季節のお菓子と日本茶と
「季節を感じる和菓子で、渋めに淹れた日本茶を飲む」
それが私の幸せな時間です。
もちろん、お店で美しい和菓子を買っていただくのも特別な感じがして好きですが、そう頻繁にというわけにはいきません。そこで、簡単なものは自分で作ることにしています。その方が、甘さ、素材選びなど、自分の好みや体調に合わせることができるからです。
今回は6月にぴったりな和菓子、その名も「水無月」の作り方を紹介します。
私の和菓子好きは子どもの頃からです。家の近くに素朴で美味しい和菓子屋さんがあり、季節ごとに変わる練りきりやおまんじゅうを買ってきては、週末のお茶の時間に家族揃って楽しんでいました。
「水無月」が梅雨時のこの季節にショーケースに並んでいたことは、頭の片隅に残っているのですが、自分で選んだことはありませんでした。子どもだった私の目には、特に華やかさのない「水無月」はそれほど魅力的に映らなかったのでしょう。ただ、どんな味なんだろうと気にはなっていて、「一口ちょうだい!」と家族の誰かからもらって食べた記憶はあります。
なかなか手に入らない水無月
自分で選んだことがなかった「水無月」。きちんと買って食べてみようと思い、6月になってからいろいろな和菓子屋をのぞいているのですが、なかなか出会うことができません。デパートにある和菓子屋に一軒ずつ聞いてまわったところ、「29、30日のみの販売です」とか、「注文販売になります」などと、いつでも買える存在ではなかったことに気づかされました。
電話での問い合わせも含め、10軒ほど尋ねたでしょうか。ようやく1軒だけ「売っていますよ」というお店に巡り会えました。この記事を仕上げる数日前に、和菓子屋の正統派(!)「水無月」を食べることができました。
初めてきちんと向き合った「水無月」は大人の味わいでした。甘すぎず、固すぎず。外郎(ういろう)特有のむっちりとした食感に「ああ、そうだった」と、妙に舌が納得。ようやく見つけられた思いで気持ちもお腹も満たされました。
水無月と夏越しの祓
ところで、みなさん、夏越しの祓(なごしのはらえ・なごしのはらい)という行事を知っていますか?
今回、「水無月」について調べていくうちに夏越しの祓と「水無月」は切っても切れない仲ということがわかりました。
夏越しの祓とは6月30日に神社で行なわれる行事です。一年の半分にあたるこの日は、境内に茅の輪を立て、そこをくぐることで半年分の穢れを祓い落とし、残りの半年を健やかに過ごせる力をいただくのだそうです。
そして、その日に食べるのが「水無月」です。6月30日の数日前からの販売というのはそういう訳だったのですね。
水無月の形
「水無月」の形は三角形と決まっています。和菓子の世界ではちょっと特別な感じです。
この形の由来はというと、氷をかたどっているという説、一年の半分という意味で三角形という説などがあります。
個人的には氷の形というのがしっくりきます。平安時代、貴族の間では暑気払いにと氷を氷室から出してきて楽しむ行事があったそうです(氷の節句)。三角形は氷の形をイメージしているのです。
また、赤い色は邪気を祓うとされていることから、あずきをのせています。
昔の人たちは、栄養価の高いあずきを食べて夏の暑さを乗り切ろうと考えたのかもしれませんね。
本当に簡単です
ちょっとした「水無月」通になったところで、いよいよ食べたくなってきませんか?
和菓子屋さんで見つけられた人はそれをいただくもよし、また簡単に作れるので自分で作るもよし。好奇心と食欲のおう盛な人は買って作って、両方食べ比べるのもよし。
今回、紹介するのは甘酒を使った優しい甘さのレシピです。小さなお子さんでも安心して食べられます。
また作りやすいように、シンプルな材料、簡単な手順にしています。
材料さえ揃えれば30分程度で出来上がるので、ぜひお試しください。
【水無月】
<材料(6個分)>
甘酒(濃縮タイプ) 100g
もち粉 30g
米粉 30g
塩 ひとつまみ
あずき(茹でて甘く煮たもの)または甘納豆 50g(好みで加減する)
用意するもの
クッキングシート、蒸し器、ボウル、ゴムべら、竹串(またはスプーン)、さらし布巾など
<作り方>
蒸し器にお湯を沸かしておく。
(1) ボウルに甘酒と塩を入れ混ぜる。
(2) (1)にもち粉、米粉を加えゴムべらでよく混ぜる。
(3) クッキングシートに7、8ミリ厚さで四角く伸ばし、竹串やスプーンを使いあずきをのせる。
(4) 蒸し器に入れ、20分ほど蒸す(蒸し器と蓋の間にぬらして絞ったさらし布巾をはさみ、水滴が落ちないようにする)。
(5) 蒸し器から取り出し、粗熱がとれたら、包丁を濡らしながら三角形に切る。
冷蔵庫に入れて保存。2日程度は固くなりません。
じめじめと蒸し暑い季節。気分的にもスッキリしませんが、「水無月」を食べながら、家族で半年を振り返るというのもいいかもしれませんね。
参考文献
『福を呼び込む和のならわし』(広田千悦子・著、メディアファクトリー・刊)『事典 和菓子の世界」(中山圭子・著、岩波書店・刊)
『和菓子の本」(東京製菓学校・監修、CBS・ソニー出版・刊)
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