宜美さんは、トマトの品種「サンロード」の味わいにほれこみ、このおいしさをもっと世に広めたいと日々奮闘しています。「農業は魅力ある職業」と語る若き農業経営者からお話をうかがってきました。
ベージュのワークキャップに明るいピンクのチェックシャツ、ゆったりとした紺地のパンツで現れたのは、横山宜美(よしみ)さん(31)。
「おしゃれですねぇ」と同行の女性が声をかけると「そうですか?」と照れる宜美さん。
z農業をする前はウェブデザインの仕事をしていたこともあり、ファッションにこだわりを感じます。
私たちが訪れたのは、一面にトマトが広がるハウス。人の背丈以上に伸びたトマトはさながらジャングルのようです。
前回、横山勝太さんの取材で、十数品種のトマトを栽培していると聞いていただけに、宜美さんに品種の数についてうかがうと「サンロード一種類だけ」とのこと。
その意外な答えに理由をたずねると、
「味が好きだからかな。少し青くさくて酸味とうまみがある。ちょっとくせになる昔ながらのトマトの味わい。昔からある品種だから作りにくいけど、そこにやりがいがある」とサンロードへの愛を語ります。
この「サンロード」という聞き慣れない品種は、トマトで有名な「桃太郎」より歴史は古く、作りやすく改良されていないので病気になりやすく栽培が難しいといいます。
サンロードを健康においしく育てるためには、まず土づくりから。土中の微生物の活性化させるため、宜美さんは自家製の籾殻たい肥を使うなどして、工夫を凝らしています。
知名度の低いサンロードをもっと多くの人に知ってもらいたいと、宜美さんは横浜市の地産地消ビジネス創出支援事業を利用してシャーベットを作りました。そのままの味わいを残したくて、原材料の70%までサンロードを加えました。トマトならではの味わいが魅力です。
農家の長男に生まれた宜美さんは、
「小さい頃から洗脳されて(笑)、農家になるって思っていました。農家はいろんな人に出会えてビジネスチャンスもある、魅力ある職業」ときっぱり。
横浜の地産地消を進める「濱の料理人」のメンバーである宜美さんは、料理人、市場関係者、管理栄養士など異業種の方々と触れ合うことで、自分の職業を見つめ直すいいきっかけになったと言います。
「一流を極める人は見ている景色がちがうなって思う。小さなことにイライラせず、もっと上(先)を見ていると感じました。僕もその景色を見てみたい」と宜美さん。
今年はお父さまの代からの直売所をリニューアルし、「まごころふぁーむ」をオープンしました。家族で栽培する新鮮な野菜はもちろん、宜美さんが厳選した横浜市内の加工品を販売し、地元の方に親しまれています。
宜美さんの目標は神奈川県内の、とあるトマト農園。人を雇って栽培し、生食だけなく多数の加工品も作り、大規模経営しているところで、そこまで規模を大きくするには30年かかったそうです。
「だけど、僕は40歳までに、まごころふぁーむをあの農園のようにしたい」
今年、畑を手伝ってくれる人を雇う予定の宜美さん。目標に一歩近づきました。
そして、自身の農園拡大だけではなく、もっと大きな野望もあるのです。
「泉区には野菜だけじゃなく、果樹も、養豚も卵も花卉(き)も、なんでも生産している。僕ら(農家)が頑張って横浜の農業の認知度を上げていけば、地産地消、地域貢献につながっていく。世界から都市農業のモデルとして見てもらえる日がきっとくる、それだけの地域なんです」と宜美さん。とても穏やかで優しい口調でしたが、力強い信念に満ちていました。
案内してくださった椿直樹さんは、宜美さんをこう評します。
「聞いてのとおり、サンロードへのこだわりとか、彼の執念はすごいでしょ。本当に泉区が世界の都市農業モデルになっていくかもしれない。これから宜美さんとおもしろいことができると思っているんだ」
畑に足を運び、農家の想いをのせて料理をすることは、料理人にとっても、いい刺激になるという椿さん。
宜美さんの語る「異業種間の交流」は、農家・料理人のそれぞれの夢をのせ、掛け算のように、地域へと広がっていくようでした。
まごころふぁーむ
住所:横浜市泉区和泉町6224-4
電話番号:045-802-2159
URL: http://www.magokorofarm.jp/
営業期間/通年(時期によって休み期間あり。要確認)
※8月中旬から9月、2月から3月は、端境期のため、お休みです
営業時間/月、水 15:30-17:00
火、木、土 8:30-11:30
横浜発!新しい食文化を創造するレシピ本をつくりたい!
クラウドファンディングに挑戦中です。応援よろしくお願いします!
https://faavo.jp/yokohama/project/1355
本連載で登場する農家、加工品生産者、スタッフの動画などをご覧いただけます。
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