和菓子で季節を楽しもう 十五夜に月夜のようなデザートを。
秋のお月さまって本当に美しいですよね。じっとみていると心も体も浄化されたようで、とても落ち着いた気持ちになります。澄んだ夜空の下、体の中からきれいになれそうなお月見のためのデザートを考えました。盛りつけも楽しみながら作ってみませんか。

(*2017年掲載の記事です。中秋の名月は閲覧される年の暦をご確認ください)

 

月見のお団子

今年の中秋の名月(十五夜)は10月4日です。旧暦の8月15日にあたるこの日は芋名月ともいいます。この芋とは里芋のこと。この時期が里芋の収穫にあたり、お供え物にすることが多いのです。また、里芋は稲が伝わる前の日本の主要な作物だったとか。関西や新潟県の一部では月見のお団子は里芋の形だそうです。
私は丸いお団子しか知りませんでしたが、静岡では真ん中をくぼませた「へそもち」というのをお供えするそうですよ。
ところ変わればお団子の形もさまざまですね。十五夜の晩、「どこでもドア」を使って全国をまわって食べ歩きたい気分です。

お月見の団子の数といえば、15個だと思っていましたが、翌月の十三夜(旧暦9月13日、今年は11月1日)には13個、また一年は12カ月なので12個というところもあるそうです。
私は子どもの頃、お団子を盛りつける仕事を母から任されていたのですが、15個をバランスよく盛るのはむずかしいなと思っていました。それが、13個だったら?12個だったら?と考えてしまいます。
そして、このお団子、もともとは一升の粉から作り、15個分(または13個分、12個分)に分けて作っていたのだそうです。1個5、6センチぐらいでしょうか。とっても大きくて、一つでお腹いっぱいになりますね。お団子の山もたいそう立派だったことでしょう。

 

 

綱引きにお団子盗み?

みなさんのお月見の思い出はどのようなものでしょうか。私は家族で静かにお月見をした記憶しかないのですが、調べて見ると、地域によっては踊りがあったり、綱引きがあったりと多種多様。
また、東京近郊の農村では十五夜の晩はお団子やお供え物を盗んでもいいという習慣があったといいます。先を削った棒で団子を突き刺して盗むのだそうです。今はほとんどなくなってしまったそうですが、こんな楽しそうな遊び、子どもたちにやらせたら盛り上がりそうですね。

 

 

月にまつわるお話

ここでお団子からちょっと離れてしまいますが…。
日本で月といえばうさぎですが、国によってはさまざまなものに見えるようです。
ハサミがひとつのカニ、ワニ、ほえるライオン、本を読むおばあさん…まだまだたくさんの見方があり、全てのお話が知りたくなります。

最近読んだお話にこんなものがありました。

ベトナムの昔話、「大うそつき」(アジアの昔話)では、うそついたり人をだましたりする男が、空に舞い上がっていくバニヤンの木の根っこにつかまり一緒に月までいって今もそこにとどまっているというのです。ベトナムの人はバニヤンの木とその根元に男がいると思っているんですよというものです。

また、私の中の月のイメージが覆されたお話にも出会いました。七羽のカラス(グリム童話)です。その中で月は「とても冷たくてぞっとするほど冷たくて、意地悪なひと」として登場します。(ちなみにお日さまはあつくて恐ろしいひと。お星さまはやさしくて親切なひと)お月さま=優しいというイメージがあった私にとって、これは衝撃的でした。

私の中ではいつも静かに見守ってくれているはずのお月さま。そんな印象を変えたくないので、このお話のお月さまはさらっと受け流すことにしましたよ。

月の出てくるお話や絵本、たくさんみつかります。また、歌や映画にも。この時期、お月さま探しをしてみるのも面白いですね。

 

 

お月見をしながら食べたい

「お月見の夜のためのデザート」。
お団子食べればいいんじゃあないの?と思う方もいらっしゃるかと思うので、このレシピを作った理由(言い訳?)を少し。

みなさんはお月見をしながらお団子食べていますか?
私が子どもの頃、お月見の日になると、母は毎年和菓子屋さんで月見団子を買ってきてくれました。でも、それを食べてもいいよとお許しがでるのは翌朝。お月さまが出ているうちはお供えものには手をつけないというのが、母の方針でした。
私には、今もその習慣がしみついていて、お月さまが見えるうちは食べてはいけないように思ってしまうのです。(別に母を恨んでいませんよ。翌朝食べられることを楽しみに眠るのもうれしかったので。)

