DIY内窓の依頼主は、以前リポーターとしても活動してくれていた、町田市に住む菊地明子さんです。
森ノオトのエコDIYの講座のことはうすうす知っていたけれど、自分で作業するのは無理と講座に参加するまでのモチベーションは持てなかったという菊地さん。「簡易内窓の受注製作をそろそろ受けようかな」という、SNSでのわたしの軽いつぶやきに反応して「ぜひお願いしたい! 」とメッセージをくれたのでした。
そういう声を待っていました! とはいえ、わたしがその時想定していた簡易小窓ではなく、通常の窓なので難易度の高い注文です。地域にエコDIY隊をつくりたいなあと、なんとなくの願望がありながら、一緒にやろうという仲間ができたわけではないし、一人で請け負うことはまだできないので、内窓講師担当の大澤正美さん(富士ソーラーハウス代表取締役社長)に相談しました。
そして、菊地さんにはモニターとして取材広報に活用させてもらうことを条件に、材料費に手数料をプラスαするくらいで、施工の作業費はとらず、地域のネットワーク第一でいくこと、大澤さんの経営する富士ソーラーハウスで材料等準備してもらうことにして、まず設置工事をやってみようということになりました。依頼を受けてから実施までは約1カ月半、年明け前にすべりこみ工事実施というスケジュールでした。
工事に必要な作業は、打ち合わせ、計測と設計、素材加工と設置工事、の3工程。現場での計測の結果、今回は、内窓用の窓枠を上下だけにつければ十分ではないかという結論になりました。窓の桟(さん)にあたる部分の溝の加工は富士ソーラーハウス所有の木材を使って事前にやってもらい、プラダン(プラスチックダンボール)は当日にホームセンターで購入して大体の大きさにカットしてから設置工事に向かいました。
当たり前のことですが、現場で見て、計って、作業しなければ分からないことは、たくさんあります。「建築は直角をとることが大事だ」という言葉も、実物を見るとなるほどなあと腑に落ちます。課題その1、右側の歪んだ窓には、内窓の枠の両端下に、2ミリほどの薄い木片を切り出して挟むことで解決しました。
エコDIY実践第1号の内窓は、ヒノキのツヤのある白っぽい色で、森ノオウチのやや赤っぽい杉の内窓とはまた違う印象です。内窓のキットを作れないかねえと話をしていた時期もありますが、大澤さんによると、「木の溝加工などをしてからしばらく置いておくとかえって狂いが出たりするので、あまり準備しすぎるのもリスクになる」のだそうです。面倒だけれど、一つひとつ個別に対応していくことがかえって早道なのかもしれませんが、価格が高めになってしまう。改めて、建築も、料理と同じでナマモノだなあ、なんて思いました。だからこそ面白いともいえますが、これを地域の事業にするとなると、まだ課題があります。
今回の材料費は溝加工含めて一つの窓で2万円ちょっと、二つの窓で5万円以内でしたが、これを安いととるか、高いととるか、人によっても価値観は違うでしょう。ここに人件費も加わるとなると、「安いから」という価値とは違うものさしが必要になってくるように思います。
みんながちょっとずつ職人になる社会というような、漠然としたイメージだけはあるのですが……。まずは電気やガスへの依存を減らす一つの方法として、また、日本の木を暮らしに取り入れる楽しみの一つとして、簡易内窓を広めることはできないかと、寄り道しながら考えていきたいと思いました。
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