「子どもの靴選び」で大切なポイントを、理学療法士の平賀ゆかりさんに教えてもらいました
寝ているわが子の足を計測シートに置いてみる。実際は子どもを立たせてしっかり足で地面を踏みしめた状態でサイズを測ることが大切
子どもに足に合った靴を履かせることの重要性、子どもの靴を選ぶ時のポイントを理学療法士である平賀ゆかりさんに教えてもらいました。子どもに足にあった靴を選び、履かせることで、免疫力、筋力、脳細胞の活性化につながるといいます。子どもの靴、もう一度しっかり見直してみませんか?

(text,photo:牧志保)

 

私の娘が通う一時保育施設の先生から、面白い話を耳にしました。理学療法士であり、2人の子どものお母さんでもある平賀ゆかりさんの「子どもの靴選び」に関する話を聞いてみたら、と。子どもの靴選びについて、ずっと気になっていたものの、深く追及してこなかった私は、すぐに平賀さんに取材を申し込みました。

 

平賀さんは、背筋がピンと伸び、明るく気持ちのよい笑顔の持ち主。リラックスした空気を作りだすのがとても上手です。東急田園都市線の藤が丘駅からほど近い平賀さんの自宅サロンで、子どもの靴選びの大切さ、靴選びのポイントについて話を伺いました。

子どもの靴選びの大切さを多くの人に知ってほしいと「ママたちの集まり、保育園の懇談会、イベント、お誘いがあればどこにでもお話をしに行きます!」と話す平賀さん

子どもの靴選びの大切さを多くの人に知ってほしいと「ママたちの集まり、保育園の懇談会、イベント、お誘いがあればどこにでもお話をしに行きます!」と話す平賀さん

「身体を支える足は、建物でいう土台の部分。足がゆがむと、ゆがんだ状態でバランスをとろうとするために、身体のあちこちに影響してきます。身体の土台を支える靴は、子どものみならず大人にとっても重要ですが、骨が柔らかい子どもにとっての靴選びは特に大切です」。そんな平賀さんの話に始めからドキッとさせられます。

パワーポイントを使って子どもの靴選びの講義の始まり。子どもの骨はとっても柔らかいのだそう

足に合わない靴を履くことで、指で地面を蹴って歩かず、踵(かかと)を使って歩く浮指、土踏まずのアーチがない偏平足になる子どもも多いと平賀さんは言います。そして中学生の約半数が既に外反母趾になっていると聞き、とても驚きました。「骨が完成するといわれる18歳までは、自分の足に合った履きやすい靴を選ぶのがとても大切なのです」(平賀さん)

 

私にも覚えがありますが、子どもはすぐに足が大きくなるので、少しでも長く履けるようにと、少し大きめの靴を買うことはありませんか? しかし子どもにとって大きな靴は、小さくてきつい靴よりも足へのダメージが大きいそうです。
「足のサイズが12cmの子供が13cmの靴を履くことは、足のサイズが24cmの大人が26cmの靴を履くのと同じ感覚です。常に足にあった靴を履かせることが理想。靴は0.5cm刻みで選びましょう」と、平賀さんは言います。

 

「靴選びでまず重要なことは、子どもの足のサイズを正確に計測し、適正な靴のサイズを知ることです。子どもの靴売り場では足のサイズを機械で計測してくれる店もあります。また大手靴メーカーのホームページには足の計測ができるシートが掲載されています。これをプリントアウトして定期的に子どもの足を計測できるようにしておくといいですね」

寝ているわが子の足を計測シートに置いてみる。実際は子どもを立たせてしっかり足で地面を踏みしめた状態でサイズを測ることが大切

寝ているわが子の足を計測シートに置いてみる。実際は子どもを立たせてしっかり足で地面を踏みしめた状態でサイズを測ることが大切

「適正なサイズの靴を選ぶためには、靴の中敷きを取り、その上に子供の足を置いてみると分かりやすいです。かかとを合わせた状態でつま先の指の部分に0.5cmから1cmのスペースができる靴が適正なサイズです」

 

さらに平賀さんに靴選びで大切なポイントを挙げてもらいました。

 

「かかとのサポート(月型芯)がしっかりしているものを選びましょう。実際に手でさわってチェックすることが大切です」

月型芯のステッチだけされていて、実際には芯が入っていないものもあるそう。実際に手でさわって確認することが大切

ほかにも、次々に大切なポイントが!