でも「お月見しながら食べたい!」そんな気持ちはずっと持ち続けています。
そこで思いついたのは、月見団子はお月さまのためにお供えしておき、その横でこのヘルシーそうなデザートを食べようというわけ。
夕食の後でも、罪悪感を感じない程度のボリュームに仕上げたつもりです。

 

 

お月さまとうさぎを盛りつけて

今回紹介するのは小さなお団子の入ったデザートです。季節の果物やお芋を入れるところもお月見にふさわしい気がします。
そして、試作をしているうちに楽しいことを思いつきワクワクしてしまいました。
さつまいもをお月さまに見立て丸くくり抜き、りんごをウサギの形にしてみよう!
白キクラゲは月にかかった雲のイメージです。
そして、特製(?)お月さまのシロップはみりんで作ります。色はなんともきれいな黄金色。月からの光を思いながら煮詰めました。
さあ、役者は揃いましたよ!月のお話を自由に考えながら盛りつけしてみてくださいね。

 

【お月見の夜のためのデザート】
<材料(4人分)>
白玉粉         50g
絹ごし豆腐       50〜60g
白キクラゲ(乾燥)   5g
サツマイモ       200g
りんご、梨      適量
◇みりんのシロップ
みりん        200cc
りんごの芯、皮、梨の芯 1個分
しょうがの皮      少々

用意するもの
ボウル、鍋、お玉、包丁、まな板

材料1:好みの秋らしい果物を使って。果物は好みの分量でよい

 

材料2:団子は水の代わりに絹ごし豆腐でこねていくと柔らかく仕上がる

<作り方>

1,シロップを作る。みりんを煮立てアルコール分をとばし、約半量になるまで煮詰める。りんごの皮と芯、梨の芯、しょうがを入れ冷ます。
2,サツマイモは洗って1㎝程度の輪切りにして水にさらし、やわらかくなるまで茹でる。茹で上がったら冷まし、3センチ程度の円形(月)を4つ作り、残りは小さく切っておく。
3,ボウルに白キクラゲを入れてたっぷりの水で5分ほど戻す。汚れている部分、固い石突きの部分を外し、熱湯で15分ほど茹でてからざるにあげて冷まし、小さくちぎっておく。
4,白玉粉に豆腐を混ぜ、なめらかになるまでよく混ぜ、しっかりと練る。20個の小さな玉を作り、熱湯で茹でる。浮いてきたら3〜4分茹でて冷水にとる。
5,りんごは小さなうさぎを4つ切り、残りのりんごと梨は1㎝角に切る。
6,器にりんごのうさぎ、サツマイモの月を一つずついれ、残りは4等分にのせる。白玉団子、白きくらげも盛りつけシロップを注ぎいただく。

シロップは果物の皮や芯、しょうがを漬け込み香りとエキスをいただく。食べるときに漉し、早めに使い切る。子どもには黒砂糖シロップ(黒砂糖を同量の水で煮とかしたもの)も人気

 

白キクラゲにはコラーゲンがたっぷりなのだとか。美肌をお月さまに祈ってみる!?一袋にたっぷり入っているので、デザートだけでなく和え物や炒め物にも。きゅうりと酢で和えて食べるのもおすすめ

 

月やうさぎを探しながら食べるのも楽しい

Information

参考文献

『日本の心・年中行事12ヶ月 行事・行事食の由来と行い方、季節の花』グループTKC、田中幸子・編集・刊 

『三省堂年中行事』 編者 田中 宣一・宮田 登 三省堂

『事典 和菓子の世界』中山圭子・著、岩波書店・刊、

『知っておきたい日本の年中行事事典』著・福田アジオ、菊池健策、山崎祐子、常光徹、福原敏男、吉川弘文館・刊

『イラスト版子どもの伝統行事 子どもとマスターする40の行事・その由来とやり方』谷田貝公昭・監修、長沢ひろ子、本間玖美子、高橋弥生・共著、合同出版株式会社・刊

「大うそつき『子どもに語るアジアの昔話2』」松岡亨子・訳、こぐま社・刊

「七羽のカラス『だめといわれてひっこむな』愛蔵版おはなしのろうそく5」東京子ども図書館・編、財団法人東京子ども図書館・刊

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この記事を書いた人
山田麻子ライター
横浜市青葉区在住。中学生女子、小学生男子の母。料理の仕事歴25年以上。管理栄養士。森ノオトでの初めての取材をきっかけに、絵本、詩、素話に出会い、その世界の虜に。以来、絵本と飲み物やお菓子の相性を考えるのが楽しみに。図書ボランティア活動、おはなし会のお菓子作りなどに心ときめく。現在の夢は「語り手」になること。 ブログ:スマイル*ごはんを始めよう
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