ファブラボのFabとは、製作、加工を意味するFabricationの略です。マサチューセッツ工科大学(MIT)が世界各地に設立したのがはじまりで、近ごろ日本でも各地に広まっている、開かれた「製作実験工房」。デジタルとアナログの工作機械が揃っているため、その使い方を学べば特別な知識がなくても誰もが頭に思い描いたものを、ほぼなんでもつくれる場です。
大量生産、商業主義では埋もれてしまう、それを必要とするひとりのためのものづくりが可能なため、ユニークな発明品がたくさんうまれています。また、単なる愉しい工作教室ではなく、地域の課題を解決するといった、実用を目的とした利用も盛んで、コンピューターでインターネットにつながり、世界中の人とそのアイディアを共有し発展させていくことができます。
10歳前後の小さなこどもだとか、貧困に悩む集落の人々が、ファブラボがあることで自らつくることに参加し、暮らしを変えている事例はたくさんあって、一つの企業や国の垣根を越え、その場にアクセスする人で、より良いものをつくりだすムーブメント、ものづくり革命が始まっているんですね。今後は、ファブラボに置かれた機械を使って、さらに新しい製造機械をつくるような動きも盛んになってくるのではないかと期待されています。
新しい職業が生まれる代わりに、今までの仕事が成り立たなくなる人も現れるので、良いことばかりではないけれど、誰もが発明家になれる、製作者になれる、という流れは止められないでしょう。
わたしは、ファブラボという言葉をちょっと前から耳にしてはいたものの、上に書いたような情報は全く知らず、逆に電気を大量に使う施設というイメージの方が先に強くありました。倉庫兼アトリエのような場所はいつか欲しいと個人的に思っていましたが、森ノエレキラボの活動を通じて、自然エネルギーを利用して、自然エネルギー関連の開発をするラボがあったら素敵だなあと妄想するようになり、とにかく実物を見てみようと幾つかの施設をたずねました。
新横浜駅から歩いて5分ほど、横浜アリーナの目の前にある、リコー内の「つくるーむ新横浜」は2015年の春にオープン。MakerFaireでその存在を知って見学させてもらったのですが、高層ビルの中ということもあり、綺麗で豪華だったので驚きました。
その前に、初めて見学させてもらったのがfablab関内で、そこは、さくらWORKSというコワーキングスペースの中にあるため、共有オフィスの隅の方に、機材がひっそり並んでいる奥ゆかしい雰囲気だったからです。
鎌倉や目黒、秋葉原、渋谷など有名なところにはまだ足を運んでいないのですが、調べてみると、小田急線沿線の明治大学や、玉川大学、少し遠いけれど厚木にある神奈川工科大学にも、ファブラボスペースがあるようで、いずれ取材も兼ねて訪ねてみたいと思っています。また少人数向けの理科実験教室や科学教室を運営している方々が、ご近所にちらほらいることもわかってきました。省エネ、創エネといった視点ではなく、電気そのもののしくみをよく知って、楽しむというスタンスから地域を見てみると、今までとは違う景色が見えてきました。
森ノエレキラボの今までの活動については、まどか編集長の記事を読んでいただくとして、そもそも、わたしが独立型のソーラーシステムをつくって広めたいと思ったのは、電気を作って使える人を増やして地域全体の電気消費量を減らすことと同時に、風景から余分な電線を減らしたい、という想いがあったからでした。
だからといって単純に高圧電線に囲まれているのは危険だから取り除こうというのではなく、電気に限らずエネルギーをもっと効率的に使って、それぞれに心地よい家やまちにしていくには、どうしたらいいのか、様々な角度から考えたいし、そんな気持ちを底の方に持つ人々が日々集える場所をつくりたい、というのがfablabに惹かれた本当の理由なのかもしれません。
もうしばらくファブラボ探訪を続けながら、森ノエレキラボのあるべき姿を模索していきたいと思います。
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