みんなの居場所「かもマチ食堂」
横浜市青葉区鴨志田町の横浜市鴨志田地域ケアプラザでは毎月一回「かもマチ食堂」がオープンします。住む地域や年齢にかかわらず、誰もが気軽に参加できる「かもマチ食堂」は、老若男女関わらず多世代が交流できるみんなの居場所です。

大勢でごはんを食べるとおいしい! と、感じたことはありますか?
みんなでわいわい食べるとついつい食べ過ぎてしまったり、時間があっという間に過ぎていたりもします。
 
誰かと一緒においしいごはんを食べる。
「かもマチ食堂」は、そんなシンプルな幸せをつくるマチの食堂です。
 
2016年10月、鴨志田地域ケアプラザの声かけで多世代交流の場として「かもマチ食堂」は始まりました。
「色々な世代の人たちが一緒にご飯を食べる場所をつくろう」
「違う世代の人たちが知り合うきっかけをつくろう」
「みんなの居場所をつくろう」
そんな思いに共感した人たちが集まって、カレーをつくったり、それを宣伝するチラシを作成したり、来た人に編み物や手作りの楽器を教えたりすることから始まったそうです。
 
かもマチ食堂を運営するスタッフには、はまっ子ふれあいスクール(横浜市が実施する小学生の放課後の居場所)のスタッフや近隣小学校のPTA、近隣の高齢者施設のスタッフ、民生委員、鴨志田地域ケアプラザの利用者など、地域で活躍してきた幅広い年齢層の方々が集まりました。

15時頃から80人分のカレーづくりがスタート。慣れた手つきで段取りよく、どんどん調理が進む。この日は里芋とツナのサラダとわかめのかきたま汁がついてきた

ベテランの主婦たちが手際よく、和気あいあいと今夜のご飯を調理していきます。
隠し味や料理の手順など、家庭ごとに違うやり方やヒントを教えあうのも楽しみの一つ。 
たとえば、私が教えてもらったのは、パスタなど沸かす水の量が多い時には、少量の水を沸騰させてから水を継ぎ足して量を増やす方が早く沸くということ。
なるほどなるほど、いろんな経験のある多世代の人がいてこそ教えてもらえる知識ですね。
カレーづくりで一番難しいのは、参加者の人数次第で量を調節することなので、できるだけ事前予約をしていただけるとうれしいそうです。
 
お米やみそ、野菜、お肉を始め、ふきんや洗剤、子どもの遊ぶ折り紙などたくさんの寄付でこの活動は支えられています。
また、場所や調理器具の提供、食品衛生管理など鴨志田地域ケアプラザのバックアップも整っていて「すべての部署が関わって鴨志田地域ケアプラザ全体で、全員参加でフォローしています」と地域活動交流コーディネーターの鴨志田真理子さんは言います。
 
16時頃から学校帰りの子どもたちがちらほら来始めました。

来た人から食器を決められた場所に並べていく。「お願いします」とあいさつするのよ、と優しい声かけも

オセロやトランプなどのおもちゃで遊んだり、友だちやそばにいる大人たちと話したり、思い思いに好きなことをしてごはんまでの時間を過ごします。

この日はペットボトルのふたを使ったホイッスルの工作をした。低学年からつくれる簡単さながら、高学年の子まで満足するクオリティの高さで大人気。教えてくれるのは、ウクレレや大正琴、三味線奏者の藤本三輪吉さん。三輪吉さんの草笛は毎回人気

女の子には編み物が人気で、ボンボンやシュシュなどをつくってお持ち帰りします。

男の子には将棋も人気。ここでもまず「ごあいさつから」と名前を名乗ることや挨拶をすることを優しくお声かけ

取材当日は雨の降る寒い日でしたが、子どもたちがくつろいで穏やかに遊ぶ姿に、なんとも温かい空気が流れていました。
 
「かもマチ食堂」代表者の小笠原三千代さんはこういいます。
「学校とはまた違う子どもたちの姿がここでは見ることができます。家族とは違う大人と接することで叱られたり、ほめられたり、ゆっくり話を聞いてもらえたり色々な大人たちの中で山ほどの体験をしてほしいです」
 
