突然ですが、化粧水選びって迷いませんか? 保湿力は十分でもベタベタしすぎる、さっぱりしていて良いと思ったら翌朝突っ張る、好きな香りが見つからない、できれば自然派のものがいい、できるだけリーズナブルな価格で……などなど、自分の希望や好みにぴったりくるものを見つけるのって大変ですよね。適当なところで手を打って、「まぁ、これでいいか」と決めている人、実は多いのではないでしょうか。
私もそんなひとりとして、さまざまな化粧水を渡り歩きつつ、「手作り化粧水」という選択があることも気になっていました。けれど、材料を揃えるだけで大変そう、ズボラなわたしにできるのか?と手を出せず……。そこに森ノオト編集部の仲間である清水朋子さんから「友人にハーブを使った化粧水や石けんの作り方を教えている人がいるよ」と教えてもらったのです。
清水さんが「ハーブの魔術師」と呼ぶその方は、ハーブインストラクターとして活躍する山田留美子さん(40歳)。「itononiwa」という名で、ハーブ石けんや化粧水、日焼け止めや虫よけスプレーのワークショップをカフェなどで開き、ハーブの魅力を伝えています。
ハーブのインストラクターとして活動を始める前、20代の頃は病院でメディカルソーシャルワーカーとして働いていた山田さん。入院した患者さんやその家族に起こる、経済的な不安や介護の問題、心理的な問題に親身に相談にのりながら一緒に解決していくその仕事が大好きで、やりがいを感じていたそうです。
そこに「出産」というひとつの転機が訪れます。やりがいはあるがストレスが多い仕事であること、引っ越しが多くフルタイムで仕事ができないこともあり、働き方を模索していたところ、取り寄せた「生活の木」(ハーブとアロマテラピーの専門店)の冊子の中に、次に引っ越す予定の横浜市青葉区でスクールが開講されることを見つけたのです(その後、「生活の木」はたまプラーザに移転)。
「はじめはメディカルハーブコーディネーターの資格を独学でとって、これがとれたら、もうひとつ上位資格のハーバルセラピストの資格をとろうと決めていました。ハーバルセラピストは半年間スクールに通うという、時間もお金もかかる資格。まずはメディカルハーブコーディネーターになってからと自分に課したんです」
外見はふんわりと柔らかな雰囲気をまとう山田さんですが、お話を聞いていると、芯の強さと、想いを実現する行動力がある人なのだということが伝わってきます。スクールの授業で自己紹介をする時、先生から「この資格をどう生かしたいですか?」と質問されたときのこと。
「ほかのみなさんが“暮らしに取り入れたい”と話す中、私は“生活の木のインストラクターになりたいです”って、すでに売り込んでいて(笑)。資格をとったあと、そのまま面接に行き、採用していただいたんです」
それだけの実行力がありながら、「実はズボラなんです」という意外な言葉も。ハーブが好きでも一人ではきっと続かないと感じた山田さんは、インストラクターとして教える立場になることで、ハーブを切らさずストックしたり、講座の内容について考える習慣がつき、ハーブを身近においておけると考えたそう。
現在は生活の木のインストラクターのほか、大倉山のカフェ「Roof」や、清水さんが主宰する「Glänta」でのワークショップなど、活動の幅を広げている山田さん。9歳と8歳の女の子を育てる母として、仕事と子育ての両立で大変な時もあるはず……。その切り替えはどのようにしているのでしょうか。
「材料の発注のことでモヤモヤしたり、色々とやりたいことがたまっていても、子どもが帰ってきたら一回そこでリセットしますね。おやつを作って気持ちを切り替えたりして。それから、子どもの自由研究でハーブの効能を調べたりして、一緒に楽しむようにしています。いつの間にか、子どもの口から“精油がね”とか“カモミールが……”なんて出てくると、伝わっているんだなぁって思いますね」
ゆくゆくはご自身でブレンドしたハーブティーを販売したいという夢も語ってくれた山田さん、これからの活躍が楽しみです。
これまでの道のりをお聞きしたところで、化粧水の作り方をデモンストレーションしていただくことになりました。まず注目したいのは、「チンキ」と呼ばれる美しい液体。これはウォッカ(40度以上のアルコール)にハーブを2週間ほど浸して抽出したもので、ハーブの力がたっぷりと宿った液体です。マルベリーは美白、ローズヒップはシミ予防、カモミールは保湿、ローズマリーは老化防止、月桃は日焼け防止と抗酸化作用といった効果や効能があるとのことなので、化粧水を作るときは自分が重点をおきたいチンキを選ぶことになります。
