夕やけ山は、麻生区にある吉垣さんファミリーの自宅の一部を時々開放する、集いの場です。吉垣志保さん・和也さんご夫婦と、勇咲くん(10歳)、安里ちゃん(8歳)、晃平くん(7歳)の5人家族と、夕やけ山に集う人たちみんなが家族のようになれる、そんな温かな場所です。
私が初めて夕やけ山を訪れたのは、今年の7月です。自宅から近い場所で、今までこんな素敵な場所があることを知らなかったなんて! と、少し悔しくなったほどでした。
ご自宅のある場所を開放……と言っても、スケールが大きいのが夕やけ山。昭和8年から続く花農家である「吉垣花園」の農地は、お山があり、花や野菜、虫や鳥、自然の中で人が生きていることを感じることができる、子どもたちだけでなく、大人にとっても贅沢な場所です。
お山の頂上から見える夕やけがとても綺麗なことから「夕やけ山」と名付けられました。
志保さんが夕やけ山をはじめたのは、今から1年前、2015年の秋です。
吉垣家にはもう1人、光の里と書いて光里(ひかり)ちゃんという女の子がいました。小さく生まれた光里ちゃんは、家族のあふれるような愛情をたくさん受け取って、2歳で小さな命を終えました。
「光里がいつも満たされたような顔で、苦しい顔は見せなかったから、いっぱい泣いたけど、大きな幸せをもらいました」と志保さんは言います。「子どもたちにたくさんの言葉は要りませんでした。いつも死ととなり合わせだったけど、子どもたちなりの世界の中で、それを受け止めていたようです。光里の最期は家族がひとつになって、送りました」
子どもが大好きで、結婚前まで幼稚園の先生をしていた志保さん。自分の手で作った身体に優しくておいしいお野菜を、子どもに食べさせたいと願う和也さん。お二人の想いは、光里ちゃんと過ごした、短いけどとても濃い家族の時間を経て、蕾が花開くように、家族という枠を超えて、外へ開かれていきました。地域の親子の集いの場として夕やけ山を始めたのは、吉垣さん家族にとって、ごく自然なことだったそうです。
2015年に動き始めた吉垣家の夕やけ山、どんなことをしているのか気になりますね。
一つは、月に1-2回(平日夕方)、吉垣花園の農地である里山を駆け回って遊び、時にはその場でできた野菜を収穫して、ごはんを一緒に作りながら、大きな家族のように「いただきます」をする「夕やけ山の解放日*」です。「無理をせずに自分たちができることをやりたいなって。自分の持っているもので周りとつながっていけたらと思って」と和也さんは言います。
*「夕やけ山」では「解放」と表現しています。
もう一つの活動は、「夕やけ山の合唱団」です。合唱団は、お約束事を極力設けず、のびのびと、毎年開催される麻生区民祭での発表を目標に結成されます。私も観客席から観ましたが、みんなで染めた藍染めのTシャツを着て、自由に楽しそうにステージで歌う子どもたちの姿がそこにありました。
「子どもって歌うことが好きでしょう? 自分の歌で誰かを笑顔にできて、自分もなんだか嬉しくなる。そんな経験を小さいうちから子どもたちにしてほしいから、合唱団をつくったの」と志保さん。
子どもたちは、夕やけ山に来て思いっきり遊んで元気になります。ありのままを受け止めてくれる場所で、心が満たされた子どもたちは、まわりも元気にしてくれます。
「誰かが笑顔になることが、自分の幸せだと思えること。それが究極の幸せだと私は思うんです。夕やけ山でみんなで集めた幸せ(光)を持ってどこかを照らしに行けたらいいな」。穏やかで、胸の奥にある優しさまでにじみ出ているような志保さんの佇まいは、夕やけ山に来る人たちを大きな愛で受け止めてくれます。
夕やけ山はもうすぐ1周年です。
「そばにある忘れてしまいそうな贅沢を味わえるような……。例えば親たちはハーブや花、野菜をさわりながら手仕事をして、子どもたちは里山を駆け回っている。取って付けたようなことをしなくても、今ここにあるもので、集まった人たちと一緒に暮らしを楽しんで行きたい」。志保さんも和也さんもこれからの夕やけ山をそんな風に思い描いていました。これから育っていく夕やけ山が楽しみです。
12月3日には、夕やけ山1周年イベント「お山のライブ」が開催されます。はじめての方も、吉垣家族が嬉しそうに、温かく迎えてくれるはずです。
光が集まる里へ、温かな家族に会いに、みなさんも訪れてみてください。
里山時間 夕やけ山
夕やけ山1周年イベント
12月3日(土)11:00-15:00
楽しいライブやおもちゃづくり、みんなで食べるおいしいごはん! など、内容盛りだくさんです。参加申し込みの締切は11月25日(金)。
お問い合わせはHPもしくはこちらへ
070-5467-7132
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