以前の連載『葉っぱはなんで緑なの?新緑の葉っぱは本当は赤色?!』や『木陰は何で涼しいの?植物も暑いなかで頑張っています』でも葉っぱの色や役割について紹介しました。今回は葉っぱそのものを楽しんでみよう♪ ということで、さっそく私は自宅近くの公園へ行き、そこに植えられている樹木の葉っぱを集めてみました。
当たり前の話ですが、樹木の種類によって葉っぱの形や大きさはそれぞれ違います。集めて並べてみるとそれぞれの特徴が際立ち、普段の景色の中では同じような緑に映って見えていた葉っぱが、こんなにも個性にあふれているのだなあと気付くことができます。
上の写真の中で一番大きい葉っぱは、ユリノキの葉。
ユリノキの葉はその形が半纏(はんてん)に似ていることから、別名「ハンテンボク」とも呼ばれています。
また、写真中央の切れ込みが特徴的な葉っぱは、カクレミノという樹木の葉で、公園などでよく見かける樹木です。葉の形がその名の通り、「隠れ蓑(みの)」に似ていることが名前の由来になっています。
羽状複葉(うじょうふくよう)と呼ばれる形の葉っぱもユニークな形をしています。たくさんの小さな葉がついているように見えて、実はそれら全部で1枚の葉であるというもの。4月から5月に紫の花をつけることで知られるフジも羽状複葉の葉をもつ樹木です。
ユリノキやカクレミノのように大きな切れ込みのある葉(このような形の葉を分裂葉という。モミジなども分裂葉の代表的な例)や、羽状複葉(はじょうふくよう)は数ある葉っぱの中でも特に特徴的な形ですが、他にも形が長細いものや丸いもの、葉っぱのフチにギザギザがあるものやないもの、葉脈が細かく入っているものや平行に走っているもの、葉の表面に細かい毛が生えているものやツルツルの肌ざわりのもの……などがあり、本当に自然のデザインは緻密かつ多様で面白いなあと感じます。
……と、ここまで葉っぱの色んな形ついて紹介してきましたが、樹木には1年中葉をつける「常緑樹(じょうりょくじゅ)」と冬などの一定期間すべての葉を落とす「落葉樹(らくようじゅ)」という分類があるのをご存じでしょうか?
この常緑樹と落葉樹は、葉の特徴で見分けることができます。
常緑樹の葉は「色が濃く、表面につやがあり、厚く硬い」のが特徴で、それに比べ落葉樹は「色が薄く、つやが少なく、薄く柔らかい」といわれています(常緑樹の葉でイメージしやすいのは、ツバキやゲッケイジュといったところ。サクラやケヤキは落葉樹ですね)。
常緑樹は、常緑と言っても全く葉を落とさないわけではなく、葉の寿命が1年以上のものが多く(樹種によっては5-40年以上のものもあるそう!)、古くなった葉を順次落とすので、古い葉と新しく育ってきた葉が混在し、常緑に見えるのです。
そのため、常緑樹の葉は、寿命を長く持たせるため、落葉樹の葉に比べて葉を頑丈なつくりにして、冬の寒さや風雨などにも耐えられるようにしていると考えられています。
また、一見気付きませんが、実は一本の樹木でも光の強いところにある葉(陽葉)と光の弱いところにある葉(陰葉)では、葉の形に違いがあります!
どのような違いかと言うと、陽葉の表面積は小さく、厚みは厚くなり、陰葉の表面積は大きく、厚みは薄くなっています。
陽葉の厚みが厚いのは、強い日射(特に紫外線)による害から細胞を守るために葉の表面のクチクラ層という層が厚くなっていること、また、光合成を盛んにおこなう柵状組織が2層や3層になっているためだと考えられています(陰葉はクチクラ層が薄く、柵状組織も1層)。
また、陰葉の表面積が大きいのは、光の弱いところで光合成をおこなう効率を上げているためだと考えられます。しかし、表面積を大きくしすぎると葉の細胞の水分が失われやすくなるため、バランスをとって葉の大きさを決めていると考えられているそうです。
一つひとつの樹木の葉っぱが、何のためにそのような形になっているのか?
それは、まだ解明されていない部分が多く、情報量が少ないのが正直なところ。
しかしながら、それぞれの樹木がさまざまな自然環境に適応し生きていくために、葉っぱはその役割を最大限に生かしながら、長い時間をかけて形を多様に変化させてきたと考えられるのではないかと思います。
葉っぱ1枚とっても、色んな個性があって、一つとして同じものはない?!
まるで、私たち人間と同じ?!
……本当に植物も動物も本質的には同じなのだなあと思います。
環境に調和して、自ら形を変える植物……人間はまだまだ植物に見習うべき点がたくさんありそうですね。
この夏はぜひ、葉っぱの色んな違いを見つけてみてくださいね!
ミクロな視点では葉っぱの造形美に感心しつつ、マクロな視点で,葉っぱを生み出した自然環境に想いを馳せてみる……そうすると、また私たちにとっても新しい発見があるかもしれませんね。
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