地域を耕す母さんVol.3 – Sharing Caring Culture 三坂慶子さん
地域の中で、外国人の方の居場所をつくりたい。日常の場で、日本人も外国人も分け隔てなく交わり合える、そんな文化をつくれたら……。アートフォーラムあざみ野でアートを通じた多文化共生プログラムを運営している「Sharing Caring Culture」の三坂慶子さんと語り合いました。

皆さん、自分の近所にどれくらい、外国人のお友達がいますか?

 

特に、小さなお子さんを連れたお母さんの顔を、どれくらい、具体的に、思い浮かべられるでしょうか。

 

都筑区に暮らす三坂慶子さんは、2014年6月より、地域に住む外国人のお母さんとお子さんが一緒に、アート体験を通じて日本人の親子と交流できるように、「Sharing Caring Culture」というプログラムを開催しています。洗濯バサミとポンポンで染み絵をつくったり、親子パステル講座や、フィリピン家庭料理講座など、ともに手を動かし同じ経験をすることで、外国人の親子が言葉の壁を越えて地域で交流できるようにと、2カ月に1回、アートフォーラムあざみ野で活動を続けています。

アートフォーラムあざみ野「子どもの部屋」で毎月開催している親子交流会の様子(写真提供:SCC)

出産前は、川崎市の小学校教師だった三坂さん。帰国子女や在留外国人の多い小学校に赴任していた時、外国からやってきたお母さんが、日本人コミュニティにうまく馴染めていない現状に気がついたといいます。

 

「子どもは学校で地域コミュニティにふれることはできているけれど、仕事をしていない外国人のお母さんたちにとっては、日本は住みにくい国かもしれないと感じました。日本語が得意でない彼女たちは、お父さんに頼らなければ買いものをするのも困難な状況でした」

 

三坂さんは4年前の出産を機に退職し、子育てしているなか、お子さんと一緒に近所の公園に行くと、外国人のお母さんがポツポツといることに気づきます。アメリカで暮らしていた経験のある三坂さんは、得意の英語を生かして、彼女たちに声をかけてみました。

 

「外国人のお母さんたちは、地域コミュニティの中で友達ができにくい環境にある。それぞれ、母国でつちかってきた文化、習慣があって、私たちがそれに学ぶこともできるし、逆に彼女たちが日本独自の恵方巻きや節句、お弁当文化を知りたいというニーズがあることがわかりました」(三坂さん)

 

まずは、身の回りにいる外国人のお母さんたちが、地域コミュニティの中で言葉の壁を超えて、日本人親子と交流できる機会をつくろう。そう思い立ち、「Sharing Caring Culture」を立ち上げ、この1年間で、3種類の講座を運営してきました。

 

毎月1回開催している多文化親子交流会は、アートフォーラムあざみ野の「子どもの部屋」で、親子で手づくりおもちゃなどをつくる活動をしています。

 

また、隔月で、多文化カルチャー講座をおこなっており、こちらは親子パステル講座や、外国人のお母さんに母国の料理を学ぶ料理講座など、アートや国際色豊かなプログラムです。

 

そして、外国人お母さんが発案し、独自で運営している南米発のエクササイズ・ズンバのクラス。今では、フィリピン、中国、韓国のお母さんたちが、定期的にズンバでエクササイズを楽しんでいるそうです。

 

いずれも、手を動かし、カラダを動かし、言語が異なっても一緒に楽しめるプログラムを通じて時間を共有することで、お互いを理解することを目的にしています。メインターゲットは「青葉区や都筑区に暮らす、外国人のお母さん」たちです。

フィリピン人のお母さんが中心になって運営しているコロンビア発のエクササイズプログラム「ズンバ」(写真提供:SCC)

Sharing Caring Cultureを運営して1年、三坂さんは今、一つの壁に突き当たっています。毎月の交流会には10組ほどの親子が集まり、韓国、タイ、ベトナム、カナダ出身のお母さんなど、リピーターもついていますが、そもそも、このプログラムに参加してほしい外国人のお母さんに、情報が行き届いているのだろうかと。三坂さん自身の経験から、この事業にはニーズがあるはずだと確信はしていても、外国人のお母さんの参加が思うようにのびていないそうです。