地域ぐるみで人と関わろうとする大人がたくさんいることは、私自身、この地域で暮らし、子育てをする中で常日頃からありがたいと感じることです。
小学生の子どもを連れてきたあるお母さんは「一人っ子だからこそ、我が家の常識だけでなく、他人の常識も学んでほしい。近所のこどもたちと兄弟のように育ってほしい」と話していました。
 
「地域の人たちに育ててもらう関係がここにはあります。若い世代の人にもどんどんかかわっていってほしい、皆が参加できる場をつくっていきたい」と、小笠原三千代さん。

「かもマチ食堂」代表者の小笠原三千代さん(右)。子育ての相談を気軽にできるのもいいところ

私が参加していて一番強く感じたのは、子どもがこの場にいることをとても喜んでいることでした。どの子もどの子もとても喜んでいました。
「かもマチ食堂、どう?」と聞くと、聞いた子全員から「好き!」とただシンプルに、その言葉が返ってきました。その後は、楽しい、カレーおいしい、安いとかそれぞれに続くのですが、子どもたちにとって居心地のいい場所なのでしょう。初めて参加したある男の子は「オレ絶対、11月も12月も来る!」と帰り道に嬉しそうに話していました。

18時頃には皆でいただきます! おいしいカレーを友達と一緒に食べることも子どもたちにとって特別なこと。食後は皆で片づけをして保護者のお迎えを待つ

大人の参加者が多いほど、子どもは落ち着くそうです。
他愛もない、けれどその子どもにとっては大切な話に、うんうんと耳を傾けてくれることや、そばにいてくれる身近な大人の存在そのものが、安心感や自己肯定感、人を信頼する心を育むのではないでしょうか?
わかってはいても、忙しい生活のなかではおざなりになりがちなことです。
 
一緒にカレーを食べながら、子どもたちの話し声や楽しそうな笑い声を聞いていると「子は鎹(かすがい)」という言葉を思い出しました。これからは夫婦だけでなく地域の人たちの中でも子どもが鎹となり、人と人をつないでいくかもしれない。少なくともここにいる人たちの間をつないでくれているのだな、と思いました。
 
「ありがとう、がもらえればそれでいい」と伝えてくれたスタッフ。
「散歩の途中、子どもたちに会うと、名前を呼んで挨拶をしてくれるのがうれしい」と話すスタッフ。
「ここで得られるものは皆それぞれちがう」と小笠原さんは話します。

この日は雨の中、65名が参加


「かもマチ食堂」ができてはや1年。
確固とした理念を高らかに掲げるわけではなく、これまで一つひとつ問題点をみんなで話しあいながらルールも作ってきたそうです。
「多世代の居場所なだけにいろんな人がいて、いろんな価値観がある。混沌といろんな意見がでるけれど、正解もわからないけど皆で今つくりあげていこうとしている。わからないままでもいろんな意見を、自由に言える場がありがたい」と話す一人のスタッフの言葉に皆がうんうんとうなずいていました。
 
誰もがお互いにそれぞれを尊重しながらつくりあげている「かもマチ食堂」は子どもにとっても大人にとっても、やさしく温かな居場所でした。
地域の皆さん、ぜひ、おいしいごはんを食べに来てくださいね!

Information

「かもマチ食堂」(横浜市鴨志田地域ケアプラザ内)

住所:神奈川県横浜市青葉区鴨志田町547-3

電話:045-961-6911

毎月一回。15001900

2017年の開催は11/30(木)と12/15(金)です。

参加費:大人300円、中学生・高校生200円、子ども100

持ち物:参加費、ハンカチ、水筒、カレー皿、スプーン、うわばき

*なるだけ電話予約をお願いします。(当日申し込み可能ですが、定員に限りがございます)

*できるだけお子様のお迎えをお願いします。

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この記事を書いた人
新楽 津矢子ライター
横浜市青葉区在住。地元鴨志田を中心に、フリーのヨガインストラクターとして活動中。生きる素は、ヨガ。笑顔の素は、おいしものを食べること、自然を感じること、親しい人と笑いあう時間。エコで丁寧な暮らしを田舎でしたいと思いつつ、身の丈にあうことが一番!と一歩ずつの生活を楽しんでいる。
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