初めて訪れた泉区。立派な垣根、広い庭、そして日本家屋が立ち並ぶ、昔ながらの集落が点在しています。その一角に横山勝太(しょうた)さん(26)のお住まいがありました。待ち合わせのために畑からもどった彼の手には、白、紫、黄色、オレンジ、赤と緑のゼブラ模様など珍しい色のトマト。春の日差しを浴びて、まるで宝石のように輝いています。
勝太さんは10か所、計2haの畑をもち、トマトをはじめブロッコリー、ピーマン、ナスなど20品目の野菜を栽培しています。
集落の狭い路地をぬけ、歩いて5分。案内していただいたのはトマトを栽培しているハウスです。同じように見えるトマトですが1畝に約3品種、全体で15品種を栽培しています。
「こだわりは色。トマトは赤という人が多いけど、いろんな色があるんです。面白いわね、珍しいわと驚くお客さんの顔が好き。だから紫や白などの品種を探して少しずつ色を増やしてきました」と勝太さん。
ハウスのトマトは天井に到達しそうなほど。これ以上大きく育ったらどうやって収穫するんでしょう? 余計な心配にも勝太さんは丁寧に答えてくれます。
「支柱より大きく育った茎は、ひねる程度に折り曲げます。折り曲げた茎は下へと伸びていくから(収穫は)大丈夫です」。
勝太さんは子どもの頃、友人たちが公園に行くのと同じように、畑に行って遊んでいました。畑の野菜をつまんだり、周囲を走り回ったり、常に農業は身近でした。高校生になる頃には農業をしようと心に決め、農業大学校にすすみます。
「大学校時代、フルティカ(トマトの中玉品種)を口にして、小学校の頃から嫌いだったトマトがいっぺんに大好きになりました。友人から“トマトマン”と呼ばれるほど、こればかり栽培していたんです。今でもトマト栽培には力を入れていますし、フルティカには愛着を感じますね(笑)」
勝太さんが語るエピソードは、素直でどこまでもまっすぐな人柄がにじみ出ています。
料理人の椿直樹さんとの出会いは3年前。農協青年部の先輩から椿さんのお店に連れていってもらったことがきっかけでした。
「今まで販売だけだったけど、椿さんと出会って、料理を通してさらに(トマトの彩りを)広げていけるかな? と思っています」と勝太さん。
椿さんのリクエストで、勝太さんはその場でミニトマトを収穫してくれました。
人一人がやっと通れる細い通路で、大きな体躯をしなやかに動かし、するするとトマトを採取。プロだなあ! とみとれてしまう無駄のない動きでした。
勝太さんの収穫作業を優しいまなざしで見守る椿さん。
「若いよね! 有名なベーカリーから地元野菜の農家を紹介してほしいと言われて、迷わず勝太くんを指名したんだ。大きな会社とのやりとりの一つひとつに刺激を受けて、成長していく感じがしてね。若いから大丈夫かなあと心配したんだけど、彼は相手先との話をちゃんとまとめてきたからね。これからどんな成長をするんだろう? 一緒に何ができるんだろうって楽しみなんだ」
「僕が作ったトマトを小学生に見せたことがあります。トマトは赤しかないと思っていた子たちから、歓声があがった。驚いてくれる顔が好きなんです。だからトマトだけじゃなくてナスやブロッコリーもいろんな色を育てています。お客さんが、“一度食べておいしかったからまた買いに来たよ”、売り切れた野菜を見て“今度はもっと早く買いにくるわ”と言ってくれる。それがうれしい」
勝太さんが度々口にする色へのこだわりは、お客さんとのふれあいを通して生まれたものでした。野菜と出会う時のお客さんの表情(顔)を意識して野菜づくりをする彼の姿は、いたずらっ子のようにもエンターテイナーのようにも感じました。
「将来は野菜の博物館みたいな。カラフルで(みんなが思うのとは)違った色のある、珍しい野菜を栽培していきたい。お客さんに食べて楽しんでもらうのはもちろん、見て楽しんでもらえる農家になりたい」
勝太さんの言葉には、将来像をたしかに実現していくだけの力がこもっていました。「濱の料理人」代表の椿直樹さんと巡る農家シリーズ、第5弾は横浜市泉区和泉町の横山勝太(しょうた)さん(26)です。カラフルで宝石のようなトマトを栽培する勝太さん。並々ならぬ「色」へのこだわりについて聞いてきました。
※終了しました
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