(text,photo:牧志保)
東急田園都市線・市が尾駅の東口を出て、なだらかな坂道を登った静かな住宅街の中に「おかんDining(ダイニング)」はあります。おかんダイニングはあおばを食べる収穫祭などでもおなじみの、ふわふわ米粉のシフォンケーキを作っている「さくら工房」の直売所です。私がおかんダイニングを訪れた日、店の前の花壇は白いマーガレットが満開をむかえ、店先には周辺で作られた新鮮な農作物が並んでいました。店の扉を開けると、あたたかい笑顔でおかんダイニングの櫻井友子さんが出迎えてくれました。
櫻井さんは子育てをしながら仕事を続けてきた、働くお母さんです。28年前に仕事に就く際「どんなに忙しい時でも子どもの食事は自分で作る」と決意し、ずっとその意志を貫いてきました。「自分でそんな決めごとをつくってしまったから大変だったわよ」と櫻井さんは笑いながら言いますが、仕事をしながら毎日欠かさず子どもの食事をつくるのは、想像以上に大変なことだったと思います。
女性も社会にでてキャリアを積むことが大切だと考える櫻井さん。実際にご自身も経験してきたので、働きながら子育てをする大変さ、働くお母さんの気持ちがよく分かると櫻井さんは言います。忙しいお母さんをヘルプしたい。それでいて家庭の食卓をゆたかなものにしたいという強い思いから、簡単に作れて、かつ食事を作るお母さんが罪悪感を持つことのないような商品を多く開発しています。
さくら色の店内には、櫻井さんの思いを形にしたバラエティ豊かな商品が並んでいます。「鶏の胸肉は疲労回復にとってもいいのよ。ぜひ食べてね」「はちみつをお湯でといてレモンを浮かべて飲むといいわよ。疲れているときには蕎麦のはちみつがお勧めね」と、一つひとつ丁寧に商品の説明をしてくれる櫻井さんの話を聞いていると、何だか自分の母親からアドバイスを受けているようなあたたかい気持ちになりました。
おかんダイニングの商品は出来合いのおかずではなく、お母さんが家庭で食事を作る手助けをしてくれるものばかりです。「私が控えめな味まで作っておくから、あとはそれぞれの家庭のお母さんの味に仕上げてね」という櫻井さんのメッセージがすべての商品に込められています。
私は櫻井さんのアドバイスを参考にしながら、おかんダイニングの商品を使って夕食を作ってみました。
メニューは豚肉の生姜焼き、ほうれん草のおひたし、南国風おこわ、たっぷり野菜の味噌汁です。
豚の生姜焼きには「生姜チップ」を使いました。生姜チップはそのまま食べても美味しいのでお料理しながらボリボリ。体がポカポカしてきます。ほうれん草のおひたしは、ほうれん草をゆでて「昆布じゃこ」を加えるだけ。これは使える! 昆布のうまみが出て他に何も加えなくてもしっかり味がついています。南国風おこわは具材を容器にいれてレンジでチンするだけ。鶏肉、ドライフルーツがたくさん入っていて見た目も美しく、食欲を誘ういい匂いです。たっぷり野菜の味噌汁には味噌をといた出汁に「乾燥野菜」を加えました。キャベツ、ニンジン、小松菜、大根と4種類もの野菜が入っています。野菜は歯ごたえがあって食べがいがあります。
さくら工房の食材を使って、4品の夕食があっという間にできました。とても簡単にできたにもかかわらず、手抜きをしたという感覚はゼロ。どれもとびきり美味しく、いつもとは違う味に食卓の会話も弾み楽しい夕食になりました。
そして私のお気に入りがドライフルーツとココナッツチャンク、生姜チップです。美味しくて食べ始めたら止まりません。どれも体にいいものだからと気兼ねなく食べられます、ついつい食べ過ぎてしまうのが難点……。
この3つを使ってグラノーラを作りました。生姜チップが隠し味です。とても美味しくできました。
おかんダイニングの商品は、忙しくて料理が億劫になってしまいがちだった私に、料理は楽しい! という感覚を呼び覚ましてくれました。
そして、料理の時間が短縮されることで、気持ちに余裕が生まれました。「ラクに楽しく」をモットーに家事や育児に取り組む私には、これからも頼りになる助っ人となりそうです。我が家の食卓には櫻井さんの思いが届きました。
おかんダイニングの商品は全て「プラスフード(補食)」だと櫻井さんは言います。家庭に常備しておいて、毎日の食事で摂りきれない栄養素を補うために、普段の食事にプラスする。そして災害時には非常食としても役立つというコンセプトで作られています。
おいしい乾パンをテーマに作られた「ビスキー」は、東日本大震災時に避難所に差し入れしたナッツやドライフルーツを、お年寄りが固くて食べられなかったことから、コーヒーやお茶に浸し柔らかくして食べることができるものをと開発されたそうです。ビスキーのバリエーションをこれから増やして、最終的に60種類くらい作りたいと櫻井さんは言います。
おかんダイニングは仕事に家事に疲れた時、足を運びたくなるような場所でした。一人ひとりに元気になる薬を調剤してくれる薬局のような、話を聞いてもらう駆け込み寺のような、母親から料理のアドバイスを受けるほっと出来る実家のような、そんな場所でした。
「ゼロから自分で商品を開発している今がとっても楽しい。どんどん新しいアイディアが浮かぶのよ」と櫻井さんは楽しそうに語ってくれました。これからおかんダイニングからどのような商品が生まれるのか楽しみです。
おかんダイニング
住所:神奈川県横浜市青葉区市ヶ尾町1161‐11サンシャインヒルズA
定休日:毎週日曜日、祝日
営業時間:10:00-18:00
TEL:045‐482‐9848
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