普段見ることのできない世界には不思議がたくさんありますよ!(Text:持田智彦)
私たちがいつも見ている木は、幹と枝を広げています。そして幹の下の地面の中には木の重さの3割ほどある根っこがありますが、普段は見ることができないのでついつい忘れられがち。木が成長するために大切なのにあまり日の目を見ない、そんな縁の下の力持ち・根っこの役割や構造を見ていきましょう。
根っこは、大きく二つの役割を持っています。
まず一つ目は、水と栄養分(無機質)を吸い上げ地上部まで届ける役割です。木は生きていくのに必要な水を根から吸収していて、同時に水に溶けている栄養分を取り込んでいます。この役割は主に細い根っこが担っています。これを細根と呼びます。この細根の多くは数ヶ月で枯死し、枯死と同時に多くの細根が生まれています。かなりのコストを掛けていることから、細根の重要性が伺えます。
根っこの二つ目の役割は、木の幹を支えること(支持根)。幹の下に伸びる直根と横に伸びる側根に分けることができます。高く大きくなるためには、幹と相応に、根もしっかり張っていないと倒れてしまいます。これは細根が成長して幹のように茶色くなった(木化した)太い根が広がり絡み合い、樹体を支えています。
根っこの二つの役割は皆さんもご存知だと思います。
では根っこが地面の中でどの様な形をして樹体を支え、水を吸っているかご存知でしょうか。おそらく幹と枝が広がっているのをひっくり返した様な形だと想像している人も多いのではないでしょうか。でも実際はもっと地面に近く浅いところで根は広がっています。多くの木で根は通常、地下に1〜2mほど貫入しますが、根の量の80〜90%が地面の下30cmのところに分布しています(緑地でみられる植栽された木は直根を切られて栽培しているので、特に下への伸びが少ないと言えます)。
なぜ浅い部分に根っこが集中しているのかというと、水を吸うのには酸素が必要だからなのです。土の中は実は隙間がいっぱいあります。その隙間に空気があると、水に酸素が溶けます。木は水があるだけでは生きていけません。根っこが溜まり水の中に浸った状態だと、水の中に酸素がないので水を吸うことができず、根腐れが起こります。
また、根がある場所を人が多く歩くと、土が締め固められ、水も空気も通しにくくなり、木が弱ったり、枯れてしまったりします。
それに加え、根っこは柔らかくて伸びやすい場所に張っていく特徴があります。私たちの身近にある造成された緑地などは、硬い土壌の上に客土が入っている場合が多く、樹木にとってはあまりよい土壌でないと言えます。
さらに街路樹については、状況はもっと悪いと言えます。小さな植え桝の外では、歩道のアスファルト等の層と、その下の採石が転圧され固められている層の間を根っこが通っていることが多くあります。それより下は硬くて根っこが入っていけないのです。隙間に通る根が太ってくると、歩道のアスファルト等が持ち上げられ、歩道がボコボコになっている状態が歩道でよく観られるのはこのためです。
先ほど、根が絡み合うことで幹を支えていると言いましたが、ただ根っこ同士が絡んでいるのではなく、根と根が重なる部分では本当に根っこ同士がくっつき(癒合と言います)、水や栄養などが流れ合っています。この癒合は地上部の枝でもまれに起こりますが、根っこだと日常茶飯事です。しかも同じ樹種でも、違う個体の木の根同士が一緒になっている例もあります。
森の中などでは違う樹種でも癒合していることもあり、つながっている木の一方が切られても切り株だけが何年も生き続けている例もあるのです。地面の中で根っこは複雑なネットワークを作っています。実は様々な菌が根っこで共生していて、そこには木と菌が助け合っている話が関わってくるのですが、今回のテーマからは外れてしまうのでまたの機会としましょう。
根っこは普段見えないので忘れられがち、特に街の中で木はディスプレイの様に扱われ根っこは厳しい環境に置かれています。でも、木が弱る多くの原因は、根が弱っていることから来ています。根っこが元気だと木全体も元気になるそれを忘れないでほしいです。そして実は根っこは地面の中だけにしか出ないわけではなく、条件が合えば地上部にも根っこ(不定根)が出てくることがあります。それを利用して木を元気にすることができたりします。
根のつく言葉が多くありますが、昔の人は根っこが大事なのがわかっていたのでしょう。私たちも根本を大事にしていきたいですね。
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