この映画の主人公、フィンランドの首都ヘルシンキに住む26歳のペトリは、失恋を機に、自分の暮らしがいかにモノに支配されていたかに気づきます。
モノであふれかえった部屋にうんざりして全てを捨てて旅に出る? かと思いきや、部屋中の荷物をすべて倉庫に預けて、1日に1個だけ必要なモノを持ってくるという実験をはじめます。それを1年間続けること、食べ物以外はモノも買わないというルールをつくって、ほんとうに裸一貫からはじめる様子をカメラに記録したのです。
日本でも片づけブームが起こっていますが、それらの多くが女性発の提案であるのに対し、この映画では、若い男の子が始めたのが面白いところ。モノをある基準に照らして減らしていくのではなく、まず全てなくしてしまうという発想が新しい。ジャンルでなく、個数で考える点も新鮮でした。
また、以前森ノオトでも上映した『地球にやさしい生活』で、主人公が最初から、環境問題やエネルギー問題に目を向けて、地球にノーインパクトな暮らしをするんだと、頭から実験に入っていったのと違い、とても個人的な理由で、感じるままに実験を始めたところも大きな特徴です。
ペトリの真面目さ、ダメさに笑ったり、戸惑ったり、彼をとりまく家族や友人になった気分で楽しみながら、自分とモノのかかわりを深く考えさせられる映画です。
11/8(日)の対話ワークショップでは、配給元のkinologueの森下詩子さんがファシリテーターとなって、90分にわたって参加者と意見を交わすことができるようです。定員は20名。場所は川崎市アートセンターです。上映が13:50からでワークショップ終了が17:00頃。申し込み方法詳細はこの記事下のinformationをみてください。映画鑑賞のみも可能です。映画祭のその他の上映作品も魅力的なので、興味のある方はぜひ足を運んでみてくださいね。
ところで、フィンランドといえば、ムーミン、サンタクロース、白夜、マリメッコ、福祉政策が手厚いらしい……など、かなり断片的にしか知らないことに気がついた私。北欧といえば自然エネルギー先進国でもあり、エネルギー事情がどうなっているのか調べてみました。
すると、ノルウェーやデンマークなどのエネルギーの輸出ができる国とはかなり違うことが分かってきました。日本と似て資源が少ない国だと言われています。原子力発電所も4基あり全電源の約3割(さらに建設中のものもあるとか)、水力約19%、バイオマス16%、風力1%で再生可能エネルギー全体だと3割以上、石炭が約15%、天然ガス約10%、ほかは石油、廃棄物や汚泥も燃料として利用されています。
そして、『100,000年後の安全』という映画で話題となった、世界初の高レベル放射性廃棄物の最終処分場「オンカロ」も、フィンラン北部に建設中だったことを思い出しました(ちなみに映画自体は観ていません)。
オンカロは、硬い安定した岩盤上の地中深くに掘られた長いトンネル。2020年以降に稼働予定で約100年後、容量がいっぱいになったら入り口を塞ぎ、誰も立ち入らないようにして保管しておく場所です。放射性廃棄物の環境や人体に及ぼす影響が完全に無くなるには10万年という途方もない月日がかかります。そして、その間に何が起こるか、実際には誰にも予測できません。
エネルギーの観点から見ても、なかなか興味深い国です。
ちなみに、面積は約34万?、人口は約540万人。38万?に1億2千万人以上が暮らし、横浜市だけで人口360万人を超える日本に比べて、人口が少ないですね! 広々、ゆったり暮らしていることがわかります。
経済的には不況が続いているようですが、基本的に福祉政策が手厚いのは本当で、中でも、映画にも出てくる「赤ちゃんセット」はとてもユニークなサービスです。
生まれたばかりの赤ちゃんに必要なモノ、肌着、衣服、おむつ、くつした、おくるみ、ブラシ、おもちゃ、などなど総数約50点が、そのまま赤ちゃんのベッドにもなる箱に詰められたギフトセットで、希望する家庭に国から支給されるしくみになっています。
最近は日本でも取り入れる自治体が出てきているそうで、森ノオトセレクトの赤ちゃんセットがあったら楽しいのではないかと想像しました。
家族が増えれば、必要なモノも変わってきます。モノとの関係は生きている間ずっと続くんですね。私は映画をきっかけに、フィンランド事情に詳しくなりました。こうした知識は目に見えるモノよりも自分を潤してくれるなあと感じています。
『365日のシンプルライフ』鑑賞+ワークショップ
日時:2015年11月8日(日)13:50?17:00
会場:川崎市アートセンター
定員:20名
料金:映画鑑賞+ワークショップセット2,000円
持ち物:「大切なモノ」
申込み:映画祭事務局宛にメールかFAXで事前申込みが必要です。
氏名(フリガナ)、性別、年代、メールアドレスかFAX番号、
当日連絡がつく電話番号、ワークショップに参加したい理由を簡単に
書いて送ってください。(10月25日締切)
宛先:メール: cinema-uma@siff.jp? FAX: 044-953-7685
主催:NPO法人KAWASAKIアーツ・映画祭事務局
044-953-7652・http://www.siff.jp
生活マガジン
「森ノオト」
月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる
森のなかま募集中!