家具の良さって、どんなところにあると思いますか? 何の素材を使っているかだけではなく、その素材が空間になじんでいるか、持ち手の手ざわりや、素材の組み合わせの相性から滲み出るものなんだと私は思っています。
鷺沼駅から有馬中学入口交差点まで10分ほど歩くと、通り沿い左側にターコイズブルーの窓が印象的なお店に出会えます。ここが、ご夫婦で運営するオーダー家具店「ATTRACT」。自分の求めている空間に馴染み、かつ凛とした存在感を放つ良質な家具をオーダーすることができます。
店主の青森聡志さんは建築士であったお父様の影響を受け、小さなころから「さわったらダメ」と言われながらも、ドラフター(製図台)をいじり、小学校高学年の頃には、自室の模様替えのため、ベッドや家具の大きさに切った紙を並べて試行錯誤するのが好きだったと話します。
家具作家のもとに弟子入りし、3年間、自身も家具を作りました。その後、販売の経験も積みたいと家具店に転職。店長を務めた後、その時の同僚と新しい家具店の立ち上げを経験します。
鷺沼に「ATTRACT」を開いたのは2008年の3月。前に勤めていた家具店と商圏がかぶらないよう配慮しつつ、結婚後住んでいた市が尾に近いこのエリアを気に入っていたことから、沿線で場所を探し始めました。
お店を開くことになったこの場所を選んだ決め手は、店内から窓越しに見える景色にあります。目の前には、昭和時代に建てられた集合住宅。主張しすぎない、落ち着いた街並みを気に入ったそうです。「目の前がちかちかしていたら、ゆっくり家具を見られないですからね」と青森さん。
「ATTRACT」さんでは、壁面収納棚やテーブルなどのオーダー家具や、オリジナルチェアを販売しています。オーダー家具は実例写真を元にお客様の求めているものをヒアリングし、青森さんがデザインした後、青森さんが尊敬している以前の職場の先輩の工房で製作されます。
「ATTRACT」の家具の特徴は、素材の使い方にあります。例えば、無垢の一枚板のテーブル。一枚板のテーブルと聞くと古民家や和風の家でないと合わないのでは、と感じるかもしれません。お店に展示されていたテーブルはアメリカンブラックウォルナットの無垢の一枚板とスチールの脚を組み合わせています。スチールの脚が大きな無垢の板を軽やかに見せていて、生活の場ではないギャラリーのような空間でも、住宅のような落ち着いた場所でも、バランスよく馴染むと感じました。
青森さんは、総無垢の家具だから良い、という考え方ではなく、無垢の良さ、人工物の良さをミックスして、より良い性能・デザインになる家具が好きだと話します。木材のような有機質の素材が、スチールのような無機質の素材に温かみを与えることもあるし、逆に、無機質のものがシャープで繊細な造りを可能にしてくれることもあります。
オーダー家具以外にも販売しているオリジナル家具もあります。特に椅子は、何度も試作を重ねて作っているので、オーダーが難しい家具でもあります。子ども用のデスクセットはお祝いに買われる方も多い人気の商品です。
お店で販売もしている雑貨は、奥様の青森英子さんが担当しています。ギャラリーで展示の企画をしていた経験を生かして、お店に置かれた家具に合う食器や文具を選んでいるそうです。蚤の市などに顔を出し、気に入った作家さんがいたらお店に置かせてもらうよう交渉するのが仕事です。
お店では定期的に企画展を開催しており、2015年2月14日(土)〜3月8日(日)まで「清岡幸道さんの陶展」をおこないます。
実は、数年前から私も清岡幸道さんのポットを愛用しているのです。清岡さんは、滋賀県甲賀市信楽で作陶し、耐熱系の器に力を入れて制作しています。青森さんのお家ではフライパンを使っていて、「遠赤外線効果があり料理が美味しく仕上がり、フライパンを器としてそのまま食卓に並べることができるので、重宝する」そうです。企画展ではこのポットやフライパンのほか、グラタン皿、盛り鉢、取り皿などのアイテムを展示予定です。
どれも、シンプルで洗練されたシルエットで、陶器の持つ自然釉の温かみのある器。手にとってふれて、手に馴染む感覚を味わっていただきたいです。
ご夫婦で得意分野を生かし、お店を作り上げている様がとても印象的でした。企画展にも、ぜひ足を運んでみてください。
ATTRACT
〒216-0003
神奈川県川崎市宮前区有馬5-18-22 1F
TEL 044-281-5297 / FAX 044-281-5298
open / 11:00 – 19:00 定休日/水曜日
駐車場2台あり
生活マガジン
「森ノオト」
月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる
森のなかま募集中!