15歳と11歳のお子さんの母であり、布物作家としても活動中の園田明子さん(37歳)。短大と専門学校で服飾・デザインを学び、結婚と出産を経て、2009年に「sonor」の名で活動をスタートさせました。
活動の芽となったのは、友人たちから頼まれた巻きスカートや布バッグを作り、喜んでもらった体験だそう。
「やはり喜んでもらえることはありがたいことですよね。その中で自分の役割が見つかっていったというか……。実は、モノ作りとは関係ない仕事を探した時期もあったんです。でもなぜか全然仕事が決まらなくて(笑)。それを残念に思ったこともありました。でも振り返ってみれば、すべては今の自分へつながる道を歩んでいたのかなって」
布物からスタートした園田さんが5年前に出会ったのが、国産のピッグスキン(豚革)。問屋さんでサンプルを見た時、その微妙なニュアンスの色合いに目が引きつけられたといいます。東京都墨田区の山口産業(株)で作られたその革は100%植物性のタンニンなめしで染められ、厳しい基準をクリアした「エコレザー認定」を受けていることも、自身のライフスタイルに通じ合うものを感じた園田さん。牛革にくらべて脂分が少なく、布に比較的近い扱いができるやわらかさを持ったピッグスキンを使うことに決め、足に優しくフィットするルームシューズやしなやかな質感を生かしたトートバッグなど、魅力的な作品を生み出してきました。
市場に出回っている革製品の多くは金属製のクロムなめしと呼ばれるもので、色がしっかりのり、色ぶれも少なく、品質の安定感があるといいます。それに比べて100%植物性のタンニンなめしで作られたピッグスキンは……。
「色ぶれもありますし、傷も多いですし、同じ染料でもロットによって色が違うこともあります。でも、人に置きかえてみると肌の色に違いがあるように、豚にだって季節によってはガサガサしたり、脂がのっている時期があるのは当たり前のこと。季節の変わり目の革が安定しない時期は染まりが悪く、とても難しいと言われています。それは欠点なのかもしれませんが、本来、環境に配慮したものはこういうことがあるというのを、自分のモノ作りを通して伝えられたらいいなという想いもあるんです」
素材が作られる過程、また、それを選んだ園田さんの想いを知ることで、作品の魅力がより深く感じられてきました。
展示会とはまた別に、オーダーメイドでの注文にも応えてくれる園田さん。お客さんの要望を聞き出すときに大切にしていることは……
「自分がモノを買うときは、きちんと納得した状態で買いたいというのが昔からあって。自分がそう思うからこそ、お客さんにもそういう気持ちになってもらいたいですね。例えばカバンの持ち手がもうちょっと長ければいいなとか。細かいことですが、気に入って使っていただけるのが一番だと思うので」
使い勝手はもちろん、色もできるだけお客さんのイメージするものを聞き出す工夫もしているそうです。「特に紺色は結構幅広い色で、明るい紺なのか、濃紺なのか、さらに黒に近いような紺が好きなのか、それぞれ好みが分かれるんです。色って説明しにくい部分があるので、具体的な例を出しながらお聞きしますね」
私も3年前にリネンのスカートをオーダーした時、「濃い茶色が好きなんです」とお伝えすると、その濃さの度合いについて細かく確認してくれたことを思い出しました。お話するうちに自分でも気づかなかった好みやこだわりが浮き彫りになり、できあがりを待つワクワク感が一層増していったように思います。これはオーダーメイドならではの醍醐味。自然と愛着が湧き、大切に使いたくなるのは当然かもしれません。
展示会でもオーダーメイドでも、お客さんと話す時間を大切にしている園田さん。「お話しながら気づくことはたくさんありますね。お客さまの意見が次のアイデアへとつながることもありますよ。お客さんや、私と同じように作家活動をされている方など、モノ作りを通して人と出会うことが好きなんです。これからもそのつながりを求め続けたいですね」
取材の後、ひそかに欲しいと思っていたピッグスキンのルームシューズを試着したところ、足と一体になったような履き心地の良さに感動。即購入してしまいました。これからも人との濃いつながりを通して、暮らしに寄り添う作品を作り続ける園田さんから目が離せません。
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