 

「指をしっかり動かせる広さがある靴を選びましょう」

「靴底が適度に固くグニャグニャしていないものを選びましょう」

「底を曲げた時に指の位置で底が曲がる靴を選びましょう」

「つま先が床から上がっている靴を選びましょう」

しっかり曲げてチェック!

子どもの靴はサイズが小さい割に値段は高く、つい安価な靴を選んでしまいがちです。しかし足に合わない靴を履くことで体がゆがみ、治療が必要になってしまっては本末転倒です。幼少期の靴に多少お金をかけてもいいのではないかという平賀さんの話に、私は大きく頷きます。

 

「上の子が履いた靴を、下の子が履けるように取ってあるのですが、お下がりの靴を履かせるのはどうですか?」という私の質問に、平賀さんはきっぱりと答えます。
「お下がりの靴は止めましょう。何度か履いてしまった靴は、履いた人の足型になじむため、他の人が履くと、その形に骨が矯正されてしまったり、痛みの原因になります。かかとがすり減っている靴は問題外です!」

 

ほかにも、靴の履き方にも大切なポイントがあるそうです。
「靴に足を入れて踵をトントンと合わせて、ベルトをとめます。足の甲にベルトが沿うことで、足が靴の中で遊びにくくなります」という平賀さんの話を聞き、子どもに靴を履かせる際には気をつけるようになりました。この履かせ方をすると靴がしっかり足に固定されている感じです。これまでは靴を脱がせる時に、ベルトを取らずにスポっと脱がせることができていたのが、この履かせ方をすると、ベルトを取らなければ靴を脱がせることはできません。これまでの履かせ方では、靴の中で足が遊んでしまっていたのだなと反省しました。

 

「子どもの足は、骨が柔らかく発達途中です。足に合う靴を履かせることで、足がしっかり発達し、姿勢や血流がよくなり、免疫力、筋力、脳細胞が活性化することにもつながります」。そんな平賀さんの話を聞き、足にあった靴は、子どもの成長を見守るお守りのような存在であるように感じ、これからはしっかりと子どもの足に合った靴を選び、履かせてあげたいと心から思ったのでした。

 

木の温もりが感じられる心地の良い平賀さんのコンディショニングサロン

平賀さんの自宅サロンがあまりに心地よかった私は、後日改めて平賀さんの元にお邪魔しました。

 

平賀さんは10年間病院に勤務し、理学療法士としての仕事をしながら「日々の身体のケアをすることで、身体の歪みから生じる病気や怪我を未然に防げるのではないか」という思いをずっと持っていたといいます。そして今年7月に念願だった女性と子どものためのコンディショニングサロンBisouを始めました。

 

「自分の身体を自分でケアできるようになってもらいたいと思っています」と話す平賀さん。以前から猫背が気になっていた私は平賀さんに相談しました。軽く体にふれ、私の現在の骨や筋肉の状態、体の歪みについて丁寧に説明してくれ、日々の生活の中でできるストレッチを教えてもらいました。家に帰る頃には自然に背筋が伸び、しっかり足で地面を踏みしめている感覚が嬉しくて、思わず声をあげました。

子どもは横でおもちゃで遊んだり、一緒にベットに寝転がったり。子どもと一緒に行けるサロンはありがたい

子どもが手がかかる時期で慌ただしい日々を送る私ですが、自分自身の身体と向き合う時間は最高の癒しとなり、気持ちもリフレッシュできました。帰り道、運転しながら見る車窓からの景色が、来た時とは違って清々しくみえました(背筋が伸びて視界が良くなったのでしょうか……)。
子どもの靴選びから始まり、私の身体のコンディショニングにつながった平賀さんとの出会い。「靴」は親子にとって身体づくりの一歩だと、実感しました。

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