青山亭は寺家ふるさと村の総合案内「四季の家」から、田んぼを挟んで向かい側の山腹にあります。時には青葉台から続くバス通りの寺家に近づく坂の辺りから、青山亭の敷地にある窯から煙がゆらゆらと上がるのが見え、風情を感じます。
青山亭へ足を運ぶと、店主の大曽根幹郎さん、そして先代であり今も厨房で腕をふるうお母様の喜代子さんが、いつもあたたかく迎え入れてくれます。
春はお団子や夏の涼菓など、いつ訪れても季節を感じるおもてなし。お盆に添えられた折り紙や、卓上の花に、心癒されます。
お茶室もある青山亭。厨房に並んでいた鉄瓶のことを尋ねると、それは「燗鍋(かんなべ)」というもので、お茶会の懐石で用いられるものでした。そして、その燗鍋は寺家町に工房を持つ「釜師(茶の湯に用いる茶釜などの鋳物を製作する職人)」の根来琢三さんや中田敞さんの作品でした。また、寺家町には、お茶に不可欠な茶炭の専門店や、茶碗を焼く窯元もあり、茶炭の里から茶道の里として裾野を広げてきた文化もあることを知ることができました。
青山亭を訪れるお客さんも自然に増えていき、お客さんのニーズに合わせ、喫茶だけでなく、豊かなお食事もできるお店になりました。
人気のメニュー「お弁当」に欠かせない煮物はにんじん、こんにゃくなど、それぞれの素材の持つ味わいを最大限に引き出すために、別々のお出汁で丁寧に煮ています。「淡々と、どなたにも馴染むよう、優しい家庭の味を作り続けることを心がけています」と喜代子さん。
旬のお野菜などは地元のものを使います。
満開の桜に誘われて、私が朝一番に行った日、常連の95歳のおじいさんと息子さんが窓に向かう席に並んで座り、お弁当をつまみに熱燗を飲んでいました。窓の外に降りしきる桜吹雪きを眺めながら、お二人で戦争のときのお話や、家にいるおばあさんへお土産にするお団子の相談をしながらくつろいでいました。
青山亭から見える景色とお客さんとの出会いの中で生まれ、日々繰り返されていく、さりげなくも印象的な時間でした。
和食のお店というと、落ち着いた年齢層の人向けなのかしらと思っていましたが、喜代子さんは「小さなお子様連れの方もどうぞ、遠慮なさらずいらしてください。お茶会がないときなら、御座敷のお部屋を使っていただくこともできますし、赤ちゃんをお連れの方も気兼ねなく過ごしていただけます。子どもが居るという景色はごく自然なことですから」と話してくれました。
青山亭(せいざんてい)
住所:横浜市青葉区寺家町679
電話:045-962-2709
営業時間:11:00-17:00(
定休日:火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日)
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