横浜市営地下鉄グリーンライン・日吉本町駅から歩くこと5分ほど。ピンクのとんがり屋根が、「こどもの本のみせ ともだち」(以下「ともだち」)の目印です。2011年に同じ日吉エリアにあった旧店舗から、もともとジーパン屋さんだったという今のチャーミングな外観の店舗に移転しました。
店内には、本棚にびっしりと絵本や児童書などが約2,000冊並びます。アニメのキャラクターものの絵本は取り扱わず、スタッフが「子どもたちに読んでほしい」と選び抜いた本ばかり。新刊だけではなく、長く読み続けられてきた国内外の名作も多くそろいます。どれもこれも手に取ってみたいと思う、素敵な本ばかり。中には、地元の港北区在住の絵本作家さんのコーナーがあったり、スタッフの方が惚れ込んで仕入れた大人向けの書籍コーナーがあったり、こだわりの育児書が並んでいたりと、見どころたっぷりです。
わくわくしながら本棚を眺めていると、スタッフの女性が、優しく声をかけてくれます。
「ともだち」を運営しているのは、40~60代を中心にした地元の主婦ら約20人のスタッフです。40年以上の歴史の中で、何度か閉店の危機を迎えましたが、お店を大切に思う人たちが「ここをなくしたくない」と、その時々に共同経営者として名乗りを上げ、経営を引き継いできました。
ボランティアで運営に携わっているスタッフは、子育て中に「ともだち」を利用していた人たちがほとんどです。店長の密本千種さん(56)もその一人。出産で日吉に移り住んだ密本さんに、地域のこと、子育てのことを教えてくれたのが、お店番をしていた「ともだち」のおばあちゃんでした。「どうやって子育てしたらいいのか。絵本はどうやって選んだらいいのか。わからないことばかりだったけれど、いろんなことを教わり、あったかいな、と感じました」
そんなふうに、かつて「ともだち」でぬくもりを感じたお客さんが、今度はスタッフとしてお店を支える立場に回っています。
「ずっと変わらずに、地域でほっとできるような場でい続けられるようにしたいです。ここで育った子どもたちがいつでも帰ってこられるように、お店を続けていくことは大事なこと。この地域の子どもたちにとっては、このまちがふるさとだから、『日吉が好きだな』って思ってもらえる一助になったらいいですね」。密本さんはそう続けます。
「ともだち」の創業者は、今は北海道に暮らす徳村彰さん、杜紀子さん夫妻です。営んでいる本屋さんの2階にある自宅を子どもの遊び場として開放し、本を読んだり工作したりできるような活動をしていました。1973年に子どもの本の専門店を開店し、徳村さん夫妻が1982年に北海道に移住してからは、書店を囲む人たちが経営を引き継いできました。
徳村さん夫妻の、地域で子どもの居場所をつくろうという活動は、いまの「ともだち」にも受け継がれ、ボランティアによるおはなし会を店内外で定期的におこなっています。
「ドキドキするような ほんとの出会い」
「ほっとするような 人との出会い」
ともだち書店がお店のコンセプトに掲げている「出会い」。ここを訪れると、きっとそんな体験が待っています。
これからの季節、雨の日におすすめの絵本を店長の密本さんに紹介してもらいました。
まずは、高橋和枝さんの雨の日にちなんだ2冊です。温かい絵のタッチに、大人も思わず心癒されます。「マイペースでいいよ、と言ってもらっているような気持ちになります。水や雨の表現、音の響きも楽しんでくださいね」と密本さん。実は、高橋さんは「ともだち」に来店されたことがあり、それがきっかけで高橋さんを招いたイベントをおこなったそう。
もう1冊は、外に出られない雨の日、部屋の中で思い切り音で遊びたくなる絵本。ジャズピアニストの山下洋輔さんが紡ぐ擬音語は、どこか音楽的。おはなし会でも人気の絵本なのだそう。
おすすめの絵本を聞いていると、どんどん素敵な絵本が出てきて、時間を忘れて絵本の世界に入り浸っていたい気持ちになりました。絵本が好き、このお店が好き、地域が好き。そんな温かい思いに包まれたまちの本屋さん。訪れるたび、心に残る出会いが待っているはずです。
こどもの本のみせ ともだち
住所:横浜市港北区日吉本町2-44-10
電話:045-561-5815
営業時間:平日11:00~17:00、土曜13:00~17:00、日曜・祝日休
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