緑区霧が丘の「カフェベーカリーぷかぷか」は、天然酵母を使用し具材にもこだわる美味しいパン屋さん。障がいのある方たちがスタッフとして働いています。
「いらっしゃいませ!」というスタッフの大きな挨拶や独特のペースに、私は行くたびに笑顔になってしまいます。
今年の春、彼らと地域の方が一緒にお芝居をつくるワークショップが始まると聞いて、「これはおもしろそうだ」と取材に出かけた私。ぷかぷか店長でこのワークショップを企画した高崎明さんの「中に入らないとおもしろさがわからないよ」というひと言で仲間に入り、そのおもしろさにすっかりはまり、ついにはみんなと一緒に舞台に立つことになったのです。
『森は生きている」という物語に沿って作品をつくっていくことは決まっていたものの、6月のワークショップ初日の時点ではどんなお芝居が完成するのか、まだ全くわかりませんでした。
みんなから呼ばれたいニックネームを胸に貼り、“せっちゃん”こと花崎攝さん(演劇デザインギルト・元劇団黒テントの役者さん)を始めとする進行役のプロの“演劇人”たちに導かれ、一人ずつ動きを加えながら自己紹介し、コミュニケーションゲームをしたり、グループで小さな作品をつくったりしました。
以降、1カ月に一度のペースでワークショップがおこなわれ、その中で少しずつ『森は生きている』の歌を覚えて歌ったり、セリフを考えたり、劇中に登場する人形をつくったりして、劇を組み立てていきました。回を重ねるごとに参加者同士も打ち解け、みんなの表情が柔らかくなっていきました。
ワークショップに参加する中で、ぷかぷかのスタッフさんとの交流は私にとっては新鮮なものでした。今までちゃんと接した機会はあまりなく、これが初めての「出会い」だったのかもしれません。
みんなの魅力的なこと! 子どものように素直で、「歌いましょう」と言われれば大きな声で楽しそうに歌います。「おでことおでこをくっつけて挨拶しよう」なんてワークショップのお題が出れば、躊躇している私のおでこめがけてゴッチーンとやってくる。
あるときメンバーの一人が、美輪明宏の『ヨイトマケの唄』をひとつも間違うことなく(しかも前奏と後奏付きで)披露してくれた時には、私はその場を動くことができず、目から涙があふれそうになりました。今まで聴いたどんな歌声とも違う感動がありました。
お芝居づくりの大事なタイミングで「おトイレ行ってきまーす!」なんていなくなってしまったり、終了時間が気になってずっと「4時に終わる?」と質問してきたり。なんだかおかしくて、ずっこけてしまうことも多々あるのですが、次第に自分がそれを自然に受け入れていくのを感じました。彼らと一緒のものづくりの場には「○○しなければならない」「○○であるべき」はありませんでした。
ある時、進行役の攝さんに話を聞いていた時、「障がいも個性ということ?」と質問した私は、「そんなきれいなことではなくて……。それも私たち目線ですよね」と言われて、頭をガツーンとたたかれたような衝撃を受けました。
攝さんは、「障がいの有無は関係なく一人ひとり個人として対応しています。時間がかかることも一つの条件以外の何ものでもないし、ここにいる人とでしかできないものをつくりたい」と言い、舞台監督の成沢富雄さんも障がいのある方たちとのお芝居づくりを経て、「普通は○○であるという価値観から自身のものづくりが変化し、みんなから出てくるものを待つようになった」と話してくれました。
この5カ月間の体験を経て、私はまだ、自分の中で動いているものをうまく言葉で表すことができずにいます。ただ、ぷかぷかさんたちとの出会いによってもたらされた確かな変化は感じます。
ぷかぷかの高崎さんは、お芝居というものづくりの中では彼らの魅力がとてもよくわかると言います。だからこそ地域の方と一緒にやりたい。そうすればぷかぷかがパン屋を通じて発信している「一緒に生きていったほうが楽しいよ」というメッセージが伝わるはずだと。
11月24日(月・祝)は、私たちの「みんなでワークショップ」チームの他にも、和太鼓やダンス、人形劇など様々なグループが参加します。障がいのある人たちがそれぞれの方法で表現する、「表現の市場」なのです。
私たちの歌劇『森は生きている』。実はちょっと不安です(笑)これからリハーサルを経て、また内容は変化するかもしれません。でもそれも「まあ、いいか」という気もしています。
配役時に最も人気で4人もいる少女役や、わがままで意地悪なのに明るくて優しそうに見えてしまう女王様と王様、個性あふれる神様など、魅力的な俳優陣が勢揃いしております(私ですか? それは見てのお楽しみということで)。
入場料は無料です。ぜひ楽しみに来てください。お待ちしています。
表現の市場
出演:あらじん(和太鼓)、STEP IN THE LIFE & せや福祉ホーム(ダンスパフォーマンス)、分教室はっぱ隊(ダンスパフォーマンス)、スタジオクーカ・ふもっふっ二代目(人形劇)、デフパペットシアターひとみ(人形劇)、みんなでワークショップ(歌劇)、ライアー演奏
日時:2014年11月24日(月・祝) 14:00-17:00(開場 13:30)
会場:緑区民文化センターホール みどりアートパーク(JR横浜線・東急田園都市線・東急こどもの国線 長津田駅北口徒歩4分)
入場料:無料
問合せ:NPO法人ぷかぷか TEL 045-453-8511
みどりアートパーク TEL 045-986-2441
ブログ: http://pukapuka-pan.xsrv.jp
主催:NPO法人ぷかぷか
共催:みどりアートパーク
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