今回、私はマルベリーのチンキを選び、水、グリセリンとヒアルロン酸、ビタミンC誘導体を入れてかきまぜてボトルへ入れ、ハーブウォーター(今回はミントウォーター)を加えて完成。ミントの清涼感のある香りが漂う、さわやかな化粧水ができあがりました。
山田さんにレシピを教わってから、ずっと手作りの化粧水を使い続けている清水さんに使い心地を聞いてみました。「私にとって、この手作り化粧水はしっとり感がちょうどいいんです。自然な化粧水といっても、ビタミンCやヒアルロン酸など入れておきたいものはしっかり入っていますしね。季節に応じてハーブウォーターが変わり、旬を感じることができるのもいいところですね。天然由来の優しい香りに、毎日癒されています。留美ちゃんがよいと思うものと私がよいと思うものの感覚が似ているから安心してついていけるし、なにより留美ちゃんのお肌がとても美しいですよね」
わたしも取材後、毎日この化粧水を使っていますが、材料に何が使われているかを知っている安心感、ボトルのフタを開けるたびにふわっと漂うミントの香りに、気持ちがほぐれるのを感じます。清水さんの感想にあった「しっとり感がちょうどいい」に深く頷いてしまいました。
手作り化粧水に使う材料はネット通販などで手に入れることはできますが、使用期限が短いことから、一人で使い切るのはコストがかかり、なかなか難しいと感じる人も多いはず。何人か集まって材料をシェアできたら、という想いから、『季節のハーブウォーターで作るlotion&milk』のワークショップが開催されることになりました(清水さんが主宰する「Glänta」にて。7月はすでに満席、次回は9月に開催予定)。ここで一度ワークショップを受けて化粧水が気に入ったら、材料をシェアして定期的に継続できる「作る会」にも参加できるという嬉しい企画。コストが心配という方も、これなら安心して続けられそうですね。化粧水のほかに、石けんや虫よけスプレーなどのワークショップも開催している山田さん。先日はお母さんたちが集まり、『マルセイユ石けん作りの会』が開かれました。
「ハーブって、バラのように華やかなものではないですよね。でも、楚々とした存在感を愛おしく感じますし、こんなにも豊かな気持ちにさせてくれる。そこがどんどん惹かれていった理由かもしれません。ハーブを暮らしに取り入れると、「ほくほくとした気持ち」になれるんです。ハーブキャンドルを作った日は満ち足りた気持ちで過ごせたり……。ワークショップでみなさんと一緒に作り、満足した様子や「どこに飾ろうかな?」とお話されているのを聞くと、あぁ良かったなって思いますね」
「ほくほくとした気持ち」って、いいですよね。暮らしにそんな気持ちが増えていったら、日々がもっと豊かに楽しくなりそうです。ぜひあなたも、使うのが楽しみになるようなハーブ化粧水を作ってみませんか?
itononiwa 山田留美子
https://itononiwa.wixsite.com/itononiwa
<ワークショップ>
「ハーブウォーターで作る石けんの会
〜夏 ミントウォーター〜オフホワイトのマルセイユ石けん」
日時:7月7日(金)10:30〜12:30(その後ランチ)
参加費:3,800円(ワッフルランチ&ドリンク込)
お一人様石けん4個分お持ち帰りいただけます
持参物:エプロン・眼鏡かゴーグル・マスク・お持ち帰り用紙袋
場所:Roof Okurayama 横浜市港北区大曽根1-2-2
https://www.okurayama-roof.com/
<お申し込みはこちら> itononiwa.w@gmail.com
「季節のハーブウォーターで作るlotion&milk』
9月に横浜市青葉区の「Glänta」(まちの集会所+時々カフェ)にて、ハーブウォーターで作るlotion&milkのワークショップを開催予定。詳細が決まり次第、itononiwaのブログ(https://itononiwa.wixsite.com/itononiwa)、Gläntaのブログ(http://glanta.blog.fc2.com)にてお知らせします。
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