山田恵里佳です。このたび、編集長にお願いして、連載をさせてもらうことになりました。生意気にも、テーマは「児童文学」です。
今私は児童書に関わるお仕事をしています。元々本好きで、保育士をしていたこともあり、独身時代にはよく絵本屋巡りをしていました。そんな私が今では、自分の子どもに毎日読み聞かせをし、また今の仕事を通じて出会う人たちから教えてもらい、知っているようで知らなかった児童文学の世界に出会い直しています。
正直に申し上げますと、私は児童文学を片っ端から読み込んできたような、生粋の児童文学愛読者ではありません。
まだまだ読んだことのない本ばかり。それなのに、物語を読むことについて、何か語ってみたい衝動に駆られているのです。
連載タイトルには、「物語は贈り物」とつけました。
というのも、物語を読み始めるきっかけは、いつでも「出会い」だからなのです。
子どもの頃に出会った面白くてたまらなかった本たちは、自分で選んだものではなく、私の父がその時の私を見て買ってきてくれた本でした。もしくは父自身が読んで面白かったという記憶のある本。
最近読んでいるファンタジーは、本好きの仲間に勧めてもらったものが多いです。大人になってからは講演会を聞く機会にも恵まれ、改めて読み直したものもあります。
決してドラマチックな出会いではありませんが、それでもその物語の世界にはまってしまうと、必ず「この本と出会えてよかった!」と、なにかしらの心の揺さぶり(感動)があるのです。
そう、私自身が物語によく励まされているのです。物語に勇気づけられているのです。
質のいい物語は、「大人も子どもも励ましてくれる」と、確信を持つようになりました。
そんなわけで、今の子どもたちにもそんな物語に出会ってほしいと心から思うようになりました。
物語を届けることは、大人が子どもにできる大事な仕事のひとつなのではないかと思っています。
ならば、大人にも物語の世界を楽しんでもらえれば、と!
ここで言うのもお恥ずかしい限りですが、私は幼少期に、かの有名な『エルマーのぼうけん』(ルース・スタイルス・ガネット著)シリーズに触れずに大きくなりました。そんな有名どころを知らぬとは! けしからん! ……と自分に対して思って学生時代に手に取ってみたものの、読めない、進まない。世界に入り込めなかったんですね。
エルマー三部作を読破したのは実はつい最近。息子の読み聞かせで、です。
おもしろかった! こんなにおもしろい冒険物語だったとは。
そう、冒険なんです。これぞ冒険。
ある日、エルマーが年をとった野良猫と出会います。家に連れて帰ると猫嫌いのお母さんはミルクもくれず、それどころか追い出してしまいます。でもエルマーは猫の世話をし、猫と仲良くなります。そして猫から、かわいそうなりゅうの話を聞きます。ついぞやエルマーはりゅうを助ける冒険に出ることに。
冒険って危険と隣り合わせのものでしょう(私はそういう冒険の経験はないですが)。エルマーはいくつものピンチを乗り越えて、りゅうを助けるんです。そのピンチを乗り越える様が面白い。どきどきするんです、ほんとに。
そしてりゅうと友達になって、2巻3巻ではりゅうと冒険するんです。
この作品も、「生きて帰りし物語」(子どもの読む物語の王道の構成)なのでしょう。
おそらく、息子が横でわくわく聞いていて、私も一緒に子ども心を取り戻せたのだと思うのです。息子は恐がりなので、どきどきしすぎて先に進めないこともありましたが! 何はともあれ、私はそうして息子と一緒にこの物語の世界に入っていけた。名作だとわかっていても、その世界に入り込めない。でもなにかきっかけがあれば、すっと入っていけることってありませんか。
大人になってから出会い直す「児童文学の世界」もなかなかいいものだと思うのです。
だからこそ、私は子育て中のお父さんお母さんにおすすめしたいのです。
今こそチャンス! 児童文学に触れて来られなかった方も、名作を楽しめるのは実は今なのかもしれません。
「読んでごらん」と渡すもよし、だけど読んであげていいと思うのです。「子ども」と呼ばれる愛おしい存在と一緒に物語の世界を楽しんでみませんか?
児童文学とは言いますけれど、児童のためのものだけではありません。大人にとっても申し分のない読みごたえがあるものばかり。
子どもへのクリスマスプレゼントに「物語」を送るのも粋かもしれませんよ。
いや、もしかしたらサンタクロースが子どもの姿を借りて、私たち大人へ贈り物を届けてくれるのかもしれませんね。子どもと物語を楽しむという、かけがえのない時間と共に。
次回からは私なりの物語との出会いを交えつつ、本の紹介ができたらいいな、と思っています。どうぞお付き合いくださいませ。
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