「はちエネ」が市民出資を集めて作った発電所は現在3カ所。
1号機はユギムラ牧場ソーラー発電所、2号機はかあさん牛のヨーグルト工房発電所、3号機は結の会ソーラー発電所。いずれも発電量は29.8kW、19.8kW,
10kWと小規模分散型の太陽光発電所です。出資に対して元本の保証や配当はないけれど、売電から10年以上経って、事業収益を回収できたら変換する仕組みで寄付を集めてつくられました。
発電所というと、大企業、大資本によるものだけではないのだ、ということをまずは知ってもらいたいと思います。電線の中に入ってしまえば、それがどこで作られた電気か分けることは実際にはできません。しかし、電力の小売が完全自由化となった今、再生可能エネルギーを推進している電力会社と契約を交わすことにより、自宅で使っている電気はこの土地の、こんな人たちがつくった、再生可能な電気なんだ、と言えるのです。
1号機のユギムラソーラー発電所は、かつて牛の堆肥小屋だった場所にあります。
この場所をはちエネに提供したのは“牧場のおっさん”こと、鈴木亨さん。
多摩ニュータウン開発に抵抗して土地を守り、農業と福祉の現場を、行政や世代の壁を越えてよくしていこうと30年以上活動してきました。
「足を悪くして世話ができなくなって、飼っていた牛を手放したところに、FIOという農業を志す若者たちや、エネルギーの自治を目指す志あるはちエネメンバーが集まるようになって嬉しい」と、素直に語る姿が心に残りました。
自然環境の豊かなところに住んでいる人の中には、ここは何もない、つまらない田舎だ、開発された方が嬉しいと感じている人が案外多いのですが、残された自然を貴重な資源と捉えることができれば、「なんでもある」のです。そこに気づいた人たちが、対話や行動を通じてつながっていったことは、次の世代にもきっとなんらかのカタチできちんと受け継がれていくはずです。
堆肥小屋の隣の牛舎の方は、今では、はちエネの活動場所の一つとして、研修や視察の受け入れ、地域内外の人との交流の場として利用されています。私たちもここで説明を受けた後、美味しいバーベキューのおもてなしを受けました。男性が多い中、女性メンバーとして頑張っている宮元万梨子さん、近藤波美さんは、「森ノオトのファンです! サイトを見て学んでいます。女性たちが元気でうらやましい!」と嬉しい言葉をかけてくれました。
逆にこちらがうらやましいと感じたのは、周辺に家屋がなく騒音をあまり気にしなくてよいため、工作機器類を導入して、野外のfablab(ファブラボ)スペースと化しているところ(ファブラボについての記事はこちらをご覧ください)。小型の持ち運びできる蓄電池の開発や、砂鉄からナイフをつくる、ロケットストーブをつくるなど、エネルギーだけでなく、暮らしの道具をつくる楽しみを共有し、事業づくり、人づくりにつなげています。近くに残る里山の保全活動と合わせて、おがくずや間伐材のチップ化といったバイオマス利用の取り組みにも積極的です。
2016年の6月からは、2号機の「かあさん牛のヨーグルト工房発電所」で発電した電気の売り先を、東京電力からみんな電力に切り替え、一般家庭への小売事業にも乗り出しました。みんな電力のサービスの中から、はちエネの電気を買うプランを選ぶことができるようになっています。八王子に思い入れのある人にとっては魅力的ですね。活動の趣旨に賛同したら、社団法人の会員になって、サポートすることもできます。
エネルギーをただ消費することから、つくって使う「プロシューマー」へと穏やかに移行しはじめたはちエネの取り組み。牧場や農地と、里山のこれからをどう作っていくのか、今後も注目していきたいと思います。
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