(text,photo:牧志保)
<3月31日 晴れ>
気持ちの良い青空が広がる春休み。鴨池公園のまんまる広場にはたくさんの人が訪れていました。私が目指すのは「さんぽのわっ」。毎週水曜日に開かれている親子で楽しむ集まりです。
「さんぽのわっ」の目印は、大きなけやきの木にかかる手作りの旗です。けやきの木の下で待っていたのは、タンガリ―ハットがよく似合う高梨明日香さん(通称:あすさん)。「ようこそ」と笑顔で私たちを迎えてくれました。あすさんの「ようこそ」はとても印象的で、初めて参加した私たちに、自分の居場所がここにあるのだと感じさせてくれる、心温まる挨拶でした。
この日は薪を集め、火を起こし、白玉鍋を作るという美味しい企画の日。アウトドアクッキングが好きな私は、一気にテンションが上がります。白玉をみんなで丸めて、子どもたちは「煙たくて目が痛い」と言いながら、風向きが変わる度に風上に移動して、白玉を鍋に入れました。
できあがったら、みんなでお弁当と白玉汁を「いただきます」。「出汁がきいてて美味しいね」「お団子ふわふわだね」と言いながらお汁を頬張り、あちらこちらから「おかわり」の声が聞こえてきました。
ふわふわ白玉の秘密は、木綿豆腐を加えることだということを初めて知った日。私は食欲、そして知的好奇心も満たされたのでした。
「さんぽのわっ」は、荏田東にある「えだきん商店街」の中にある一時保育施設「さんぽ」を運営するNPO法人のはらネットワークの高梨明日香さんが主宰しています。
予約不要で誰でも無料で参加できます。水曜日の10:30から12:30まで鴨池公園のまんまる広場を中心にみんなで散歩をしたり、池で遊んだり、時に美味しい企画があったり、自然の中に身をおいて、みんなでのんびりとした時間を過ごしています。
<4月13日 くもり>
この日は、みんなで池のおたまじゃくしの成長を見守りました。私は小さな子どもたちと池のほとりに座って、池で遊ぶちょっと大きな子どもたちを眺めながら過ごしました。
私が子どもの頃は、に全身で自然を感じて過ごしていたなと、幼い頃の自分に思いを寄せて過ごす幸せなひと時でした。
「さんぽのわっ」では、毎回、面白い発見があったり、懐かしい感覚を呼び覚ましたり、大人と子どもが同じものに関心を寄せながら、様々な感覚を共有し、参加者一人ひとりが好きなように楽しんでいます。
<4月20日 晴れ>
この日は、鴨池公園の中にあるお山を散歩しました。途中、どんぐりを拾ったり、歌を歌ったり、大人はおしゃべりに花を咲かせながら、湿った山の空気を思い思いに楽しみます。「この木はヤマモモ。去年はあの木にたくさん実っていたのだけど、今年はこっちの木かな。花が満開だったからね。ヤマモモは、サワーにするととっても美味しいよ」。あすさんの言葉に、初夏が楽しみになる私でした。
広場に戻ると、けやきの木の下で何組かの親子が待っていました。男の子が「待ってたよ!」と走って迎えにきてくれました。お弁当タイムからの参加ももちろんOKです。そう、あくまでもゆるい感じです。
みんなでお弁当を広げて、空を見上げる。この日「気持ちいいね」という言葉を何度口にしたか分かりません。
お弁当の後は帰宅する人もいれば、残ってのんびりする人も。私は竹と毛糸でドリームキャッチャーを作りました。毛糸の色の組み合わせに作る人の個性が表れて、おしゃべりも弾みます。
気持ち良さそうにお昼寝している子、太陽の下で絵本を読んでいる子、元気な男の子は広場を走り回ったり。晴れ渡った青空の下、各々が心地いいことを楽しむ午後。穏やかな時間の流れに、優しい気持ちになりました。
子どもと一緒に行動していると、予定通りにいかないことが多くなります。約束や予定があると、前日から準備をするなど、少しプレッシャーに感じてしまうこともあります。いつ来てもいい、いつ帰ってもいい、気分が向いたら来たらいい。そんな「さんぽのわっ」のおおらかな感じが私はとても気に入っています。
この日の午後はプレイパークの応急処置のお話会が開かれました。鴨池公園のまんまる広場は毎週月曜日、火曜日、第2、4日曜日は冒険遊び場(プレイパーク)となります。
プレイリーダーを中心に世話人の方々が輪になって、刺されたらこわい虫の話、これまでの事故の実例をあげながら、気をつける点、処置方法を確認しあいました。皆が思いきり遊べるのは、多くの人の支えがあってのことなのだということを改めて知り、実りの多い時間となりました。
あすさんは、10年前家探しをしている中で、この「まんまるプレイパーク」に出会いました。自然の中で思いきり遊んでいる人たちを見て、「なんだ、この場所は!」と、びっくりしたそうです。その魅力に惹かれ、この公園のすぐそばに引っ越してきました。この公園で子育てをし、あすさんの2人の息子さんはたくましく成長していきました。公園に集まる仲間と、まるで家族のように賑やかで伸びやかな毎日を送っています。
「この場にいると、とても満たされた気持ちになります」と、私は正直な気持ちをあすさんに打ち明けました。「そう。不思議でしょ。ここにいたら子育ての行き詰まり感がないんだよね」とあすさん。気持ちが晴れやかになるというのでしょうか、自然の中、この場に集まる人たちと話をしているだけで、私はとっても満たされた気持ちになるのです。
<5月11日 強風 晴れ時々小雨>
この日の天気予報は雨。しかし晴れ間が出てきたので出かけることにしました。
11時にまんまる広場に到着。そこにいるのはあすさん一人でした。微妙な天気だから、集まりがいつもよりのんびりです。どんな時も開催日にはあすさんが待っていてくれます(雨が降ったら近くのログハウスに待っています)。
お昼が近づくにつれ少しずつ人が集まってきました。小雨が降っていても木の下は大丈夫だねと言いながら、皆でお弁当を食べました。この日は木の下で絵本を読んだり、のんびり過ごしました。
<5月18日 晴れ>
前日の大雨とは打って変わって、まさに五月晴れ。新芽の香りをかぎながら少し歩いて柿の木広場へ向かいました。途中で、キイチゴを見つけてみんなで味見をしました。とても甘いイチゴの味に、子どもたちはとてもいい笑顔でした。
お弁当を食べながらのおしゃべりは、話題が尽きません。この日の話題はパン作り、仕事復帰、幼稚園の話など、大笑いしながらの楽しい時間です。私はこの1月に都筑区へ越してきたばかりです。さんぽのわっに参加することで顔見知りも増え、この地での生活がとても色鮮やかなものになりました。都筑区は転勤族も多く、人の出入りが多い街です。そんな街だからこそ、さんぽのわっは人と人を自然につないでくれる大切な存在であるように感じます。
たくさん太陽を浴び、気ままにおしゃべりをして、ちょっとした疲労感と、満たされた気分を味わいながらの帰り道。いつも子どもに「楽しかった?」と口癖のように聞いてしまう私ですが、この日は「あー、楽しかった」と自分の気持ちが自然にでてきます。自分の素直な感覚に、なんて健康的なんだろうと嬉しくなり、そして、「さんぽのわっ」を訪れる次の水曜日が楽しみになるのでした。
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