点でのまちづくりを担うためのヒントが得られるような学習会も行ったそうです。
講義の最後に東浦さんが紹介したのは、まちづくりの活動を引っ張っていく8つのリーディング・プロジェクトでした。その中のひとつ、「家庭の節電プロジェクトとエコ診断」は地域住民に節電行動を呼びかけ、行動の第1歩を後押しするというもの。家庭にHEMS(Home Energy Management System。分電盤をインターネット接続して家庭の電力の消費量を「見える化」する機械)を導入しなくても、電力の削減が目に見えて分かります。今年の夏、7・8・9月に行った時には地域ぐるみで3%の電力削減につながったそうです。この冬は対象者を拡大してたまプラーザを利用している人なら誰でも(モデル地域の住民でなくても!)参加できるプロジェクトとなっています。
休憩(あおばECOアカデミー恒例のティーブレイク)をはさみ、ワークショップへ移りました。東浦さんが進行役となり、「2030年(17年後)、郊外住宅地の未来はどうなっていくのか? 郊外住宅地のより良い未来のために、私たちに何ができるか?」というテーマで話し合いました。
お題に対して、
1)自分一人でできること
2)地域ぐるみでできること
3)行政や企業を巻き込んでできること
3つの選択肢から選んで、具体的なアイデアが話し合われました。
あるグループでは、地域ぐるみで取り組みたいことに「食べられるまち」にしたいと発表していました。街路樹に食べられるものを植えたり、青葉区にも点在する耕作放棄地を開墾してみんなでお米づくりをしたり、「人と人の壁を壊し、窓を取り払い、地域ぐるみで垣根を越えて」、交流を深めていこうというものでした。
行政や企業を巻き込んで行いたいことを挙げたグループでは、「まずはみんなが集まれるコミュニティカフェのような拠点が必要」と話しました。行政や企業には、「場所」「広報」「人をつなぐ仕組み」を支援してほしい、と提案がなされました。
私が参加したグループでは、東浦さんが最後に紹介した節電プロジェクトの話から省エネの話へと進みました。自分1人でできる取り組みとして、家の中にある物(家電や車など)が本当に必要かどうかを見直し、地域の人たちでシェアできるものはシェアしていこうという案がでました。個人レベルで行う小さな取り組みも、メディアなどで発信することによって、地域全体に広がっていけば、というアイデアも出されました。
ワークショップ終了後には森ノオト編集長のキタハラマドカから、あおばECOアカデミーを始めた趣旨やこれまでに出てきたいろんなアイデアの紹介があり、今後(来年)はどういった活動をしていくかその展望が語られました。
あおばECOアカデミーに全回参加してきて、私がいつも感じていたことは、ここはまさに地域の交流の場となっていたということです。赤ちゃん・子ども連れの母親、現役で働く若い世代、シニア世代のおじさま・おばさまたちが出会い、意見を交わす中で、「この街にはこんな素敵な方がいるんだ!」「こんな取り組みをしている方がいるんだ」という発見がありました。地域で頑張っている人たちと仲良くなると、自分の住む街がぐんと魅力的に感じます。私はこの地域が以前よりずっとずっと好きになりました。
グループワークをする中で、地域での人と人のつながりが求められているのだなと強く感じました。今回のテーマにもありましたが、「どんな街に住みたいか?」……私はお友だちがたくさんいるところに住みたいです。街は、周りの人たちと助け合いながら、作り上げていくものなのだなぁと思います。そうすれば、多少の苦労や困難は乗り越えられるのではないでしょうか?
今回が最終回と言いましたが、森ノオトでは来年度もあおばECOアカデミーを開講する予定です。働く人からは、「平日では参加できないので土日に開催してほしい」という要望もあります。ECOアカデミーの開催の原点でもある「平日地域にいる主婦やプラチナ世代をつなぎたい」という思いから、もちろん平日開催も行います。内容もより幅広く、2カ月に1度ほどの頻度で様々なテーマについて考えていきたいと思っています。
また来年、あおばECOアカデミーでお会いしましょう。
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