 

もしかしたら、チラシを手にとることのできない、あまり家から出ないお母さんにこそ、「ここに、あなたの居場所があるんだよ。あなたと一緒に交流したい人が待っているよ」と伝えたい。そのために、三坂さんは今、青葉区や都筑区など、各地の国際交流拠点に出向き、3カ国語に翻訳したSharing Caring Cultureのチラシを配ったり、地域でのさまざまな交流会に参加したり、子育てグループに顔を出しては自身の活動をPRするなどして、周知を広げようとしています。

アートを通じた国際交流プログラムは、言葉の壁を越えて日本人も外国人も一緒に楽しめる(写真提供:SCC)

三坂さんはこれから、Sharing Caring Cultureの事業の軸の一つを「料理」にできないかと考えています。日本に暮らす外国人のお母さんが、母国の料理をつくり、それを英語で通訳して伝えること。これまで、中国の方に皮からつくる本格的な餃子のつくり方を教えてもらったり、タイ人による本場のグリーンカレーの講座や、フィリピンのお母さんによる海老のココナッツ炒めなどを教えてもらい、いずれも大好評だったそうです。外国の家庭料理を学べる機会は、日本人のお母さんにもニーズがありそうですし、なにより一緒に調理をして「同じ釜の飯」を食べることで、家庭的な交流が生まれます。

 

「それから、横浜ならば小松菜など、日本の野菜を外国の方に使ってもらうことで、私たちには気づかないユニークな調理法をすることで、驚きや発見を共有するのも楽しそう」と、料理を通じた交流のアイデアは、次々と広がります。

左がSharing Caring Culture代表の三坂慶子さん。右が三坂さんを支える坂本真宜(まき)さん

三坂さんから、森ノオトに相談があった時に、私自身が森ノオトの記事を見返してみると、「国際交流」や「多文化共生」のカテゴリがなくて、日本語を母国語としない方々を読者対象としてこなかったことに、森ノオトの情報を届けきれていないことに、改めて気がつきました。

 

正直なところ、森ノオトを多言語に翻訳して発信することは、現時点では難しいのですが、例えば、この記事だけでも英訳して、近所で見かけるあの外国人のお母さんに、この記事をプリントして届けられないだろうか。Sharing Caring Cultureのチラシと一緒に。

 

インターネットを通じた情報発信は、直接人に会わなくても、不特定多数に情報を届けることができます。しかし、本当に必要な人に情報を届けたい、伝えたいと思ったら、実は面と向かって、直接会いに行く、手渡すといった、顔の見えるコミュニケーションが何より大切なのだと思います。

 

どうか、三坂さんの思いと活動が、それを必要としている人に、届きますように。そして、この記事を読んだ読者の方が、ピンときたら、その方に、Sharing Caring Cultureの活動を届けてくださいますようにと、願います。

Information

Sharing Caring Culture

http://sccjapan.wix.com/sccjapan

次回の親子交流会

2015年9月24日(木)10:00-11:30

場所:アートフォーラムあざみ野「子どもの部屋」

参加費:親子一組500円

次回の多文化カルチャー講座

「親子パステル講座 La Chula Pastel」

2015年9月25日(金)10:30-11:30

場所:アートフォーラムあざみ野 会議室2

講師:Masako Nakane

参加費:親子一組1,500円(額つき)

次回のズンバ

2015年9月30日(金)14:00-15:00

場所:アートフォーラムあざみ野 3階スタジオ

参加費:500円(お子様同伴可能)

持ち物:室内履き、飲み物、タオル

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この記事を書いた人
北原まどか理事長/ローカルメディアデザイン事業部マネージャー/ライター
幼少期より取材や人をつなげるのが好きという根っからの編集者。ローカルニュース記者、環境ライターを経て2009年11月に森ノオトを創刊、3.11を機に持続可能なエネルギー社会をつくることに目覚め、エコで社会を変えるために2013年、NPO法人森ノオトを設立、理事長に。山形出身、2女の母。
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