





ある日、「アルプスの少女ハイジ」のアニメを熱心に見ていた息子が「ハイジが住んでいるお山に行ってみたいなあ。ハイジの食べていた白いパン、食べてみたいなあ……」と呟きました。
ハイジの住んでいるお山、スイスのアルプスには今日明日には行かれませんが、そういえば「ハイジの白パン!」、私も憧れた記憶があります。
早速インターネットで「横浜市青葉区 ハイジの白パン」と検索したところ、「pain fermier穂の香」というパン屋さんの名前が出てきました。

木製のプレッツエル型の把手、子どもも大人も思わず手をのせたくなります。店内側の把手はまた別のパンなのです。何パンでしょうか?!
無性に「ハイジの白パン」が食べたくなってしまった私たちは、早速出かけました。東急田園都市線・横浜市営地下鉄線ブルーライン「あざみ野」駅からほどなく、住宅街のマンションの一階にある「穂の香」を見つけました。

クロワッサンの見るからにサクッとした様子、ガレットの上で輝くあんず、クレセントロールの可愛らしい三日月型、どれもが「美味しいよ」と語りかけてくるようで、とても一度の来店では選びきれない
そんな縁で出会ったパン屋さん「穂の香」。
「また一つ、美味しくて、素敵なパン屋さんを見つけてしまった!」と嬉しくて友人に話すと、「穂の香、知っているよ!」という人ばかり。東京都世田谷区自由が丘にも支店を持つ、実に有名なパン屋さんということが分かりました。

店内にある可愛らしい銅のオブジェの数々は、店主の吉田学さんが以前、知り合いのケーキ屋さんで一目惚れした作品を手がける「工房 ものずきん」の高橋耕也さんに依頼したもの。お店の看板も見応え抜群!
一歩店内に入ると、パンの香りとともに、物語の中に入りこんだような雰囲気に包まれます。そしてなにより驚いてしまうのは、パンの種類の豊富さです。窓辺やカウンターに並ぶたくさんのパン。名前の下に一つひとつ丁寧に書かれたコメントを見ると、「ドイツ・フランス・イタリア・ルーマニア……」ヨーロッパを中心に様々な国で生まれたパンであることが分かります。

ハムやチーズをのせてオープンサンドにして食べたいライ麦パン

ケーキや焼き菓子も作っている。まるで魔法の工房みたい
異国の香りのするパンと並んで、日本のパン「桜あんぱん」と「クリームパン」そして、「フランスあんぱん」という魅惑の和洋コラボのパンもあります。この品揃えにはシェフの一つの信念があることを、お話を聞いて知りました。
それぞれその国のパンの特徴が、確かなうまみとともにじっくりと感じられるパンと、雰囲気のあるお店を作っているのは、オーナーシェフである吉田学さんと奥さんの由華里さんです。

由華里さんは現在、東京方面のお客さんたちの熱いコールに応える形でオープンした自由が丘店で店主をしています
高校を卒業したときに「自分のパン屋さんを持つ」という夢と覚悟があった学さんは、パンの名店で修業をしながら20代前半に、本場のパンを知り、もっと学ぼうと、ヨーロッパでパンを巡る旅をしたそうです。
「その国の風土の中で、それぞれの家庭のお母さんや街の職人の手で作られるパンは、比べようもなくどれも素晴らしく美味しいと、その旅で僕は身にしみました。そして、本場の味を求めて行った旅で、『日本の食文化からうまれた〈あんぱん〉や、〈クリームパン〉も、世界に胸を張って誇れるパンなのだ』ということも学ぶことができました。だから僕のお店では、イタリア、フランス、ドイツなどのパンと並んで、日本発のあんぱん、クリームパンも作り続けていきます」(学さん)
「お店に出すもの全てが手作り」というこだわりの穂の香。あんぱんは、北海道の小豆を仕入れ、あんを炊くところからお店で行います。

お店の名前のとおり、小麦やライ麦、工房でひいた粉から作られた焼きたてパンの香りがお店に芳しく香ります
芳ばしい香りのする店内には、カフェスペースもあります。
「お客さんが買いたてのパンを食べたり、のんびりしたりできる場所のあるお店にしたい」というのが学さんの夢だったそうです。

たっぷりのカフェオレが嬉しい。スープのセットやケーキのセットもあるので、時間帯によってランチもお茶も楽しめる
カフェスペースの本棚の絵本や本、雑誌は自由に読むことができます。
「お子さまに絵本を読んであげるときは、大きな声を出してもかまいませんよ」というメッセージが本棚に添えられていました。
吉田さんご夫婦には、今年小学校1年生になったお子さんがいるそうです。子育て中の大変さや喜びに共感する気持ちから、子ども連れのお母さんたちにとっても心休まる空間を提供しています。

数年前に夏休みをとり、学さんと由華里さんで行った「トスカーナ地方の食文化を巡る旅」のコラージュがカフェスペースに飾られている。鮮やかな食材や職人さんの笑顔の写真が満載!
穂の香の店内には、学さんと由華里さんが少しずつ集めてきたアンティークの農具、麦を穫る鎌や脱穀に使われる唐竿、アルプスの少女ハイジでも出てきた干し草を集める時に使われていた大きなフォークなどが飾られています。
それらは、私たちの掌の中にあるこのパンが、パン職人さんだけでなく、麦を育てた農家さんたちがいてこそあるものなのだということを自然と語りかけてくれます。
「ヨーロッパを旅していいなと思ったのは、麦畑の広がる風景が日常の傍らにあったことです。その風景こそがパンのルーツなのだと感じさせてもらいました」(学さん)

学さんの作る、日替わりのスープ。パンとの相性もばっちり
学さんは「パン職人として出来の良いパンができたという満足ではなく、パンを食べてくれたお客さまが『美味しい』と喜んでくれるパンを作ることを忘れずに、一つひとつのパンに心を込めて作ることを大切にしています。特別なものではなく、人々の日々の暮らしの中でささやかな幸せを届けることができることがパンの魅力です」と話してくれました。
お店の名前に付く「pain fermier」は農家のパンという意味です。ヨーロッパの農家のお母さんが家族のために作るパンのように、手のぬくもりと食べる人を思う心が伝わってくるパンたち。暮らしに馴染むパン屋さん「穂の香」です。
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あざみ野店
住所: 横浜市青葉区新石川1-22-1-102:駐車場あり
Tel&Fax 045-911-2987
営業時間 7:00~18:30
定休日 月曜日 第1・第3日曜日
HP http://www.pain-honoka.jp/index02.html
自由が丘店
住所:東京都世田谷区深沢7-53-2-101
Tel&Fax 03-5707-0888
営業時間 9:00~19:30
定休日 月曜日 第1・第3火曜日

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